第二十四話 美酔|抑えられない欲望
お互いの息が触れ合うほどの至近距離。そこに横たわっているのは、息を呑むほどこの世のものとは思えない、圧倒的な美しさを放つ少女――乎鞠だった。
小さな鼻筋、ふんわりと柔らかそうな頬、白銀の髪と同じ色の、ふさふさとしたカールした長いまつ毛。そして、かすかに開いた薄桃色の柔らかな唇……。
まだ幼い年齢とはいえ、魔界の王族として誇り高く育ったゼノの中の「男」としての色々なものが、今まさに限界を突破しようとしていた。
(た、頼むから……睡魔よ、我に再び襲いかかりたまへ……っ!)
ゼノは必死に目を閉じ、脳内で何度も必死に呪文を詠唱したが、高鳴る鼓動のせいで存在しない睡魔召喚魔法が発動する気配は微塵もない。むしろ、さっきまでの眠気はどこかへ吹き飛び、五感は冴え渡るばかりだった。
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
胸の奥で、理性のタガが音を立てて外れかけていた。
――だめだ、触ったら、きっと起きちゃう……。でも、どうしても、確かめたかった。この奇跡のように自分の腕の中にいる存在が、本当に本物なのだろうかと。
ゼノは震える指先をそっと持ち上げ、乎鞠のその柔らかそうな頬へと慎重に、近づけていった。
(っ……心臓の音がうるさすぎる……! こんなの、絶対この音で起きちゃうよ……っ!)
胸元でドンドンと爆音を立てる心臓の鼓動が、隣で眠る乎鞠にまで聞こえてしまうのではないかと、ゼノは冷や汗を流しながらも、指先をわずか数ミリへと迫らせる。
あと少し。あと少しで、その柔らかな頬に触れられる――。
高鳴る熱と緊張で、ゼノの息遣いは自然と荒くなり、熱を帯びていくのだった。




