Case.2 ── 死の銃弾 ──
エドウィナによって殺害されてしまったベティ……その行方を追うためアンジーは中華街に向かう。
その頃、タイラーは〝マッドドッグ〟を新たな仲間にすべく奔走する。
「ベティが殺されたってのは本当なのか?」と語り掛けると、アンジーはただ無言で頷いた。
「向こう側が見えるぐらい綺麗に風穴が空いた状態の写真を見せられた。アニマル市警の嘘をリークしたって噂のあの〝エイデン〟にな。」
「エイデンが……?何故アンジーに直接接触したんだ。まさか知り合いだったってわけじゃないよな?」と切り出すと、アンジーは図星なのかもう一度頷いた。
「エドウィナ・ブライトバーン……CLAW……いや、特殊捜査任務懲罰部署だった時期に居た奴だ。ブルーが入ってくる頃に入れ替わりでアニマル市警を辞めて数年会ってなかった。だが奴はこんなことするような奴じゃなかったはずだ。一体何故ベティを殺したのか皆目見当もつかない。友人だったのに。」
憂いを帯びた表情でアンジーはタイヤを破裂させられたゴルフの前に行くと、「ゴルフは大丈夫か?」語り掛け、下部へと潜っていたチェルシーがひょっこりと顔を出す。
「運が良かったなあ。あのホイールはガリガリに削れてもうたけど、足回りは全然痛んでへんかったわ。倉庫にあった新品のタイヤとホイールに交換しといたからもう走れるはずやで。ココ~もうジャッキアップは終わりやから車降ろしてええで~。」
「おけまる~。」
ココがバンパーからゆっくりと手を離すとゴルフは地面へと着地し、アンジーはココの怪力に驚くほか無かった。
「しっかし、ストリートレース中にタイヤを銃で撃たれるなんて物騒な世の中やわあ。」
「今に始まったことじゃない。直してくれて助かったよ。」
ゴルフの修理を終えたところでタイラーの携帯に連絡が入る。
「警部からの情報だ。ベティ・ロアーナという人物の死亡届は出ていない。そもそもあの辺は今抵抗が激しくて警察が立ち寄らないし、銃声は珍しくもない。射殺されたということが事実であるとするならつまり……」
「遺体は放置されている可能性が?」
「そういうことになる。こんな状態だ。足で調べに行くしかないだろう。」
「そうか……とりあえずルースとアミーナを連れて遺体を探りにいこう。相棒は引き続き仲間を探してくれ。まだこれだけじゃとても人手が足りてるって言えないしな。」と、アンジーは無線を入れてルースとアミーナを駐車場へと呼び出す。
「すまないな。喪中どころの話じゃないってのに調査までするなんて。」
「まあ、暗い話はこれで終わりでいいだろ。今日は誰をリクルートしに行くんだ相棒?」
「コイツが面白そうだと思う。ソダム・カン。通称〝マッドドッグ〟。今は馬小屋の掃除係やってるみたいだ。」
「マッドドッグ?どういう意味だそりゃ。」
「韓国系三世でK9ユニットに所属してた凄腕のハンドラーらしい。ただその育てた犬がどいつもこいつも容疑者を食い殺す事案をやらかして左遷された。最初は犬小屋の掃除係。本人が喜んでやるからバツにならないってことで最終的に騎馬隊の馬小屋にまで飛ばされたそうだ。しかもあの悪名高い〝デスフォール〟の係なんだってさ。ただ、不気味なことにコイツが育てた犬はその事案後は全く問題行動を起こさず、異様にハンドラーに対して忠実なんだとか。今はノスフェラトゥもいないし、嗅覚で敵を探せる味方もいるだろ?」
「なるほどな。当たってみる価値はありそうだ。」
「じゃあチェルシー、早速だ騎馬隊のところまで運転を頼む。」
「よしきたぁ、ファルコンの出番やなあ。」
待ってましたと言わんばかりにチェルシーは上腕二頭筋を膨らませるが、あまり筋力がないことと、小柄な体格が相まって隣の筋骨隆々なココと比べればまるで棒のようだった。
アンジーたちは修理が終わったゴルフに乗って北京タウンのベティが営んでいた武器屋へと到着したが、車から出た途端に生ごみや魚を腐敗させ、玉ねぎの刺激臭と熟れた果物のような不快な甘さが入り混じった臭いが充満しており、喉から朝食が溢れ出そうになる。
「うあ゛……っ、クソ、なんて臭いだ。」
「今は夏場です。遺体の腐敗するスピードが速い……」
「な、な、な、なんでこんなところに来なきゃいけないんですかぁっ……お゛ええっ……」
ハンカチで鼻を塞ぎながらSUREFIREのタクティカルライトを着け、薄暗い店内を進んでいく。
すると、そこら中に飛び交ったハエはまるで警告するかのようにライトの光に集まり、この先の悪夢は想像に難くなかった。
中に進むと今度は部屋にこびりついたヤニの悪臭が死体の腐乱臭と混じり合う。
階段を下っていき、部屋の隅からライトを当てるとそこには〝ベディだったもの〟が倒れていた。
体中には蛆が這いガスの圧力で緑色に変色した皮膚が破れて腐敗した肉体の組織は崩壊してぐずぐずに溶け始めており、あらゆる体液が黒く地面に染み出して白い骨だけが形を保っているような状態であり、しばらく忘れることはできないと確信が持てるほど脳裏にその光景が克明に焼き付く。
「げ゛え゛ぇ゛っ゛!」
アミーナは消化され液状になった朝食のハムエッグを地面へぶちまけ、この先一週間は食事が喉を通らないだろうと確信に近い感情を抱いた。
「なあベティ……昔冗談交じりに〝私たちはロクな死に方できない〟だなんて言ってたが、本当にロクな死に方はできなかったな……アミーナ、ルース、キツかったら外で休んでて構わないぞ。」
「む、む、む、無理ですッ、無理!」
アンジーの一言でアミーナは逃げるようにその場を離れるが、ルースは冷静に部屋の照明を付けるとゴム製の手袋を付けて腐敗した遺体を調べ始めた。
「……お前もキツかったら出てていいんだぞ?」
「いえ、平気です。アニマルシティで恐ろしいのはグロテスクな死体なんかより、残忍な方法で平然と人を殺せる連中です。殺されかけたあの時の経験に比べたら死臭だとか腐った死体を触るなんてわけないです。」
「……なんつーか、強くなったなお前。」
「ええ、CLAWですから私。この腐敗の状態……今の暑さと照らし合わせると多分二週間は経ってるでしょうね。アンジーさんの言ってた通り死因は銃撃でしょうね。それも凄く大きな口径の銃。……友達が亡くなって辛いなら私がやっときますよ。」
「いや、ベティはそもそも裏世界の住人、死の商人に他ならない。知り合った時からロクな死に方をしないなんてことはわかり切ってたしな。これは運命なんだよ……私もそのうちこうなっちまうかもな。」
ルースが遺体を調べている中でアンジーはそうぼやきながら周りを見渡すと、アニマル市警の支給品であるボディカメラが不自然にもガラスのショーケースの上に置かれていた。
「……ボディカムが置いてあるぞ。支給品のヤツだ。」
「ボディカム?なんでそんな物をここに……」
「何かのメッセージかもしれない。ラップトップで映像を確認してみよう。」
ルースとアンジーは一先ず店を出ると、車内に用意してあったラップトップにボディカメラを接続した。
すると、おそらくエドウィナであろう人物の主観視点の映像が映る。
しばらくの間はコツコツと足音と共に前に進み続ける映像が映り、数十秒経って階段を降りると生前のベディが映る。
「〝……よお、クソッたれ。〟」とエドウィナが声を掛けるとタバコを吸っているベティが振り返る。
「〝……エドウィナか~?何年ぶりだ?驚いたな。サツ辞めて今まで何してたんだよ。〟」
「〝色々あってな……久しぶりにアニマルシティに戻ったから寄ったんだ。最近はどうだ?〟」
「〝そうだな……とはいっても私は今はこんな状況の街だからこそ、むしろ儲かってウハウハ状態さ。まあ、銃の調達ルートに限りが出ちまって色々大変なんだけどな。〟」
「〝いいコレクションは増えたか?お前はいつだってレアな銃を隠し持ってる。〟」
「〝ちょうどいい、とっておきのコレクションを手に入れたから見せてやる。〟」
ベティはそういって金庫のダイヤルロックを回すと、中から小ぶりなペリカンケースが現れ、その中から一丁の大きな黒いリボルバーを取り出した。
「〝RSH-12。FSBに配備されてる50口径のリボルバーだ。ロシアの裏経由で個人的に買ったんだ。12.7×55mmっつー特殊な弾薬を使う。まあ弾が全然調達できないから下手に試し打ちもできないんだけどな。〟」
「〝ちょっと見せてくれないか?〟」とエドウィナは催促し、「〝弾入ってるから引き金は引くなよ。〟」と言われ受け取ったリボルバーのシリンダーを慣れた手つきでスイングアウトすると、エジェクターを軽く押して弾薬を一発取り出して大きさを確認し、シリンダーに勢いを付けて戻した。
「〝おい、粗略に扱うなよ。〟」とベティはぼやくが、次の瞬間エドウィナは引き金を引くとベティは何も認識できない内に胸に風穴を開けられ即死した。
するとエドウィナはボディカメラを取り外して自分の顔を映す。
「〝なあダチ公。これは始まりに過ぎない。本当の混沌はここから始まる。〟」
そう告げると、エドウィナはカメラを切った。
「本当の混沌か……エドウィナの行方……〝狐仙〟にちと聞いてみるか。」
「うわあああああああああああああっ!ぶつかるーーーーーーっ!」
タイラーはチェルシーの運転するフォード・ファルコンの中で大声で悲鳴を上げていた。
チェルシーのFG型フォード・ファルコンはユートと呼ばれるオーストラリア現地で独自に発展したクーペのピックアップトラック仕様であり、わざわざ海輸で運んできた私物でフォード・パフォーマンス・ビークルズ・パシュートと呼ばれるV8エンジンを積んだ上位グレードモデルである。
彼女はひたすらこのバンブルビーカラーのファルコンで街中を走り込んでおり、そのドリフトテクニックはまさに〝ドリフトキング〟であると言わざるを得なかった。
「なははは、あんさんビビり過ぎやって!」
「むちうちにさせたいのかぁっ!」
「んな、へなちょこちゃうやろ!あんさんSWATなんやからっ!」
チェルシーはヒールアンドドゥを行い駆動輪のロックを防ぎながら、ガラガラのアニマルシティにタイヤのゴムをべっとりと擦り付けていく。
「ほな、回り道しよか~」
チェルシーはドリフトの勢いのままに狭い裏路地へと入る。
──そこは周りの余裕がわずか十数センチしかなく、少しでもハンドル操作を誤ればサイドミラーが擦れるような狭さの道であった。
「おいおいおい、ホントにこんなところこの車で通れるのかよ!」
「大丈夫やって。ウチこの街に来てからぎょーさん走り込んでどこがどこに繋がってるかとか、この道は通れる通れないとか全部把握してんねん。だからナビなんていらん。」
「死角があるだろ!人を轢き殺す気か!」
「あれみてみ~」
チェルシーが指を差すとそこには大きなガラス張りのビルがあり、ちょうど今の時間帯は太陽の反射が絶妙で歩道の位置がハッキリとわかるようになっていた。
「リスクヘッジもばっちりやで!」とチェルシーはウィンクをした。
そうして三十分ほどラリー染みたドライブを続け、現地に到着してサイドブレーキを引く音が聞こえる頃には胃の内容物と三半規管が重力によってあちらこちらに揺さぶられたタイラーは重度の車酔いになり、助手席で十数分休憩するほどだった。
「ほら、頭痛い言うてんのに電子タバコ吸うのはやめって。いくで。」
チェルシーは無理矢理タイラーを起こして建物の中へと入ると、独特の獣臭と枯草の香りがあたりを包んだ。
現在のアニマルシティの荒れた状況のせいもあり、騎馬隊の警官たちも別の任務に当たっている為か、人気は殆どなく馬の飼育係だけが仕事をしているような状態だった。
小屋の中で暇そうにしている馬たちを横目にあたりを捜索していると、デスフォールという名札がかかった小屋で物音がした。
デスフォールはアニマル市警騎馬隊史上最も波乱を巻き起こした死のじゃじゃ馬として有名なアメリカン・クォーター・ホースでこれまでに6人の騎手を落馬させ、全員が命を落としたという逸話を持つ馬である。
二人はその物音を辿ると、目の前には子供と見間違いそうなほど小柄で棒のように体が細い眼帯を付けたアジア系の人物が馬の糞を片付けていた。
「あーえぇと……あなたがソダム・カン二等巡査?」とタイラーが声を掛けると、めんどくさそうにしながら振り返る。
「なんですかぁ……?また左遷の話ですかぁ……?」と覇気の無い声でゆっくりと返事をする。
「私はタイラー・ナイトウッド巡査部長。こっちはチェルシー・スター。キミが凄腕のハンドラー〝マッドドッグ〟だって聞いてスカウトしに来たんだ。CLAWって知ってるか?」
「スカウトぉ……?そーんなことどうでもいいですよぉ……今はデスフォールのお世話で忙しいんですからぁ……。」
「あー……ええと、じゃあわかった。目の治療費を出すってのはどうだ?」
「この眼帯はただのものもらいですよぅ。一々病院に行ってたらお犬様に何かあった時に大変ですからぁ。それにさっきもいいましたけどぉ、私はデスフォールのお世話でいそがしいんですよぅ。」
マッドドッグは誘いに全く興味がないようでタイラーの話を聞こうともせず、ただ一心に馬の世話に励んでいた。
「参ったな……ああ、そうだ、そういえば君は元々ポール・グリッグスに師事していたと聞いていたと書類に書いてあったんだが。」
「ポール先輩ですかぁ……いきなりいなくなったと思ったら葬式に行く羽目にはなってびっくりしたくらいですよぅ。それにノスフェラトゥ様もいなくなっちゃったし……」
〝ノスフェラトゥ〟の名前を聞いたタイラーはしめた!と心の中で思うと会話を切り出す。
「ノスフェラトゥ……もしかしてブルーが飼ってるノスフェラトゥ・ザ・ブラッド・シーカーのことか?」
「え、なんなんその厳つい名前の犬。」
「知ってるんですかぁ……ノスフェラトゥ様のことをぉ……!」と、さっきの態度が無かったかのようにマッドドッグは振り返る。
「だが、CLAWには入ってくれないんだろ……そんなやつに会わせてもな……」
するとマッドドッグはタイラーの前で膝をつき、「ノスフェラトゥ様にぃ、会わせてくれるならぁ、人殺しだってやります!」と瞳をうるうるとさせた。
「じゃあ決まりだな。CLAWに入ってもらおう。」
「その前に!ノスフェラトゥ様に会わせてください!どんな方法でもいいですからぁ!お写真だけでもぉ……」
「えーと……あー、ブルー今家にいるかな……」
タイラーはスマートフォンを使ってブルーにビデオ電話をかけると、眠そうな顔をしながらベッドに横たわるラフなタンクトップを着たブルーの映像が液晶に表示された。
「〝ふああ~どうしたの?〟」
「いやな、CLAWの新しいメンバーを探しているんだが、その一人がその……えらくノスフェラトゥのファンらしくてな。入るから一度でいいから拝ませて欲しいって。」
「〝ノスフェラトゥを?ああ、ノスフェラトゥおいで。ああっ、くすぐったいってば……〟」
ノスフェラトゥは尻尾を振りながらブルーに甘え、匂いを嗅いで顔をぺろぺろと舐めていた。
「ふおおおおお!ノスフェラトゥ様、会いたかったですぅ!もっと、もっと近くで見せてください!」
マッドドッグは瞳を輝かせながらスマートフォンに表示される映像に夢中になった。
「ノスフェラトゥ様、こっちを、こっちを向いてください……!」と懇願するが、ノスフェラトゥはそっぽを向いてブルーに夢中である。
「はいはい、ブラッド・ソーセージが食べたいんだ。お座り。」
ブルーはノスフェラトゥにそう告げ、お座りの態勢を取ったことを確認すると、冷蔵庫からパックに入ったソーセージを一本与え、「いい子だ」と告げながら頭をわしわしと撫でた。
「うらやましぃぃぃ……」
「ところでラスヴェガルでの暮らしはどうなんだ?」
「いい感じ。凄い収入が多くてもう一軒家が買えたから今は一人暮らしに移った。いや、ノスフェラトゥも一緒だから二人暮らし……?まあいいや。シフトも自由に決められるし。36回払いもあとちょっとで終わりそう……ケイトとエイニスに読み書きも教えてもらってるし、幸せだよ。ほんと。」
「いい顔してるな。前のゲッソリした感じとは大違いだ。」
「ありがと……それで……」とブルーが話を切り出そうとしたところで、マッドドッグはスマホを奪い取ると、ひたすらノスフェラトゥを間近で見せるようにせがんだ。
「えー……あー……ノスフェラトゥ、ほら、なんというか……ファン……みたいだけど。」
だが、どれだけマッドドッグが懇願しようともノスフェラトゥはそっぽを向くばかりで、興味を持とうともしなかった。
「ノスフェラトゥ様、絶対に振り向かせますからね!ノスフェラトゥ様──」
タイラーは携帯を奪い返すと通話を切って本題を切り出した。
「はい、これまで!じゃあ約束通り私たちの仲間に入ってもらおう。支度してくれ。それから家に寄って犬を連れてくるんだ。」
「……わ、わかりましたよぅ……」
アンジーたちは中華街の中心地へと向かうと、そこには武装した狐仙の私兵たちがバリケードと門を作っており、まるでマッドマックス2にでも出てきそうな要塞と化していた。
「動くな!貴様らは何者だ!」と狐仙の部下はガリル・ACEを向けるが、アンジーは白旗を振りながら「私だ、アンジーだよ破浪!こいつらは私の仲間だ撃つな!調べたいことがあって寄ったんだよ!」と声を上げると門を開けた。
ギアを動かし、半クラッチで徐行させながら門を潜ると、かつての記憶とは程遠い寂れた中華街が姿を現す。
清掃員や回収業者がいないことで街中はゴミだらけで衛生環境が悪化しており、盛況だった料理店も軒並み休業の看板が出ていた。
「酷い状態ですね……前はもっと人で溢れてたのに……」
「街を封鎖されて流通もほとんど行き届いてない状態だ……そんな状態で狐仙はデスウィッシャーから街と市民を守るのに必死になってる。」
ゆっくりと車を走らせていくとようやく狐仙が隠れ蓑にしていた飲茶店へと到着する。
この店だけはまだ開いている様ではあったが案の定中に客はおらず、厨房にも人気が無い。
──ただ一つ不思議なのは店先に赤のA80型トヨタ・スープラが停まっていた。
「……先客がいるな。80スープラなんてよく乗って今出歩けるな。盗まれちまうぞ。」
アンジーはそうぼやきながら店のドアを開け、会釈する店員に「神通の間に行く。」と言うと奥の扉が開いた。
「80スープラって?」
「簡単に言えばめちゃくちゃ速い日本車さ。ファスト・アンド・フューリアスでポール・ウォーカーが乗っただけなのに今じゃ廉価グレードですら5万ドルする。」
「た、た、た、高いんですね……ウチの車とは大違い……」
アンジーたちはそのまま店の地下まで移動すると中には誰かもわからぬ中国系アメリカ人と狐仙が話しているようだった。
「おい、狐仙!そいつは誰だ?新人か?」
「ルースキーか……」
狐仙はいつものように分厚い防弾ガラス越しに口を開くがその声は全く力が無く、疲弊していることは心理学者でなくてもわかるような領域だった。
「狐仙、この連中は?」
「こやつらはCLAWと言ってな。アニマル市警の警官でありながら街を陰で守っている我々と同じ仲間だ。ルースキー、紹介しよう。メイ・シー二等巡査。アニマル市警SWATにいたライフルマンだ。」
アンジーはメイ・シーの顔を近くで見た瞬間に〝不良警官リスト〟に入っていた人物であることを思い出した。
人相は悪くてやる気はなさそうで眠たげな表情をしているが実際その通りの人間性を持ち、腕こそ立ったが遅刻の常習犯であったことが原因でSWATをクビになった人物だった。
しかし、タイミングが悪く街中でアルテサーノの起こした大規模テロが巻き起こると、自身の住まいがある中国街に幽閉されてしまい、そこで狐仙の私兵たちの手伝いをしながら街の平和維持に努めていた。
「ルースキー、おぬしと同じでこやつも上海からはるばるやってきて、結局行き倒れてしまった家系の出身でな。わらわが面倒をみとったんだ。」
「なるほどな。私はアンジー。そっちのひ弱そうなのがアミーナで、真面目そうな方がルースだ。いい車の趣味してるな。」とアンジーは握手を求めるが、メイは不服そうに握手を拒み、「あの車に絶対傷を付けるなよ。」と釘を刺した。
「それで……ルースキー、一体何の用だ?」
「もう知ってるかもしれないが……ベティが殺された。」
「なんだと……?」
狐仙は影越しであったが明らかに狼狽しており、椅子から崩れ落ちる様子が見て取れた。
ベティは中華街における銃器調達の大きな一画を担っていた為、彼女が死ぬということは私兵たちに必要な装備の一部の調達に滞りが生じるということであり、それはこのカオスな状況下において最も避けねばならぬことであったからだ。
「殺したのは……このCLAWに大昔にいたエドウィナ・ブライトバーンだ……現場に行ったが遺体は酷い状態だった。あんたも知ってるだろ……?」
「ああ……じゃが、あやつはとっくの昔にアニマルシティから消えたはずだがのぅ……」
その瞬間だった。大きな物音が聞こえると共にアンジーたちがいる部屋の中に一人の遺体が転がり落ち、それはこの飲茶店で案内係をしていた護衛だった。
首をへし折られたようで瞳孔が開き、物凄い力で首を折られたことは確実だった。
そしてコツコツと靴のソールが地面に当たる音が響き渡り、一人の見覚えのある人物が姿を現す。
「よお、ダチ公。」
──その場にいる全員が銃を向けようとした身構えた時にはもう既に遅かった。
エドウィナの拳はまずアミーナの胴を軽く打つと一瞬で意識を奪い、ルースの銃を叩き落とした上で顔面にバック・キックを食らわせて2メートルほど上昇させ、そのまま回し蹴りへと派生させてアンジーを防弾ガラスへと吹き飛ばした。
この間は僅か二秒ほどであまりの早業にココにいる誰もが圧倒された。
「随分と張り合いが無いじゃないか。しばらく見ない間に随分と鈍ったな。」
「クソ……何しに来た……っ!」
「簡単だ、狐仙を殺しに来たんだよ。」
そういうとホルスターからRSH-12を取り出して向けるが、その腕に対してメイが殴打を加えようとするが、片手でがっしりと掴んで離さなかった。
「その打ち筋……カンフーか。カンフーで一番有名な人間は誰だと思う?」
メイはその圧倒的な力に劣勢になりながら絞るように「ブルース・リーだ……」と答えた。
「ブルース・リーがカンフーを会得しつくした末に達した結論、それが〝ジークンドー〟だ。」とエドウィナは告げると、メイの態勢を崩して肘関節を逆に折り曲げ関節を後方脱臼させた。
折れた痛みでメイは地面へと嘔吐して崩れ落ちた。
「メイ!」
「なあダチ公、最近の連中ってのは皆こんなにも弱いのか?」
「……るせぇ!」
アンジーはそのまま身を任せてボクシングとかつてロシアで鍛え上げられた〝汚い喧嘩殺法〟襲い掛かり、エドウィナの腕を掴むが簡単に引き剥がされてしまう。
「……しばらく見ない間に指詰めちまったのか。格闘技ってのは指の一本一本が重要だ。よく足は小指がないとバランスを失うというが……人差し指を失ったなら論外も論外だ。」
エドウィナはゆっくりとアンジーのみぞおちへと掌底を添え、わずか一瞬の間にまるで銃弾が如き加速を付けて〝寸勁〟を打ち込むとそのまま指先が皮膚を突き破って体の中へと入り込み、腕にひねりを加えてアンジーの腹の皮を捩った。
「ぐあ゛っ゛……」
「お前も弱くなったな……」
そのまま指先を抜いて手を振り血を払うと、RSH-12を構えて再び狐仙のいる防弾ガラスへと向けた。
「そんなことをして……そんなことをして、いったい何になるというのだっ!」
「結局のところ、お前の作り上げた組織もこの街の癌なのさ。私の目指す新しい秩序の前にお前たちのような人間は必要ない。街に蔓延る蛆虫共め。」
「なんだと……貴様、わらわを愚弄する気か!わらわはこの荒んだ街を救うと誓った!全ての中国系移民が暮らしやすい場所を提供すると誓った!何がいけないというのだ!」
「最終的に……この街の住人が欲してるのはお前たちのいない平和なのさ!さあ、今から殺してやるぞ卑怯者!」
するとエドウィナはRSH-12のハンマーを起こし、防弾ガラスに目掛けて引き金を引く。
──重く腹に響くような、そんな銃声が辺りに巨大な閃光と共にこだまする。
しかし、パキパキとヒビの入る音はすれど、防弾ガラスは貫通に至る気配を見せない。
シリンダーを取り出してエジェクターロッドを押して空薬莢を押し出し、弾薬を再装填して一心不乱に撃ち込むが例え大口径であっても所詮は拳銃弾であり、そのガラスはびくともしない。
弾薬を限界まで撃ち込んだエドウィナは今度は何度もガラスへと蹴りを浴びせる。
その様子は狂気に満ちており、まるで一つの場所に突き進むための機械のようであった。
狐仙は人生でこれほど息を呑んだ瞬間は無かった。
流石のエドウィナも疲れたのか白い亀裂が大量に入ったガラスに体を委ねると、ギロリとした鋭い目で狐仙のいる方向を睨んだ。
「はぁ……なあ、卑怯者。このガラスは分厚過ぎる。ここまで硬いとお手上げとしか言いようがないな。」
「……おぬし、どうやってこの街に入り込んだ……!」
「簡単さ。抜け道を持ってる奴に賄賂を渡して入っただけ……お前は自分が守ってると思ってた人間全員が自分の味方をすると思ってるのか?ああ、他の私兵を呼んで私を消すか?外には大量のデスウィッシャーたちを待機させてるぞ?」
「……貴様!」
「じゃあな。次は顔を見せてくれよ卑怯者。」
エドウィナはそういって背中を向け階段を上って去っていく。
しかし、狐仙の恐怖はそれでは終わらなかった。
階段を上る足音が消えた後、上階からは骨をへし折り肉を弾く生々しい音が流れ続けていたからだ……
マッドドッグを引き連れてアニマル市警本署へと戻ってきたタイラーたちは彼女が連れてきた十匹の犬に目を向けた。
ジャーマン・シェパードのミセス・カーネイジ、マスティフのミスター・ブラッドステイン、ブルドッグのテラー、チワワのマサクゥル、ピットブルのマーダー、ドーベルマンのブルータル、秋田犬のヒトゴロシ、ラブラドールレトリバーのブラッディ・ヘル、パピヨンのミート・グラインダー、ゴールデンレトリバーのネクローシス。
それぞれが異様なまでに物騒な名前を付けられた犬だったが、その名前とは裏腹にかなり人懐こく、CLAWのクルーたちに向かって楽しそうに舌を出して微笑みかけじゃれる。
ミセス・カーネイジはブラックサイトの元へと向かうとお座りのポーズをしてただずっと見つめ続けた。
ブラックサイトは特に愛嬌のある反応はしなかったものの、心の奥底で〝この犬には何かあるかもしれない〟という気持ちを感じていた。
「この犬マジで超かわいいんだけど~!ミートグラインダーって名前がちょいおわだけど、あーしの飼ってるテストステロンちゃんとタメ張れるわ~!」
ココはそういいながらミートグラインダーへ頬ずりをしてチワワの毛並みを堪能する。
「テストステロンって名前も十分終わってると思うけどな……ペルシャ猫につける名前なんか……アレ……?」
「あ、関係ないですけどぉあんまり顔近づけすぎると良くないですよぉ。その子、顔面を食い荒らすのが好きなのでぇ。だから〝ミートグラインダー〟って名前なんですよぅ。」
「えっ?」
口角をぷるぷると震わせながら瞳を今にも飛び出しそうなほど張り出させ、ひたすら尻尾を振って舌なめずりをしている様子を見たココは、あまりにも恐ろしくなってミートグラインダーを一瞬で手放してしまった。
「あーしマジでウマくないし、マジ食べないで、食べないでね!マジに!」
「おおっと、ダメですよぅお犬様を雑に扱っちゃ……それに私が命令を出すまでこの子たちはぜったいに人を食べたりしませんからぁ。」
ココが恐れおののく中、タイラーは慣れた様子でミスター・ブラッドステインの頬をわしわしと撫でていた。
「殺人犬が怖いなんて思ってたらCLAWなんてやってられないぞチェルシー、ココ!」
タイラーは既にブルーが飼っていたノスフェラトゥに慣れていた為か、平然とミスター・ブラッドステインを可愛がって心を癒した。
するといきなりCLAW本部にエマから指令が入る。
「〝犬とじゃれ合うのはいいが危険事案の通報が入った。メキシコ人街でデスウィッシャーの一味が〝クルティード狩り〟を行ってるらしい……差別はいつも人を狂わせるな。アンジーたちは別の要件でしばらく手一杯のようだから直ぐに出動してくれ。〟」
「ちょうどよかったぁ。ここ最近お犬様たちに〝マトモなご飯〟を食べさせられてなかったんですよぉ、お食事の時間ですねぇ。」
CLAWのクルーは大小さまざまな犬十匹と共にグルカの後部にタコ詰めにされた挙句、いい加減な運転であちらこちらに体をぶつけながら十分ほどで現着すると、全員は銃声が聞こえる中で外へと飛び出した。
「はぁ……相変わらず酷い運転だな!私たちをミキサーに入れられた具材か何かと勘違いしてるのかよ……」
「ちゃうねん、ウチ運転専門やからこないな、ドンパチやる任務初めてやねん!」
「はぁ……?ズブのド素人ってことか!?」
「チェルシー、マジで運転一本で生きてきた系だから、ガチ未経験なんだわ〜。」
「マルチネスによれば、この先でデスウィッシャーと住民たちが銃撃戦を行っているようだ。規模は十人程度。敵味方を誤認せずに慎重に事を進める必要がある。」
「ちょっと待ってくださいよぅ。偵察も攻撃もぉ、お犬様たちに任せてください。」
マッドドッグはそういうと背負っていたリュックの中から大量の犬用ヘッドホンと小型のボディカメラを取り出して犬に取り付けると、巨大なアイパッドを取り出してカメラを無線接続した。
「なんやそれ、えらいハイテクやなぁ。」
「K9ダークファイター・システムって言うんですよぅ。お犬様のヘッドホンにぃ、遠隔で私の声を聞かせてぇ、カメラ越しで指示をするんですよぅ。あ、銃なんて必要ないんでぇ、適当に安全装置かけててくださぁい。」
マッドドッグはインカムを付けて指で二度指をスナップすると、犬たちに向かってウォーミングアップの指示を出す。
──「お座り。」と言えば皆一様に座り、「お回り。」と言えば皆一様に回る。
その様子はまるで精密機械のようであり、マッドドッグが一定の音調を保った声で指示を出した時点で可愛げのあった犬たちの表情は一変し、殺気立った〝獰猛な猟犬〟と化す。
「前へ進め・ゴー。」とマッドドッグが指示を出すと、犬たちは銃声に怯えることなく一斉に走り出し、メキシコ街で銃撃戦を行っているデスウィッシャーたちが直ぐに見えてくる。
「クルティードは街をめちゃくちゃにした!所詮移民なんてのは害にしかならない!アメリカから出ていけ!ここは白人の土地だ!」
「元を辿ればお前たちだってネイティブアメリカンからこのアメリカという土地を奪った侵略者じゃないか!歴史というのは流動的なものだ。どんな諍いがあろうと責任の無いものたちだってなんとか丸く皆収めようと努力してる!なんだって、テロリストと同じ人種が一人二人いただけで全ての人種を憎むことができるんだ!あのテロで俺は娘を亡くしたんだぞ!」
「黙れ!元から気に食わなかったんだ。肌の色が違って全てが劣るお前たちが平然とアメリカにのさばるのがな!お前たちのような人間がいたら白人は絶滅してしまう!」
「馬鹿野郎……俺の妻は白人だ!」
デスウィッシャーとメキシコ街の住人が銃を片手に怒号を浴びせ合う中、一度犬たちは時が止まったかのように静止した。
そしてはっきりとした声でマッドドッグの声が響く。
「所詮、血の色はぁ同じなんですけどねぇ。──〝喰らいつけ〟。」
マッドドッグの冷徹な指示と共に犬は白人至上主義者のデスウィッシャーたちへと飛びかかると、あっという間に急所という急所に喰らいついて血塗れにしていく。
辺りには悍ましいまでの絶叫が響くが、犬はそれも意に介さずむしゃぶりつく。
「な、なんだ!?犬……?く、食ってるよ……人……」
デスウィッシャーに襲われていたメキシコ人男性は持っていたトルコ製ライフルをその場に落とすと目の前の様子に呆気に取られていた。
みるみるうちに犬はデスウィッシャーを肉の塊へと変えていき、それぞれが好む部位をむしゃむしゃと嚙み砕く。
無邪気な犬が人を食う有様は異様な光景であった。
「もう大丈夫ですよぅ。」とマッドドッグが作戦終了を告げると、グルカを動かしてパトランプを輝かせながら拡声器で市民たちに銃を捨てるように通達した。
住民たちは皆一斉にそれに応じると、CLAWのクルーたちは事件に使用された銃器を取り上げ必要な現場の事後処理を済ませた。
「ま、まだ食べとんであの犬……」
「ああ、しばらく食べさせてあげてくださぁい。本当にお腹が空いてるんです。お犬様。」
数時間後ブルドッグウェイにあるCLAW本部へと帰還したタイラーたちであったが、そこには息絶え絶えで自分たちの治療をしているアンジーたちの姿があった。
アンジーは居たそうに目を瞑りながら自分の腹の傷口を縫っていた。
「お、おい!どうしたんだ、なにがあったんだ相棒!」
「ヘマしちまった……まさかあそこまでエドウィナが腕を上げてるだなんておもわなかった……」
「銃を抜く前に昏倒させられた……一生の不覚です。これがもしタイラーさんだったなら一生立ち直れない……」
「こ、こ、こ、この数時間の記憶が全くないぃ……あ、で、で、で、でも思い出しゲ、ゲ、ゲロしそう……」
タイラーは周りを見渡すと1人の見知らぬ中国系アメリカ人がいることに気づき、アンジーに誰であるかを尋ねた。
「コイツはメイ・シー。不良警官リストの一人だ。中華街で会ったばかりだが……巻き込まれてこのザマさ。ついでだから運んでやった。」
「腕の関節が折れてるみたいだが……」
「寝てる間に治しちまえ。」
タイラーは寝ている状態のメイの腕を掴むと、安全な位置で簡単な触診を終えた後に簡易的な閉鎖性整復をして関節を元の位置へと戻すと、そのがっちりと関節が嵌まる音と痛みの衝撃で嘔吐しながら目を覚ました。
「うがぁっ……はぁっ、はぁっ……何があった……何があったんだ……」
「いいから痛み止めを飲んどけ。しばらくはずっと肘が腫れてるはずだ。」
「だぁ、クソ……服がゲロ塗れになっちまった……」
「ゲロ塗れのところで悪いがウチは今人手不足なんだ、CLAWに入ってくれないか?」
「は、はぁ……?腕折られて見知らぬ場所に連れて枯れた挙句、何も知らない組織に入れって……?」
するとタイラーはデスクに置いてあった不良警官リストの封筒を取り出してメイ・シーの経歴に一瞬目を通す。
「上海出身の移民で……ライフルマンをやってたんだな。成績は良いが遅刻癖が仇になってクビに……両親は交通事故で他界し、肉親の祖母の治療費を払うために活動してると。」
「……だからなんだよ。」
「オッケー、私は今疲れてるからとっとと取引を済ませよう。危険手当に昇進昇給諸々付いて年収14万ドルでウチに来ないか?」
「何がなんだかわっかんねーーーーよ!まず頭の整理をしてから決めさせてくれ、肘がこんなに腫れてんだぞ!それにあの馬鹿野郎を一発殴らねえと気が済まね──」
すると遠くからタイラーに向かって一発の薬莢が投げ渡された。
それはエドウィナが使用していたRSH-12の12.7×55mm弾で、あの乱射後に密かにルースが回収していたものだった。
「その弾薬はロシアの特別な法執行機関でしか使用されていない希少な弾薬です。わざわざあんなリボルバーを使ってるわけですから、どこかで調達する必要性が出てくるはずです。アニマルシティの死の商人を洗えばエドウィナの尻尾が掴めるかもしれません。」
「でかしたぞルース!……それでメイ、アイツをぶん殴るチケットは手にできたがどうする?」
「ついでに言うと、気絶したお前をスープラごとデスウィッシャーを潜り抜けて運んだのはこのアンジー様だぞ。ちょっとは感謝しろ。」
「チッ……わかった、やるよ。やればいいんだろ!上等だ!」
わけもわからぬ状況でCLAWの入隊を強制されたメイであったが、その隣で頭がボケた状態のアミーナはピットブルであるマーダーに懐かれていた。
「わ、わ、わ~!な、な、な、なんか赤いけど人懐っこいワンちゃんだ!お、お手!」
そういってアミーナはお手のポーズをすると、マーダーは気分が悪そうに先ほど食いちぎった人間の手首を大量の血液と共に吐き出したのであった。




