第十四話 治癒|少女へ傷の手当てが始まる
笑い声に包まれて緊張がすっかり和らいだところで、いよいよ乎鞠の傷の治療に取り掛かることになった。
ゼノは「レディーだからね」とさっきレックスに言われた言葉を思い出しながら、恥ずかしがらないように部屋の衝立を用意したり、温かいお湯の準備をテキパキと整えていく。
しばらくして、レックスが湯をたっぷりと張った少し大きめの桶を持って戻ってきた。
「準備整いました、ゼノ様」 「うん、ありがとう、レックス」
ゼノはそっと乎鞠に歩み寄り、傷に触れないよう細心の注意を払いながらふわりと抱き上げる。
乎鞠は年端の割にとても小柄だったため、用意された桶の中にすっぽりと収まってしまった。
「お湯、熱くない? 大丈夫だからね」
ゼノが優しく声をかけると、乎鞠はこくんと小さくうなずいた。 レックスとゼノの二人がかりで、傷口が痛まないように細心の注意を払いながら、柔らかい海綿でお湯を含ませ、体にこびりついていた泥や血を丁寧に洗い流していく。人間界の社で受けてきた酷い扱いや冷たさとは違い、ただひたすらに優しい二人の手つきに、乎鞠の目から再びぽろぽろと涙がこぼれたが、今度は恐怖の涙ではなく、どこか安心したような温かい涙だった。
宮中医に存在を知られて面倒な事態になるのを避けるため、治療はすべてこの自室で行う方針だ。
汚れがすっきりと洗い流された乎鞠をそっとベッドへと横たえると、レックスが手際よく両手をかざした。彼が戦場で幾度となく使ってきた、使い慣れた強力な回復魔法の光が淡く灯る。
「骨折した左足は完全に繋がるまで少し日数がかかりますが……他の痛々しい傷なら、この調子で今日明日と治療を続ければきれいに塞がるでしょう」
レックスの頼もしい診断に、ゼノは「よかった……」と胸をなでお下ろした。
そして、元の汚れた着物は洗って干すことになり、代わりにゼノの大きめのシャツを借りて着せてもらうことになった。乎鞠の小さな体に対して、ゼノのシャツはまるでワンピースのようにブカブカだ。




