第三話 邂逅|二人は出会い悲しい歯車が動き出す
凍てつく寒さと激痛のせいで一睡もできぬまま、乎鞠は長い夜を耐え抜いた。
しかし、神と鬼の血がもたらす奇跡か、それとも極限状態の執念か、命の火が消えることはなかった。
ぼやける視界の先、洞穴の出口から、この土地特有の血を引いたような真っ赤な朝日が差し込んでくる。 「……あさ……、が……」
ようやく朝が来た、そう安堵した瞬間だった。
ふっと、洞穴の入り口を塞ぐように、その眩い光が急に遮られた。
「っ……!」
乎鞠はハッと息を呑み、反射的に体を縮こまらせる。
元いた世界の社で受けてきた仕打ちの記憶が脳裏をよぎり、恐怖で心臓が激しく跳ねた。呼吸が浅くなり、胸の奥が締め付けられるように苦しくなる。
誰かが、洞穴の中へと入ってきた。
足音が、冷たい地面をコツコツと叩く。その影は逆光に包まれていて、表情も姿もまったく見えない。
ただ、近づいてくるその人物は、洞穴の中見て、不思議そうに低く呟いた。
「……なんだ、これ……? この枯れ果てた荒野に、こんな青々とした草花が……?」
乎鞠が流した血の跡から芽吹いた奇妙な植物たちに、その影は驚いているようだった。
低い声が響くたび、乎鞠の震えは大きくなる。
(見つかる……っ、またいじめられる……殺される……っ)
逃げようにも、折れた左足はあらぬ方向を向いたままで、動かすことすらかなわない。 血まみれの小さな体を洞穴の奥の壁にぴったりと寄せ、乎鞠は両手で頭を抱え、ただ怯えることしかできなかった。
足音が、すぐ目の前で止まる――。




