華黄四武将登場〜全員編〜
また三人称が混じります。
読みにくくてすみません。
「待ってください、レイリン。貴方一人では勝ち目がありません」
「皆一斉戦闘。勝機其」
「イーエン、フェイ!動いては駄目ネ!」
「山崩れの言うとおり。無理するでない二人とも」
先ほど勇者と戦ったイーエンとフェイは怪我のせいでゆっくりとした動作で同じ華黄四武将のレイリンと老師と呼ばれた男に近づいた。
その目には強い意志を感じられた。
「老師、ですが私はレイリンを今ここで失えば確実に勝利が消えてしまうと考えます」
「どういうことだ?」
「勇者、魔術反射能力有」
「理解している。だから対策を…」
「レイリンは我々の中で唯一のスキル保持者です。山をも崩す強力のスキル…それなら勇者は反射できず、自分で受け止めるしかない。そこにしか勝機はないと私は思います」
「ナルホドね!老師はバリバリの雷属性の仙人だし、フェイも肉弾戦は苦手ネ!イーエンは剣と魔術を織り交ぜて使うネ」
「全員でレイリンをサポートし、一瞬の隙を作る。それほどのことをしないと勇者は倒せません」
「老師、回答求」
「・・・・・・」
老師は瞳を閉じて熟考する。
イーエンの言った策は考えついていた。
しかし、イーエンとフェイは負傷をしている。
万全だとしても勝てるのかどうか…疑っている。
レイリンは見目が可愛らしい少女だ。
一人で行かせたほうが勇者も油断するのではないだろうか?
しかし、レイリンは素直な子だ。
油断させれるような嘘はつけないだろう。
それならば…
「お前達の気概を買うか」
「老師!感謝します」
「我、全力戦闘。麗鈴守護」
「全員で戦うなんていつ以来ネ!わくわくするネ!」
「それは無理よ。無理無理無理。貴方達では勇者に勝てないわ」
「「「「!!?」」」」
華黄四武将の全員に気づかれることなく、一人の人物が四人のすぐそばに居た。
20代後半の、赤い目が印象的な女だ。
老師は種族を特定しようと彼女を観察するが、何者かわからなかった。
人間?エルフ?それともブラックドラゴン?
何者でもあって、何者でもない気がした。
「何者ですか?」
イーエンがたずねる。
手には大剣が握られている。
他の三人も構えて戦闘態勢になっている。
「シャラはシャラよ」
シャラと名乗る女は余裕の表情だ。
「勘違いしないで。シャラは貴方達と戦うつもりはないの。だって、弱すぎるんだもの」
「なんですって?それは聞き捨てなりませんね」
「弱いと意味ないの。だからシャラは強い奴しか戦わない」
「私達強いネ!弱くなんかないネ!」
「口閉命令。不快!」
「おい、皆!落ち着け!冷静になれ!」
「でも老師!ここまで馬鹿にされて怒らないほうが無理ネ!」
「弱い雑魚が何を言っても、シャラは動じないわ」
「うぉぉぉぉぉおおおお!奥義・朱雀火炎武舞!!」
「奥義・蒼龍水神破壊波!」
「奥義・玄武岩裂剛拳!喰らうがいいネ!」
「致し方ない。奥義・白虎雷撃魔陣!」
四方向から来る攻撃にシャラはため息をついた。
「ブラックマウンテンの主よりも強くないと、意味ないのよね」
残りの四武将さんに会うこともなく、私達は頂上に着いた。
そこには信じられない光景があった。
「そんな…」
沢山の黒いドラゴンたちが倒れていた。
幸いにも息はあるようだが、重傷の者達もちらほら居る。
ディアナ姫は水の魔術でドラゴンたちを治療しながら呟いた。
「ひどいですわ…誰がこんなことを…」
「決まっている。魔界にいる者たちのどいつかだ」
迷いなく答えた須賀君に私はムカッとした。
「根拠もないのに決め付けないで」
「こんなことをするのは魔界人しかいない」
「だから決め付けないでってば!-っていうか、アモンさん以外の魔界人全員契約したんでしょ!?」
「確認できる魔界人は契約をした。しかし、漏れがあったのかもしれないな…」
「そうですね、勇者・ヒロユキ。帰ってもう一度調べなおしましょう」
「~~~~もーーーっ!」
なんでそんな偏った考え方しかできないかなぁ!?
ヤケになった私は近くに居たブラックドラゴンさんに話しかけた。
「貴方達を傷つけた犯人はどんな人ですか?種族は?性別は?目的は?」
「なんだお主は…驚くほどに、なんの力も感じない」
「はい。世界最弱の魔王、高塚千里といいます」
「ふむ…、魔法使いが面白い人間が来ると言っていたがお主のことか」
「え!?カースさんですか!?」
「そうだ。世界最弱の魔王よ。…あの男がしそうな人選だな。悪趣味にもほどがある」
激しく同意します。
「我はこのブラックマウンテンの主。オルティウス・マシカレン・ミドルフェンじゃ」
「ぶふっ!?」
えええ!?
この人が仲間にしようと当初企んでいたブラックマウンテンの主さんか!
確かに他のドラゴンと比べて一際でかくて強そうだけど、気づかなかった。
「どうした魔王?」
「いえ…思わずふいてしまっただけです。問題ありません」
「そうか。ならば話を続ける。残念ながら我らは襲撃者の種族も性別も目的もわからなかった」
「へ?」
「どういうことだ、ブラックマウンテンの主よ」
須賀君も主さんの話を聞く為に私の隣に立つ。
「シャラと名乗った襲撃者は最初人間の少年の姿をしていた。次に巨大な狼の姿になった。ドワーフの老婆になった。ドラゴンになった。最後はまた少年に戻った」
「な、なにそれ…」
「解らない」
「特定の姿を持たないのか?この世界にはそんな種族がいるのか?ディアナ姫」
「いえ、私は聞いたことがありませんわ」
カトレットさんも首を横に振った。
う〜ん、何者かしら?
魔族じゃないのかも判断つかないのか。
魔族だったら…仲間にするべきかしら?
こっちは仲間少ないし…現在私囚われの身だし。
いや、やっぱりどんな人なのか見極めてからの方がいいよね。
私は魔王だけど、魔族だからといって何でもかんでも庇護するつもりはない。
魔族と人間を差別するのをやめてほしいだけなのだ。
「カトレット、城の医師達を此方に向わせろ。ブラックドラゴン達を治療する」
「しかし、今からでは時間がかかる。飛行竜機を使いますか?」
「そうするべきだろう。上空の結界を解除する」
ん?もしかして今逃げるチャンスじゃないかしら?
須賀君とカトレットさんは話合ってるし、ディアナ姫は治療中だ。
そしてドラゴンさん達は瀕死状態。
仲間の勧誘は出来ないっぽいし、私は山を降りてアモンさん達と合流でもするかな〜…
「……………」
私がゆっくりと後退しようとした時だった。
どごぉぉん!!
「ぐはぁぁぁぁぁ!」
「⁉」
ドサッと男の人が飛ばされてきて地面に倒れ伏す。
うつ伏せのままピクリとも動かない。
…ていうか、この男の人って
「華黄四武将、賢剛のイーエン!」
カトレットさん誰なのかわかりやすい台詞ありがとうございます。
そう。先ほど須賀君が戦ったイーエンさんが飛ばされてきたのだ。
冒険モノ漫画の戦闘やられシーンのように吹き飛ばされてきたのだ。
「イーエン!!」
涙目で駆け寄るのは見たことのない可愛らしい女の子だ。
服の雰囲気が似ているので残りの四武将の内の一人だろうか。
「イーエン!!起きるネ!寝てる場合じゃないヨ!」
女の子は仲間を揺するが、イーエンさんは目を開かない。
動揺する彼女にさらなる混乱が襲う。
ドサッ
乱暴に放り投げられたのだろう。
またもや男の人が此方に飛ばされてきた。
「あ、あ、フェイ…!!」
またもや四武将の一人だった。
あの人、何言ってるかわからなかったけどフェイって言う名前なのか。
フェイさんも意識がないようで、立ち上がる気配がない。
「お前何者ネ!!さっきから何度姿が変わるなんて、おかしいヨ!」
「「「「!!!??」」」」
え?
姿が変わるですって…?
それって
カトレットさんが構える。
ディアナ姫は治療を中断し、辺りを伺う。
須賀君は微動だにしなかったが、警戒しているようで空気がピリピリとした。
「だ、か、ら、何度も言ってるかでしょ?シャラはシャラだって」
赤い目をした20代くらいの青年が現れた。
右手には、気絶した男の人の首を掴み引きずっていた。
老師と女の子が呟いてたのであの人も四武将なのだろう。
「あれ、そこに居るのはもしかして勇者?ワーオ!シャラってばラッキー」
須賀君を認めたシャラと名乗る男は興奮した様子で、その際に老師を掴んでいた手を話した。
ぐしゃりと嫌な音がした。
「この四人じゃ、駄目だったんだよね〜弱過ぎてさ。この世界最強と言われている勇者なら、十分だよね!」
「何わけのわからないこと言ってるんだ」
須賀君とシャラは向かいあい、にらみ合う。
そこで私は思った。
逃げるタイミング逃した……と。