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Case.1 ── 人手不足 ──

──エル・アルテサーノの起こした大規模テロから九ヶ月後。デスウィッシャーを名乗る暴徒がアニマルシティを占領せんと暴走し出す。

その頃、世界を救ったはずのCLAWは主要なメンバーの多くが前線を退き、残されたメンバーは精魂尽き果てるまで戦った結果、完全にやる気を失ってしまった。

──とある日の出来事だった。


アンパサンドチームとオンドチームの駆るテラダイン・グルカ装甲車はパトランプを輝かせ、サイレンをあたり一面に響かせながらタイラー・ナイトウッド巡査部長による通報を受け、座標を元に現場へと急行していた。


「到着まであと何分かかりますか!」


「約三十秒!全員、装備の点検を!」


殺気立つCLAWのクルーたちは皆一様に銃器のプレスチェックを行い、車が止まると後部に乗っていたメンバーから順に飛び降りていく。


事態は切迫しており、コンマ数秒の余裕すらないような状態だった。


そんな時だった。クルーの一人が上から降ってくる大きな黒い影を知覚した。


そしてその瞬間、落ちてきた巨大な塊はグルカの運転席付近へと鈍い音を立てサイレンを一瞬掻き消すと、その衝撃であたりには破片が飛び散った。


あたりには金属の軋む音が響き、それはまるで時が止まったかのような静寂に包まれた。


衝撃に驚いたCLAWのクルーたちはその〝落ちてきた塊〟を車から引きずり下ろすと、それは判別不明なほど顔面が損壊した遺体であった。


だが、CLAWの誰もがその遺体が誰であるかを判断するのに時間は必要無かった。


──その遺体は、人差し指が欠けていた。







──時は遡り今から一年前。ロス・クルティードを率いていたエル・アルテサーノはアニマルシティで大規模なテロを起こした。


そのテロリズムは市民を巨大な暗雲のような恐怖へと閉じ込めてしまった。




PM 12:34



〝大変な事態が起こりました!連鎖的にビルや建造物が爆発して辺りは火の海です!


土やコンクリートの粉塵が辺りを覆って周りが見えません!まるで夜のようです!


サイレンが鳴り響き大パニックの状態です!


ああッ、クソ、巻き込まれるぞッ!


おい、そいつはもう助からない!行くんじゃない!……あぁ……そんな……〟




カメラには倒壊した建物に押しつぶされる消防車が克明に映し出され、その悲鳴と叫び声までもがハッキリと記録されていた。




PM 12:36



〝ママ、ビルが、ビルが落ちてくる!ママ、起きて、起きてよぅ!足が、足が……!〟


〝ママはもうここにはいない!おい、グウェン手を貸せ!早く病院に運ばないとこの子が死んじまう!〟




生存した警官のボディカメラには足をコンクリートで破壊され母親を失った子供を救助する生々しい様子が残されていた。




PM 12:40



〝私の息子を助けてくれ、お願いだ!あのままじゃ焼け死んでしまう!〟


〝ダメです!もう手遅れだ……このままじゃ巻き込まれる!貴方だけでも生き延びないと!〟


〝あああああ熱゛いっ、熱゛いようっ、パパ、パパ、助けて、置いていかないで!熱い、熱い!パパ!パパァ!パパ……〟


〝殺してくれ……殺してくれよぅ、息子を見殺しにしてまで生き延びる意味なんて……あるわけがないだろ!殺せ……殺せよ……〟




一般人が撮影したこの映像には取り残された男の子がパニックを起こし、炎に包まれ炭と化すまでが淡々と記録されていた。




時を同じくした頃にSNSにはとある動画が拡散された。


仮面を被りエイデンと名乗る人物がテロが起きる数日間に行われたSWATが〝事故に巻き込まれた〟とされる映像の真相をリークしたのだ。


そこには閃光に包まれ死亡したSWAT隊員のボディカメラに収められた核爆発に巻き込まれる映像が記録されていた。





〝アニマル市警によってロス・クルティードのリーダーであるエル・アルテサーノが確保されたというニュースが飛び込みました!調べによれば街でテロを起こしたのはクルティードのようで……〟





〝アニマル市警がメキシコとの国境付近で核兵器が使用されたという事実を隠ぺいしていたとリークする動画が話題になっています。アニマル市警からの見解によればAIによる捏造映像だとの発表がありました。〟


大規模テロが起きた直後にも関わらずアナウンサーは平静を装いながら文章を読み上げるが、その声は震え続けていた。





〝現在、アニマルシティで大規模な暴動が起きています!州兵が動員されるのは実に十年ぶりです!見てください、機動隊に市民が火炎瓶を投げています!先月起きた大規模テロによって疑心暗鬼に陥った市民に火をつけてしまったようです!更には多くのメキシコ系移民が迫害の対象になっています!世界は一体どうなって……〟




〝アニマル市警も州兵も信用できるか!この街は私たちが守らなければならない!連中は我々に嘘をついて欺き、真実を隠ぺいした。我々デスウィッシャーがアニマルシティを守る!〟






CLAWのクルーであるルース・サマーズはタイラーからの勧めで経験を積むため、アニマルシティの真反対に位置するアリアミのAPDへと出向していた。


そしてようやくアニマルシティに帰ることのできるその日がやってきた。


ビーチで有名なリゾート地で小麦色に焼かれ、アリアミでたくさんの土産物を買い、アロハシャツを着て安物のサングラスをキメ、すっかりアリアミに染まったルース。


「ただいまタイラーさん!」と元気に声を上げ、ブルドッグウェイにあるCLAW本部へと帰ってきたルースが目にした光景はあまりにも異様なものであった。


「すぅ~……はぁ……おい、相棒。ミステリーボックス回してる最中に勝手にゾンビ殺すなって何回も言っただろ。」


「うるせぇ、私が先にサンダーガン手に入れたからって僻むなよ。」


「さっきはマスタング&サリーで自爆してゲームオーバーになっただろうが!」


「お前だってこの前の前にレイガンで自爆した癖に!」


タイラーは死んだ目をしながら目の前にある少し年季の入ったXBOX360でゲームに勤しんでおり、電子タバコをふかして当たりには特有の少し独特な香りが漂っていた。


「あ、あの……えと。タイラーさん、ただいま……」


「あん……?ああ、ルースかお帰り!そうだ、三人でやらないか?今ゾンビモードでキノ100ラウンド回すチャレンジをやってるんだけどさ、この馬鹿がダウンしまくるから30ぐらいで限界来ちゃって……」


「な……なんで仕事場でゲームを……?」


「なぁ、ゾンビモードなんてやめてホットパースートとか、レフト4デッドやろうぜ。」


すると署内放送でエマの声が聞こえてくる。


「〝デスウィッシャーがローズミッド地区で銃撃戦をしてるみたいだ……タイラー、アンジー出動。〟」


タイラーとアンジーはめんどくさそうに頭を掻きながら重い腰を上げると、その辺に置いてあったライフルを手に取った。


「あ~あ。またデスウィッシャーか……クソ忌々しい……相棒、ルース、出るぞ。」


「え、えっとまだ制服に着替えてないんですけど……」


「服なんてどうでもいいよ。銃持って防弾ベスト着てりゃなんでもいい。」


困惑するままにルースは駐車場へと向かうと、何故かグルカではなくアンジーの私物車である青いフォルクスワーゲン・ゴルフ GTIのMk5型へと乗り込んだ。


「あれ?装甲車に乗らないんですか?」


「だって目立つんだもん……今アニマルシティでパトランプとサイレンなんて派手につけたら袋叩きだよ。」


「は、はぁ……」


運転席に座ったアンジーはめんどくさそうにギアを入れてゴルフを動かし、隣では死んだ目をしたタイラーが頬杖をつきながら電子タバコの臭いを漂わせる。


「あぁ……ヤニ切れで頭いたい……相棒、もう一本ちょうだい。」


「もう吸わないから丸ごとやるよ。」


「おお、サンキュ。」


アンジーは片手間にタイラーの着ているプレートキャリアの空いた部分にタバコの紙箱をねじ込むと、タイラーはそこから一本取って電子タバコの振動音が静かに車内に響いた。


「え、ええと……その、タイラーさん、どうしちゃったんですか……?」とルースは困惑を口にする。


「すぅ……はぁ……この半年、テロが起きてデスウィッシャーとかいう自警団集団が蔓延り始めてからアニマルシティは随分様変わりしちまったよ。都心部はまだマシなんだが、そこから外れるとカオスが続く。警察は常に袋叩き。出動しただけでSNSで晒されて悪口攻撃を喰らいまくる。それに……ブルーは辞めちまったし、シバサンは産休。警視は管理職で忙しくてルフィナはそれの手伝い。お陰で私たち二人だけで危険任務ばかりこなす羽目になった。寝不足だしマトモに家にも帰れない。」


やつれたタイラーは心底疲れ切った表情でただ虚ろに虚空を眺めて電子タバコを吸い続け、そこにはかつて憧れた活力に溢れた面影は消えつつあった。


「よし、ついたぞ。ライフルタイムだベイビ~。」


二人は後部ハッチを開いてライフルを装填すると、それに続いてルースもMP5に弾薬を装填し、隊列を組みながら事件現場へと向かうと、そこはもう既に被害者が射殺され、犯行を行ったと思しきデスウィッシャーがまるで中東の反政府ゲリラかの如く安物の銃器を天に掲げていた。


「あぁ、もう手遅れか。帰ろうぜ相棒。」


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ!殺人現場だってのにあのまま放っておく気ですか!警官は1か100じゃなくて50をしないといけない仕事なんですから!」


「もう毎日こんな感じで一々やってられないんだよ。アニマル市警の本署なんて留置所がパンクして順番待ち状態なんだぞ。」


「じゃあ私がやりますよもうっ!」


ホルスターからX26テーザー銃を取り出して撃つと、被疑者は痙攣しながらその場を倒れ、ルースは手錠を取り出すとデスウィッシャーの一人を拘束して二人の元へと連れてきた。


「おい、アロハシャツを着た不真面目な警官が正義を行った英雄を捕まえてるぞ!」と野次馬はスマートフォンを向けながらカメラの録画ボタンを押した。


犯人を拘束して歩くルースの背にはひたすら市民たちの罵声が響き渡り、今まで感じたことのない居心地の悪さに不快感を感じて眉を顰めた。


「おい、ホントに本署に連れてくのか?書類も書かないといけないのにめんどくさい……」


「……いい加減にしてください!」


ルースの柔らかな平手はタイラーの頬へと直撃すると、顔にピンク色の痣を残した。


「私の憧れたタイラーさんは一体どこへ行っちゃったんですか!あの頃のタイラーさんはまるで煌びやかな太陽のように輝いていて、制汗剤の匂いの奥底に香る汗臭さがたまらなかったのに、今は鼻につく醜いヤニの臭いばかりさせて……解釈違いもいいところですよ!タイラーさんはウェディングドレスを着て私とバージンロードを歩かないといけないんですよ!?なのに、そんなくたびれたらどうしようもないじゃないですか!」


「ウ、ウェディングドレス?バージンロード?解釈違い?い、いったい何を言ってるんだルース?」


「この分からず屋!朴念仁!ダメ虎!私の待ち遠しかった半年を返せ!」


ルースはこの半年間の訓練で鍛え上げた鉄拳をタイラーのみぞおちに食らわせると、追い打ちをかけるようにもう一度頬を平手打ちした。


「もういいです!ボスに直訴します!私に見合うお嫁さんになれるまで許しませんからね!」


「恋する乙女は強いなあ……」とぼやくアンジーを背にルースは容疑者の首根っこを掴んで一人で帰ったのだった。






ルースは容疑者を本署へと移送するとその足でエマのデスクへと向かうが、そこには疲れ果ててデスクで眠ってしまっているエマとしわしわになったルフィナの姿があった。


「お……起きてください!ボス!」とルースが首根っこを掴んで揺らすと、エマは目が覚めたのかハッとなってルースに「おかえり」と言った。


「ボ、ボスにルフィナさんまで……なんなんですかその体たらくは!」


「お前がいなかったこの半年間、デッカード警視正の代わりにCLAWの裏方をやってたんだが、各方面への根回しに報道規制、確保した容疑者の情報操作の何から何までこなしてたんだが……もうやることが山積みで完全にパンクしてしまって。その上人手が足りないせいでタイラーとアンジーに無理を通して四六時中待機してもらってたんだ……私もたまに現場には出てたんだが何せ書類仕事が多すぎて現場に行くより優先すべきことが……娘や夫の顔よりもベッドが恋しいと思ったのは生まれて初めて……だ……」


「任務で生じた施設の修理費用や予算の工面と方々への説明で頭がぐらぐらですわ~。ああ、聞いてくださいまし、今月に入ってまだカルラとたったの25回しかセックスしてないんですのよ、新婚なのに……あ、シバサンのインスタ……」




@bucky_cbr500r ♡@naginagi_Slipknot


〝イェーイ、妊娠6カ月目のスネークビーチバカンスだよ~!


つわりキツイけどすっごい幸せ~ラブラブピース!


ああ、早くまたゼットとCBRに乗りたいなあ。


クロスボーン、英才教育手伝えよ!〟


@harleyshop_crossbornが「いいね!」しました。




ルフィナのスマホに表示されたインスタのストーリーにはお腹が膨れたシバサンとナギサが二人でピースを幸せそうな様子が収められていた。


「む……ムカつきますわ……なんで同じ新婚なのにあっちはこんなに幸せそうでわたくしはこんな場所で永遠と紙を眺める羽目になってるんですの……?こんな無垢そうな顔してるくせにこいつら陰でひっそりとセックスしてたんですわ!は、はやくカルラとペットプレイがしたいですわ!わたくしの庭で裸に剥いて首輪を付けて木に……!」


ルフィナは悔しそうに唇を嚙み、その瞳には一滴の涙が零れていた。


「わ、わ、わ!落ち着いてくださいルフィナさんそんなお下品じゃなかったじゃないですか!疲れすぎですよ!どんだけストレス貯めてるんですか!」


「い・い・で・す・こ・と!ここ最近は一週間家に帰れずどれだけ頑張っても誹謗中傷の雨あられ!制服を着て外に出ようもんなら石を投げつけられるんですわ!それに幻肢痛も治らないし、リハビリも上手くいかない!お陰で今朝逆流性食道炎になりましたもの!ふざけんじゃねえって話ですわ!……というわけで、一仕事終わったので私は10分就寝しますわ。おやすみなさい。」


「お、おやすみなさい……」


ルフィナはがくりと首を倒すとそのまま深い眠りに落ちてしまい、ルースはこの惨状に頭を抱えた。


「ど、どうしてこんなことになってしまったの……うう……」


「やれやれ……戦争を止めた英雄たちがこの有様か。目も当てられないな。」


ルースは声のした方向に振り向くと、そこには見たことのある黒づくめの恰好をした人物がナイフトゥワーリングをしていた。


「ええ~と貴方は確か……そうだ、いきなり現れてずっとナイフで遊んでる人だ!」


「ルース・サマーズ。この半年間アリアミに出向していたのを見ていたぞ。随分といい経験を積めたじゃないか?」


「え!?じゃあ、タイラーさんがゴミ箱に捨てたTシャツを拾ってあんなことやこんなことをしてたところも見てたんですか!こ……この変態……!敵……お前は敵……!」


「……監視していたことを否定はしない。だが今はそんなことは問題じゃないだろう。CLAWという世界で最も優れた警察組織が崩壊寸前。これは由々しき事態だ。」


「……まあそれは一理あります。いきなり現れてずっとナイフで遊んでる人さん。」


黒づくめの人物は真剣そうな表情で懐から数枚の紙束が入った紙封筒を取り出すとルースに手渡した。


「……これは?」


「お前たちに一番足りていないのは人手だ。そこでこちらがアニマル市警のデータベースにアクセスして、優秀なはみだし者をファイルに集めた。どいつもこいつも左遷されたか停職処分で燻っている奴らばかりだ。こいつらをリクルートして隊に引き入れる。」


「なるほど……スカウトって奴ですね!冴えてますね、いきなり現れてナイフでずっと遊んでる人さん!」


「……こちらの呼び名はどうでもいいんだが……それは少し長くないか?」


かくしてルースは黒づくめの人物の新たな仲間を引き入れるという提案をエマに受理させると、書類仕事がまた増えたのであった……






「……というわけでお前たちには新しい仲間を探してもらうことになった。しばらくCLAWの仕事は休みだ。」


エマがタイラーとアンジーにそう伝えると、タイラーは少し機嫌が悪そうに話した。


「ええ、仲間を集めるのは構いませんよ。だけど納得がいかないことがあります!なんで、CIAのクソッたれが!我々の仲間として馴染んでるんですか!」


タイラーは腕を組んで余裕そうな表情をしている黒づくめの人物を指差すと、「信用できない。」と不満を漏らした。


「……その気持ちは痛いほどわかる。だが、今は猫の手も借りたいぐらい切迫した状況だ。CLAWの主力がルース以外過労死寸前の状態でマトモに仕事ができるわけないのはお前もわかってるだろ?良い提案をしてくれた上に戦力に加わってくれるとまで言ってくれたんだ。私たちの仕事は街の平和を守ることであって私怨をぶつけることじゃない!それじゃデスウィッシャーと何も変わらないだろう!」とエマが一喝すると、納得したのかしていないのかはわからないが不貞腐れた表情で提案を受け入れた。


「まず仲間を集めるには〝敵を知れ〟だ。皆も再三わかってるだろうが半年間分の捜査資料を共有する。」


エマはパソコンに繋げたプロジェクターで現在のアニマルシティの勢力図を纏めたファイルを投影した。


──ファイル名はThe Maverick Wanted。


今のアニマルシティは複数の勢力に支配されて分割統治されている異常事態となっている。


まず一つ目の組織はデスウィッシャー。


法執行機関への不信感から民間人が一体となって作り上げられた自警組織で最も精力的で規模が大きい組織。


現在は警察に代わって犯罪者狩りを行っており、今まで勢力を伸ばしていたマフィアやギャングは逆に追われる状態になっている。


表向きに先導を行っているのは有名な右翼系インフルエンサーである〝トゥルーボム〟を崇拝している一方で、真実をリークした〝エイデン〟と呼ばれるマスクを付けたアノニマスもどきの人物をまるでキリストが如くあがめている。


トゥルーボムの本名はジョン・スミスというごく普通の名前で最初は全く受けていない弱小インフルエンサーであったが、世間でアニマル市警の不正が公表されたことに乗じて扇動を行い、現在は主な指導者として活動している。


彼個人は大したことはないがその信者が厄介で警察官は近寄れない。


「SNSを使って動くやつらか……結局のところパソコンやスマホを取り上げても信者から受け取れば復活するだろうからな……元を絶たなきゃな。」




もう一つの勢力はロス・アバンドナドス。


ロス・ビソンテスの残党とデリンジャー強盗団の生き残りで構成された民兵組織であり、サウスアニマルシティ周辺を統治して軍事キャンプを作り上げている。


彼らをまとめ上げているのは本名不詳のおそらく顔立ちから朝鮮系と推測される〝デイジー〟と呼ばれる人物と、クリス・マルティネットというアメリカ海軍出身の元軍人だ。


デイジーはクルティードのテロ事件で爆破された建物に奇跡的に残っていた断片的な映像で彼女と思しき人物が映っており、FBIの手配対象にもなっている最重要ターゲットの一人である。


「爆弾処理班が必要になるな。結局のところあの〝ウザい後輩〟頼りになりそうだ。電話しとく。」


クリスに関してはNavy SEALsの派生組織で同名のステルス船舶を利用した特殊任務に特化したSEALIONsに所属していた経歴のあるプロで要注意人物でもある。


「軍人か……それにデリンジャー強盗団……クソ、なんでブルー辞めちまったんだ。無理矢理にでも引き留めりゃよかった!」




そして窃盗や殺人といった直接的な実害は伴っていないものの、ストリートレーサーたちもまた手配対象である。


彼らはスタンドを占拠して都心部以外のガソリンを独占しており、外界からの供給が途絶えている現状、排除しなければならないターゲットの一つだ。


彼らを取りまとめているのはタケ・〝ジンソク〟・カグラギと呼ばれるヤクザ出身の日系人レーサーで、2JZツインターボエンジンにスワップしたGR86を駆り暴走行為を続けている。


「シバサンとゼットがいればこんな奴一瞬で蹴散らすのに……」




「……とまぁ、こんなところだ。なんというか〝痒いところに手が届かない〟状態だ。そこで……ヤツが作ったこの不良警官リストが役に立つ。ところで、流石にちゃんとしたあだ名で呼ぶべきじゃないか?」とエマが言うと、黒づくめの人物は頷いた。


「いきなり現れてナイフでずっと遊んでる人さん!」


「ジョン・クソッたれ・ドゥ!」


「バットマンですわ!」


「どいつもこいつもネーミングセンス無さ過ぎるだろ!CIAなんだから〝グアンタナモ〟とか〝ブラックサイト〟とかでいいだろ!」


罵倒とも取るべき名前が並ぶ中、アンジーの鶴の一声で黒づくめの人物の〝ブラックサイト〟が選ばれることになった。






FBI捜査官であるアミーナ・カーンは溜まった有給を消化しようと一週間の休みをうきうきしながら計画していた。


「コ、コ、コ、コミコン行って~憧れのジェンセン・アクレス様とツーショット写真を撮って……そ、そ、そ、それからそれから、ディズニーランドでスターウォーズのギャラクシーズ・エッジに遊びに行って……あ、あ、あ、あと、最近買ったどうぶつの森もやって……ジョ、ジョ、ジョジョ6部を一気見したいなあ♪」


胸を躍らせながら休みに何をするかを考えていたアミーナだったが、彼女の持つスマホに上司であるエイヴァ・バットリー・キャンベルから通話が入る。


「〝……は、はい?〟」


「〝ああ、悪いアミーナ。残念だが召集が掛かった。今からだ。有給消化はまた別の日にしてくれないか?本当に申し訳なく思ってる……〟」


「〝は……?〟」


「〝CLAWからの呼び出しなんだ。なんでも犯罪勢力に爆弾を作るプロがいるから、核兵器を解除したお前の力が必要だそうだ。〟」


「〝い゛……い゛ぃ゛い゛いいいいいい゛いいいいいいい゛いいいいいいいいいぃぃ゛!〟」


アミーナは心の感情を噛み殺しながら悶えるような奇声を上げながら、エヴァを通話越しに威嚇する。


「〝アニマルシティがヤバイってことはニュースで見て知ってるだろう?なあ、ウチで一番優秀な爆弾処理班はお前だけなんだ!頼む、後生だから!〟」


「〝い゛いいいいいいいぃぃぃぃ゛いいいいいいい゛゛いいいいいぃぃぃぃぃ゛〟」


「〝頼む!派遣の間は特別手当も入るし、ボーナスだって出すから!なあ、この通りだ!〟」


「〝あ゛……〟」


「〝あ?〟」


「〝あんな魑魅魍魎が跋扈する幽霊屋敷みたいな掃き溜めなんて行きたくないですよおぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!私がどれだけ酷い目にあったか覚えてますか!愛車は燃費最悪の魔改造ホットハッチにされ、メキシコ軍とやりあって挙句核爆弾を解体する羽目になり、道中バイクでおっかないことするし!二度と行くわけ無いじゃないですか!アニマルシティになんて死んでも絶対……〟」


「〝そういうことだからブルドッグウェイに向かってくれ。じゃ。〟」


ツーツーという音と共にアミーナの魂の抵抗は虚しくも敗北し、自宅の中で喉が枯れるほどの勢いで叫ぶが帰ってきたのは隣の家からの苦情だけだった。


「い、い、い、いいですようだ……別にジェンセン・アクレス様に会えなくたって……ギャラクシーズ・エッジでライトセーバーを作れなくたって……動物の森が出来なくたってええ……予約してたホテルのキャンセル料請求されたってえ……〟」


アミーナの褐色の肌に透明の粒がほろりと落ち、この世界の全てに憎しみを覚えそうになった。


30分ほどベッドの枕に唸った末にようやく腹が決まったアミーナは下品なフレイムペイントが施された〝チンクエチェントの末路〟の隣に停めていた最近買ったばかりの車に着替えや財布の類の荷物を投げ入れた。


初代大宇・マティス。韓国の大宇がスズキ・アルトをベースにチンクエチェントの没になったコンセプトデザインを流用して作られた小型のハッチバック車である。


本来マティスがアメリカへ輸出されたのは二代目からだが、25年ルールの解禁によってアメリカの中古車ショップに日本経由で買い取られた個体である。


アミーナは輸入車ショップで新たなチンクエチェントを買うつもりであったが、マティスのその丸っこくてキュートなデザインに惹かれ、店員の「チンクエチェントになるはずだった車。」という口説き文句に惹かれて3000ドルで購入した個体である。


ハッキリ言って性能面や使い勝手は現行の車の方が圧倒的に上ではあったが、アミーナはこれが運命だと思い即決する他なかったのだ。


シートベルトを付けると鍵を挿入してエンジンを起動し、直列3気筒の優しいエンジン音が鳴り響く。


ウインカーを出してしっかりと巻き込み確認をしてゆっくりと車を駐車場から出すと、そのままアクセルを踏んでアニマルシティへの道を徐々に突き進んでいく。


スマートフォンホルダーに付けたアイフォンでバックにSpotifyでアニソンを流しながら道を辿っていき、もうやけになってこの旅を楽しもうと考えた。


法定速度厳守でゆっくりと進み、一時停止もきちんと守る。


──そんなゆとりのあるドライブだったが、あるアクシデントが起きる。


ある時アミーナがブレーキを踏もうとするとスカスカとした感触がして、スピードが落ちていないことに気づいた。何度踏んでも油圧が復活しないのだ。


「あ、あ、あ、あれ?お、お、おかしいな、ブレーキが効かない……ブレーキが効かない!?そ、そうだ、サイドブレーキ!」


アミーナは慌てふためきながらサイドブレーキを思い切り上げると、後輪がロックしたことで制御を失い、一回転するものの運良くどこにもぶつかることはなかった。


「バカヤロー!なんて運転しやがるんだ、死にてえのか、免許取り直してこいこの馬鹿たれ!ファック・ユー!」


隣のレーンにいた日産・アルティマに乗った白人にマックシェイクの入った紙コップを投げつけられ、アミーナは唸った。


「い゛……い゛ぃ゛い゛いいいいいい゛いいいいいいい゛いいいいいいいいいぃぃ゛!」






きちんとした体調に整えるべく数日後間CLAWは一時的に活動を停止し、きちんと休息を取り終えた後でタイラーとアンジーは私服を着て〝不良警官リスト〟を探ることにした。


まず最初に2人が隊で最も必要と考えたのは凄腕のドライバーだった。


というのもシバサンがいないこの半年間で運転が間に合わず、到着した頃には犠牲者が出ていたという事態が3回に1回は起きる始末であり、CLAWの即応性という強みを完全に欠いている状態だったからだ。


「チェルシー・スター。オーストラリアのニューサウスホエールズ・ハイウェイパトロール出身。ランエボ隊の指導員としてアニマルシティ・ハイウェイパトロールに出向後、緊急車両として配備されているランエボを違法な高性能パーツで改造して停職処分になるが、停職中も無給で勝手に仕事を継続している……か。」


──ランエボ隊、それはアニマルシティ・ハイウェイパトロールの中で最上位に位置するSWATのような存在。


他のハイウェイパトロールで言うところの特別追跡部隊に該当し、1993年から2016年までの間に三菱・ランサーエボリューションを採用し続けていたことから部隊名もランエボ隊となった。


既存のランエボが老朽化し始めパーツが高騰して維持予算が馬鹿にならないことや、三菱車に異様な執着を向けていたリー・シェバ・ロディアス長官が定年退職したことで新たに就任したブッダ・ラス長官がスバル車であるWRXS4の納入を決め込んでいたが、アニマルシティの封鎖や大規模テロによる復興のための予算削減で納入計画が白紙となり、現在もランエボ隊としての活動が続いている。


「今は交通通りが少ないからストリートレーサーがやりたい放題やってる。無線で呼び出しゃ来るだろ。」


アンジーはそういって望遠鏡でハイウェイを眺めながら適当にスピード違反を行っていそうな車両を見つけると、ハイウェイパトロールの周波数を使って無線で追跡の連絡を入れた。


「〝え~アニマルシティ・インターチェンジ付近で暴走行為を行っている車両を発見。該当車両は赤のマツダ・RX-8。ランエボ隊のLEU-1に出動を要請します……〟っと。」


「〝こちらLEU-1!了解!ランエボ隊の実力見したる!」


オーストラリア訛りのある声と共に停止していた一台のインターセプターがパトランプとサイレンを響かせながら、追跡を開始する。







「おおマジか。ありゃエボⅠだぜ。あんな骨董品出してくるなんてどうかしてる。」


「新しめの車両が目立って使えないから倉庫で埃被ってた個体を蔵出ししたってわけか。」


望遠鏡の先には三菱の傑作である4G63エンジンの心地よいターボの轟音を轟かせながら一切も躊躇なくベタ踏みで進んでいくエボⅠの姿が映った。


「RX-8如きにウチのエボは負けへん!」


回り続けるエンジンの金属音と歪んでいく視界と共にチェルシーのエボⅠは風と一体になっていき、ぐんぐんとRX-8のテールに迫る。


「これや、このシートに押し付けられるたまらへん感覚や!これが追跡の醍醐味や!〝フッフッ……おいこらアホ!天下のランエボ隊や!ちゃっちゃと止まれ!切符どころじゃ済まんで!〟」


サイレンは聞こえているはずだが、RX-8の運転手はパワーウィンドウを下げて中指を立てると、ロータリーエンジンの回転音で威嚇すると、そのまま街中へと下る分岐ルートへと移動していき、負けじとチェルシーもそれを追いかけた。


「おうおうおう、すげえなマジで数ミリってとこで食らいついて離さねえ。車間距離をミリのミリまで感覚で把握してやがる。こりゃ、シバサンのライバル誕生だな。」


すると、RX-8はドリフトをするためにサイドブレーキを上げたのか激しいスキール音を立てながら十字路を急旋回するが、巧みなブレーキングで難しい角度を難なくこなしていく。


だが、RX-8はかなりドリフト慣れしているのか追っ手を撒くためにジグザグとした軌道を取って、ランエボをバックミラーから消すために必死にテールを振り続けた。


「あかん!流石にこんだけドリフトされるとキッツいわ……なんてな!」


チェルシーのエボⅠは高いスピードを維持したままコーナリングへと入ると、シビアにステアリングを切りながらアスファルトの地面に車の足跡を刻み付ける。


あたりには焦げたゴムの臭いが蔓延し、そのドリフトの激しさを如実に表していた。


だが、その激しいドリフトは倉庫から出したばかりの骨董品にはあまりにも厳しすぎるものだった。


曲がらないと呼ばれていた時期の老朽化した四駆車両を無理矢理曲げて使い続った結果は予想する必要もない。


ランエボの四駆機能の中枢を司るAYCに亀裂が入り、まるで血を吹き出すかのようにフルードが漏れ出る。


「あ……あかん。やってしもた。どーしよ……おじいちゃんに無理させてしもた……骨折れたでこれ……ファルコンにしとけばよかった……」


チェルシーはフルードを垂らしながらもエボⅠを走らせ続けると、無線機で応援を呼ぶことに決めた。


「〝あ~ココ~?ちょっと今ヤバイねん、赤いRX-8追いかけてんねんけどエボⅠに無理させてしもてAYC壊れてもうてん。もう全然曲がらんわ!ウチの座標送るし、ちいと助けて~〟」


「〝マジで?ヤバすぎ~!今行くわ~〟」


チェルシーのエボⅠが距離を離され、RX-8が勝利を確信するが対向車線からサイレンの音を響かせる一台のBMW・R1200ポリス・モーターサイクルが現れる。


アニマル市警が誇るモーターオフィサー・ユニットの大型ツアラーはそのまま対向車線に舵を切ると、減速せずに突っ込み始める。


ココはあろうことか質量が違い過ぎるバイクと車でチキンレースを始めようとしているのだ。


クラッチを踏みギアを上げ、アクセルを捻り頭を下げ、全体をエアロフォルムにして真っすぐ突き進んでいく。


重さ約250kgの鉄塊が今まさにRX-8のフロントに突き刺さろうとしていたその時、RX-8は減速してステアリングを避ける方向に取ると、減速してしまったことでそのまま後方に迫っていたエボⅠのプッシュバンパーに激突して大回転し、歩道へと横転した。


ココはバイクを横滑りさせながらブレーキをかけてR1200を停止させると、降りて停止したエボⅠへと向かう。


「ちぇるぴ~大丈夫そ?」


「大丈夫!助かったわ!そんじゃ~切符きるで。」


ココはポータブルプリンターからトラフィックチケットを取ると、横転したRX-8の鍵がかかったドアをまるでビスケットを割るかの如く容易に片腕で千切り飛ばした。


「え、え!?鍵、鍵かけてたぞ!」


「あーしには関係ないが~?」


ココは容疑者の首根っこを使ってシートごとちぎりだすと、頭にチケットを押し付けた衝撃で容疑者は気絶した。


「いや~ココ、ほんま助かったわ~。」


「いいっていいって~!こういうのはマジ助け合いじゃん!ほらほら、インスタ用に写真とっちゃお~!」


体格の大きいココは小柄なチェルシー軽々とを片腕で持ち上げ肩車をすると、ギャルピースと指ハートをしながら横転したRX-8と頭にチケットを貼りつけられ気絶したスピード違反者を背に自撮りを取り、インスタのストーリーを更新した。


すると、2人の無線に活躍を見ていたタイラーとアンジーの無線が入った。


「〝LEU-1と2-L-43。お前たちの活躍を見てたぞ。少し話があるからそこで待機しててくれ。〟」


「〝え!?まさかクビやなんて言わへんよな!〟」


「〝違う、そうじゃない。折り入って話があるんだ。悪い話じゃないぞ。」


数分後、ゴルフに乗ってアンジーとタイラーは到着すると、もう一人の警官に目を向けた。


「コイツも不良警官リストに載ってるな。ハーレー・ココ・トラボルタ……アメリカ南部育ちのサモア系でアニマル市警のモーター・オフィサー。直属の上司を叩きのめし頬骨陥没骨折と頸椎骨折の重傷を負わせて謹慎処分か……なんというか随分とマッチョだな。ドウェイン・ジョンソンとアーノルド・シュワルツェネッガーを合体させたみたいな筋肉だ。」


「あーし、わるくない~!あいつがセクハラしたのが悪いんだが~?」


「まあ、それは関係ない。単刀直入に言う。お前ら二人はとんでもない不良警官だが同時に超優秀だ。私たちは今手が足りていない。お前たちのような優れた素質のある人間が必要だ。チェルシー・スターにハーレー・ココ・トラボルタ。単刀直入に言う。CLAWに入る気はないか?チェルシーのドラテクは現場に駆け付けるときに大いに役立つし、ココの怪力とバイクの運転能力は我々の作戦を進めるうえで優位に活かせる。」


CLAWという名前を出すと二人は目を輝かせた。


「く、CLAWって、あのエル・アルテサーノを排除したって噂になってる秘密部署?」


「聞くところによれば大量の高級車で遊び放題だって……」


「そうだ、もう噂がデカくなり過ぎて警官にはバレバレだからお前らには隠さん。どうする?入るか入らないか今ここで決めろ。」


二人は同じ考えになり、答えを濁す必要等なかった……






二人のはみだし者をリクルートし、疲れたアンジーはタイラーと別れゴルフを駆り帰路へついていたが、背後から闇夜に紛れて一台の車が現れると煽るように距離を縮めていく。


アンジーはバックミラーを見ると黒い車が激しいエンジン音を轟かせて近づいてくる。


蝙蝠の翼のようなリアスポイラー、怒りに満ちたような表情のヘッドライト、悪魔の絶叫のようなエンジン音……


──それは幻の車である日産・ジュークRだった。


「なんだ……?ジュ、ジュークR!?クソ、ドラッグレースでもしようってか?上等だやってやる……四駆のゴルフを舐めるなよ!」


アンジーはエンジンを激しく回し、クラッチを踏んでギアを上げジュークRに喰らいつこうとするが、VR38DETTエンジンのツインターボエンジンの加速力には全く食らいつけずに距離を離されていく。


「クソ、なんて速さだ……」


だが、ジュークRはまるでアンジーを弄ぶかのようにブレーキングをして距離を近づいたり縮めたりを繰り返すと、やがて並走してパワーウインドウを開いた。


そこにはアニマル市警が核爆発の事実を隠したことをリークした〝エイデン〟と呼ばれる謎の人物の姿があった。


「お前があの〝エイデン〟か!私を殺しに来たのか?」


「おい、この声を忘れたのか。寂しいもんだ。」


アンジーは叫びを聞き、エイデンは何やら不満そうな態度で被っていたマスクを外へと投げ捨てた。


「よぅ、ダチ公。」


「……お前は……!」


素顔を見たアンジーは予想外の人物が出てきたことに呆気に取られており、そんな様子をエイデンはほくそ笑んだ。


「久しぶりだな、元気だったか?最近お友達を始末したんだ。奴さん即死だったぜ。」


エイデンは懐から安物のプリペイド携帯を取り出してアンジーに向かって投げると、そこには中華街で違法銃器の密売を行っているベディ・ロアーナの遺体が映っていた。


胴体には大きな空洞ができていて向こう側の壁の色がハッキリわかるほどに綺麗に穴が空いていた。


「バカな……!ベティとはお前も知り合いだったじゃないか……!」


「ま、どうにもならないこともある。」


アンジーは呆気に取られていると、〝エイデン〟は懐からロシア製の大口径リボルバーであるRSH-12の銃弾をゴルフのタイヤに放つと、鈍い銃声と共に空気が抜ける音が聞こえた瞬間にゴルフはホイールがガリガリとアスファルトに削られ火花を散らしながらスピンし、ジュークRはまるで元居た場所に戻るかのように悪魔が笑っているような赤いテールランプを煌めかせ闇夜へと消え去った。


エアバッグに顔を埋めたアンジーは月を見上げながら、「何故だ……何故アイツが……」と言葉を漏らした。



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