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「ああ、分かってる。――信用しろよ、今度は軍を出すよう説得するからさ。――ああ、おう。それじゃ、また連絡する」
通話を終えたヴァルガドの英雄、ロイドは苦笑しながら受話器を置いた。
ヴァルガドの軍施設の隊長室。通話の相手はラクトである。今度こそ軍を出せ、という要請の為に改めて通話してきたのだ。しかも今度は絶対的な証拠を揃えてである。
鬼による先遣隊。そしてその裏に潜む本隊とジンガ。それらについて鬼と話した内容をカメラに保存した映像情報を、ラクトはロイドに送ってきたのである。
これには先日は難色を示していたロイドの副隊長も納得せざるを得なかった。
「しかし仇か――本当に見つけ出すとはな」
ロイドは感慨深げに呟く。当然、ロイドにとってもジンガは師ラーグの仇という位置づけにはなるのだが、彼はそこまでジンガを追う事に力を割いてこなかった。それは勿論、軍人としてやるべき事が他に沢山あったためだし、何よりあの事件以降引っ込んでいて見つけられない片目の黒鬼を探す為に大きなコストを軍として使えないというのも大きかった。
そして軍という力を利用せずにジンガを見つけるという発想はロイドには無かった。――が、ラクトはそれをやってのけたのだ。そして仇の鬼にあと一歩という所にまで肉薄している。
勿論、本当に仇の鬼を倒せるかどうかは未知数である。だが敵討ちを挑めるほどの所にまで追い詰めたのは、ラクトの執念を見せつけられたかのようだった。
「本当はあまり魔導機装には乗ってほしく無かったんだけどなぁ」
将来的な就職の選択肢として、父に憧れて機装士を目指すのとは訳が違う。如何に才能があったとて、ハイスクールに通っているような子供が機装士をやる事には賛成できないのがロイドの立場だった。
「けどまぁ――これが最後か」
敵討ちに成功するにせよ、返り討ちにあうにせよ――これがラクトの最後の戦いになるのだろう、というのは明白だった。
かつての師、ラーグをロイドは思い出す。上昇志向が強かった自分が、その操縦技術に憧れて弟子入りさせてもらった日々を。そして、その彼の最後を。
ロイドはラクトが師ラーグの軌跡を追いかけている事を幻想し――頭を振ってその思いを振り払った。
「個人的な思いはともかくとして。軍としては全力でジンガ一党を殲滅にかかる。問題はないな?」
問いかけるロイドに頷く副隊長を後ろに、ロイドは正式に軍を動かすべく席を立った。




