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第二十八話 恐慌|違う人
静まり返った寝室の床に、すうっと冷たい影が落ちる。
その不穏な気配を敏感に察知したのか、深い眠りについていた乎鞠の長いまつ毛がぴくりと揺れた。
(……っ……!)
かつて社で受けていた数々の残酷な仕打ちと、そこから這い上がるまでに味わった恐怖の記憶。身体に染みついた防衛本能が、悪意を持った何者かがすぐ近くに迫っていることを告げている。
乎鞠はハッと目を覚ました。
しかし、意識が浮上して最初に目に入ってきたのは、いつも優しく微笑んでくれるはずのゼノの姿ではなかった。
そこにいたのは――得体の知れない、冷酷な気配を纏う「何か」の影。
「ひっ……!」
恐怖と絶望のあまり、乎鞠の心臓が激しく跳ね上がる。ゼノがいなかったという強いショックと、目の前に迫る未知の脅威への恐怖で、喉の奥が引き攣れた。声すらうまく出ず、彼女はただ小さく震えながら、小刻みに口をぱくぱくとうごめかせることしかできなかった。




