#1 未知との邂逅
*最初は三人称視点で描いていますが、途中から一人称になっています。
(2018/02/07) 数カ所修正しました。
「んしょっと…よいしょっと……ふぅ、よくもまあ毎日毎日、父さんと母さんはよくやるよ、ったく、買い出し行くからって俺に畑仕事押し付けんでも、俺にだって他にもやりたい事の1つや2つくらいあるってーの! んしょっと…おいしょっと、はぁー疲れたー!」
燦々と照りつける陽の光の中、1人の少年が親への文句をたれながらも、日々の日課である両親の畑仕事を手伝っている。
「このぐらいでいいかなぁー。って、うわっ!もう昼過ぎてんじゃんか! ああもう! やめだやめだ! 昼飯くいてぇし! とりあえず仕事の方はこれでいっかぁー、父さん母さんには悪いけど。まぁ、別にサボってたわけじゃねぇしな、流石にそんな事で怒られたりしねぇよな、っはは」
悪態をつきながらも仕事をこなしていた少年は、陽の光が真上から照りつけるのを確認して、昼食の時間帯が来たことを体感する。
そこへ少年の耳介に知人の声が届く。
「おーい! カインー!」
カインと呼ばれた少年はその呼び声を聞き、仄暗い赤色の髪を掻き揚げ、視線を声のする方へ移しながら「こんな時間に俺の名前を呼ぶ奴は幼馴染のリョウぐらいしかいねぇだろうな」 と思いつつも、畑仕事で疲れて少しばかりの休憩をしていた腰を上げる。
「んぁ?なんだよ!」
「おれんちで昼メシ食おうぜー!」
「え、なんだってー?」
カインは遠くから、和かに昼食の誘いをしながら近づいて来る友人の声を聞きつつ、放っぽり出していた農具を片付け、歩きながら応じた。
「母さんに言われたんだけど、おれんちで昼メシ食おうぜって言ってんだよ! そんで、うちの母さんが、おまえんちの母さんに頼まれたんだと!だから、遠慮せずに、なっ? なっ?」
「わーったよ!てか遠慮なんかするつもりなんてないけどなー!」
「いやいや、そこは遠慮しろって!」
冗談交じりの会話に見えるが、俺は割と本気の様だ。
「それよりもお前が昼飯を誘いにくるということは、うちの両親は夕方までは帰ってこねぇようだな」
リョウの所から、昼食の誘いが来るようなときは両親が遠出をして、夕方頃に帰って来るような時くらいが大体だ……いや、大体というより確実に、の方が合ってる。
まぁでも子供ほっぽらかしてどっか行くような親よりマシだな、うん。
嫌々畑仕事まで任されて、俺がこんな良い子じゃなければ普通に仕事とかサボって遊びに行ってると思う。まぁ小遣いが増えるから良いんだけどな。これで――
「……イン!……おぃカイン!何にやにやしながらボケーっとしてんだよ。気持ち悪りぃぞ? なんか変な事でも考えてたんじゃねーの?」
俺が思いふけっていると、会話が思考を遮る。どうやらぼーっとしていた様で、何やら気持ち悪い顔をしていたらしい。
「んなっ、気持ち悪いは言い過ぎだろ! 別に変なことは考えてねぇけど」
「ふーん、そっかぁ、『変な事は』ねぇ、なるほどな。」
弱みを握ったぜと言うようなすっげえ嬉しそうな顔してやがる。
まったく、コイツが調子のるとうっとしいんだよな。
「で、何何何? なんかあるんだろ? 親友なんだから教えろよぉ〜」
ほらな、言った通り。おそらく適当に返事してもどうせ好きな子とかいるのか? の様な事になりそうだな。
「まぁ、ただ自分の欲しいもの買えるなぁってな。
ほら、畑仕事の駄賃として、小遣い少し多めに貰って、ちまちま貯めたのがあるからなーって」
「んん? 好きな子になにかプレゼントでもしようとか?」
笑えるくらい想像通りだな。欲しい物を買えるって言っただけでプレゼントだとよ。しかも好きな子に。コイツ馬鹿だけど勘は良いんだよな。そこは素直に凄いと思える。プレゼントってだけは合っているからな。
「ちげぇよ。大体、この村に女の子なんてそんなに居ねえから、俺が好きな子とか普通に馬鹿なお前にでもバレちまうだろが。
普通にプレゼントだよ。まぁ誰かはぜってー言わんがな。」
「んだよー、別に良いじゃんかさー」
「良かねぇ! 馬鹿のお前にいうとプレゼントする人にバレるかも知れねえだろ、バレたら意味ねぇし!!」
「なんだぁそう言う事か! いわゆるサプライズってやつだな! それならそうと言ってくれりゃぁいいのによー。まぁでも俺が誰に渡すか知ると、口を滑らしてしまうかもだもんな」
にへらと呑気に笑いやがって、自分の口が滑りやすいことは案外分かってるんだなこの野郎。まぁコイツの能天気な所はだいぶ好きだし助かってる所はあるからまぁいいか。
「そーいうこったよ! わかってんなら言うなよ」
「ほいほい! んじゃそろそろ昼メシ食い行こうぜ!」
「てめぇが変な話に持ってかなけりゃ、とっくに食えてるってバーカ」
ほんと能天気でマイペース過ぎる、まぁ別に良いんだけどな。それよりメシだメシ。
「あ、そういやカイン、妹ちゃんも連れてこいって母さんが言ってたから、先に呼んでおれんち行っとこうか?」
妹もいるのに両親は昼飯も作っていかずお出かけって、普通の親はするんかねぇ。ほんっとなんとも言えねぇ両親だことか。
「あぁ、そうだな、頼むわ! 畑仕事した後だし少し土とか落としてから向かうわ!」
「了〜〜解!! んじゃまた後でな!!」
「おう!」
そうして2人仲睦まじく畑での会話を終えたあと、2人はそれぞれの目的で行動する事となった。リョウは教会におそらくいるだろう妹の方へ迎えに行った。
俺はまず土を落としてから自宅に戻り、風呂に入っていた。
「ふぁーあ、キッッ持ちいいぃぃぃ! 暑い日に、一仕事した後は気持ちが————
「すいませーーん! 誰かいらっしゃいますでしょうかー?」
「ちょっ、チョーーーーット待ってください!!」
俺は大いに焦りながら、急いで風呂から上がり、人前に出れる最低限の格好で扉をあける。
「すいませんお待たせしました! どんなご用け……ん?」
扉をあけると目の前にはだれもいない。
どういう事だ。
「あれ? 気のせい?」
「気のせいじゃないですよ! 足元をご覧くださいませ!」
その声の通りに足元に視線を移すと、そこには魔物が……ま、魔物!?
「うわぁっ! ま、まま、魔物! や、やるか?
あ、でも武器ねぇし戦えねぇから、命だけはご勘弁を!」
本当に魔物だったら太刀打ちできないし、ここはとりあえず土下座して命乞いをしておく。
「そそ、そんなことしませんよぉ〜!大体、魔物じゃないですしぃ〜。
まあ、確かに私達をご存知ない方々は、魔物と感違いされますがぁ〜、断じて! 魔物ではございませんよ、カイン様!!」
「な、なんで俺の名前を知ってんだよ。」
「それはもう、ちっさい時から知ってますよ! 今日も両親に頼まれて私達のためにしっかりとされてたじゃないですか!あ、少し良く言い過ぎましたね。」
「ん?どういう事だよ」
俺は目の前の存在を知らないが、俺の事を知っているらしい。しかも私たちの為に? ……どゆこと?
「どう言う事もなにも、カイン様ももうお分りじゃないですか?」
「ま、まさか……」
「はい! そのまさかです!」
「んじゃちょいと頰をつねってくれ。」
「こ、こうですか?」
うん痛い、痛いと言うことは、現実だろう。ということはだ。
「俺はついに!! しんでしまったのかぁーー?!」
「ずこーーーーっ!! っんもう!! どう考えたらそうなるんですか!!」
普通目にすることもない現象を目の当たりにすれば、夢か死んだものかと疑うだろう。
あ、でも死んでたら感覚もなくなるか、って事はなに? あーもう良くわからん!
「親からちっさくてよく喋る、自分は魔物じゃないと言い張る奴らは信用するなと言われてるからな。」
「えぇっ! そんなわけないですよね、ね?」
もちろん嘘に決まってる。
俺は疑いの目を魔物じゃないと言い張る存在に向ける。
「はぁ、まるで信じてもらえないようですねぇ。それでは自己紹介させていただきます!
私は、植物の精霊、ドリアード族のティアと申します! 今回ここに来たのは、大精霊フィオ様からの命で参りました!」
今度は精霊と来た、精霊は普段目に見ることが出来ない者なんだけれども。見えているのが現状。わけがわからん。うん、単なるイタズラかもしれないな。
「ほぉ、で、精霊様が俺に何の用だい?」
「あのですね、詳細は私には分からないのですが、フィオ様がカイン様に伝えたい事があるらしく、カイン様のご家族ぎお持ちの畑周辺が、私の管轄という事で今すぐ連れて来てくれと頼まれまして、ですのでご一緒頂けませんかね?」
「それって重要?」
「はい! かなり重要です!!」
これはイタズラと言うには無茶があり過ぎる? まぁ普段は目に見えない精霊が姿を現して話しかけて来て、大精霊様から話があるから来いと。
だいたい大精霊様が俺に何の用なんだ。まさかしっかりと畑仕事しろって怒られるのかな? そんなわけないか。とにかくコイツを信じて行くにしても今からは微妙だな、飯食いてぇし。
「でもなぁ今からはなぁー。」
「お友達のところでご飯ですよね?」
「なっ、なんで知ってんの?」
「ふふっ精霊をなめないでくださいませ! 精霊はこの世界には至る所にごまんといるんですから! その子達から色々と聞いたり出来るんですよ!
でもでも、精霊と人間が会話出来るのは波長が合うか、こちらが意図的に話しかけるかでないと出来ないんです」
胸をポンと叩き、威張る様にして、どの様に話しかけているのかを説明してくれている。しかも精霊と名乗る者は何でも精霊同士で話し合うらしい。そして今は向こうから話しかけてくれている訳か。
まぁそんなことはどうでも良いんだけど。それよりも早く飯が食いてぇ。
「はぁ、それはどうもご丁寧に。」
「んで、俺を今からそのフィオ?さんのとこに連れてくんだって?」
「はい! そうでございます!」
いまからはちょい厳しそうだな。それより早く飯が食いてぇ。そういえば今どの刻だろ?
そう思い、首にかけたペンダント状の珠の色を確認する。
この珠は刻珠と言って、だれでも知っている魔道具だ。この珠の色によって時間を把握できる文明の優れもので、なんでも周囲の属性精霊の力は、時間によって強弱があることを利用した便利なものらしい。
また陽の出ている間は色が明るくなり、月が出ていれば色は暗くなる。そしてその色の混ざり具合で時間がわかると言うものだ。
まあ、細かいことは学者にでも聞いた方がはやいだろう……大まかに言うと、この世界の時間の流れは精霊たちの力の関係に基づいて決まっているということだ。
珠の色は明るい赤に少し茶色が混じった色をしている事から、いまは陽火の中頃を過ぎたと分かった上で、飯の時間も考慮してから交渉をしてみる。
「今からってのはやめてくんね?飯食いてぇしさ、えっと今は陽火の刻の中頃だから、陽土の刻に入る頃までには家に帰ってくるからさ。ああ、でも帰ってきたら妹のメイリンの世話をしてやらなくちゃだめだわ。」
このままなら最悪行かなくてもいいかな?
「そんな事なら心配ご無用! メイリンちゃんを眠らせておけばいいじゃないですか!」
「なにそんな軽々しく言えんの!てか何かあったら怖ぇよ!」
「もちろん出来ますとも! 精霊を舐めてもらっちゃぁ困りますよ。幼子を眠らせる事ぐらい、容易い事です!」
にへらっと笑いながら、人の妹を眠らせるのは簡単だと言う、薄気味悪い笑顔でそんな事言われると余計に怖い怖い!
しかも幼子だって! 14歳でも幼子か! まあ、精霊だからそれなりに歳食ってて当たり前か! そもそも年齢という概念があるのかすら分からん。
なにか、考えろ、別の方法を探すんだ、でないとメイリンの命が……
「あ! なら昼飯終わった後もリョウにメイリンの世話させて置こう!」
「え? あ、はい、別にそれなら構いませんけど、私が子守する事も出来たのですが……」
と残念そうにする精霊 (ちょっと名前忘れた)。
「なんで残念そうにしてんだよ! それが逆に怖いんだって! 精霊の加護が有れば凄い安心出来るんだろうけど、怖いよ!」
「いやぁつい……可愛い少女を愛でられるのがすごく幸せで、アハハァ」
へ? そんな理由だったの?
もっと邪悪な理由かと思ってた。まあ、そういえば精霊が生物に向けて攻撃などは出来ないそうだし、命の心配なんかは安心してて大丈夫だったか。
とりあえず、一安心という事だな。
「それなら、メイリンの絶対的な安全が確保されるっていう条件なら、お前に子守させてやらんでもないけど。どうする?」
そういうと精霊 (あ、確かティアとか言ってたな)は目を輝かせて食い気味に来た。
「絶対的な安全ですね!! お任せオォッ!!」
おれはそうして、大精霊フィオ様 (こっちはハッキリ覚えてる)の所に行くことを決めた。
とりあえず飯ぃ。リョウの所へいかねば。
少し世界観と作中で出てきた刻珠について説明致します。
刻珠は作中にも説明がありましたが、明確に示しておくと分かりやすいと思いましたので説明しておきます。
刻珠とは、周囲の精霊の力に反応して時間を示してくれる時計の様なもの。
この世界において明確に時間を把握出来る物は日時計しか無く、夜間は時間帯の把握が出来ない。つまり機械の文明があまり発達していない世界です。どちらかと言えば、魔法文明があるため機械には頼らなくても十分過ごせる世界という事で理解して置いてください。笑
さて刻珠の色についてですが、作中にもありましたが、陽が昇っている間は明るく、月が出ている間は暗くなります。
そして時間によって精霊の影響が変わってきます。
時間は、以下の通りです。
風(8:00〜11:00) 火 (11:00〜2:00)
土 (2:00〜5:00) 水 (5:00〜8:00)で12時間を4分割しています。そして日の出(5:00)からを陽 日没(17:00)からを月としています。
つまり、刻珠で時間を示す際には、陽風、火、土、水と月風、火、土、水があるわけでございます。
以上が刻珠についての説明です。
また、季節についても説明をしたいところですが、長くなりましたので、季節を表す用語が出てきてからあとがきで説明致しますね。




