本になる国
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
メルとシドは国から出ると、顔を見合わせる。
「なんかすごい感じだったね、メル。」
「うん。なんとも言えない感覚の上位互換と言っても過言じゃない。」
「確かに。そう言えば、さっき受け取った本どう?」
そう言われてメルはシドに持っていた本を見せる。
「これ?あの国の中の話が書かれてるらしいね。」
「早速読んでみる?」
「じゃああの丘の上で読もう。」
そう言って、メルとシドはワクワクしながら丘に登る。
ちょうどいい岩でもあればと思ったけど見つからなかったので、メルは草地に仰向けになる。
「えーっと?タイトルは……」
───────
【ただの旅人ですが、何ですか?
──怪しい商店ですごいアイテムを買おうとしたけど旅の相棒に止められてしまった件──】
メルは国に入って早々、おかしな感覚に襲われる。
隣にいるシドを見て、言う。
「文字になるってこういうこと?なんていうか……シドそこにいるよね?」
シドは当たり前だというように答える。
「うん。いるよ。見えてるでしょ?」
「でもなんか目の前にいない気がする。」
「確かに。変な感じだね。」
「……とりあえず探索でもしようか。」
メルはシドを押して国を進んでいく。
国は賑わっていると言うほどではないが、人々の喧騒が飛び交っている。
八百屋が人を呼び込み、宿屋は看板を出し、人々は世間話をしている。
ただのその中に一つ、看板も呼び込みもしていない、怪しい雰囲気を醸し出している。
「怪しいね。あの店。」
メルはなんとなくそんな気がしている。
「言われてないのに言われた気がするよ。」
シドもなんとなく怪しいと思う。
「メル、入ってみる?」
と、シドが提案した時にはもう、メルはその店に真っ直ぐ向かっていた。
カランカランと、扉が音を立てる。
店の中は薄暗く、ごちゃごちゃと幾つかの物が売られている。
「いらっしゃい。」
店主のお婆さんが声をかける。
それにメルは返事を返す。
「あなたが店主さんですね。」
「おや、よくわかったね。……いや、当たり前なのかもねぇ。」
「当たり前?」
シドは店を見渡しながら疑問をぶつける。
「この国は文字で表されることは知っているわよね?だから小説みたいになるんじゃよ。」
その言葉にメルはピンとくる。
「今ピンと来たね。」
店主はメルが話し出すよりも先に言う。
それにメルは驚くが、すぐにどうして店主がわかったのかを理解する。
「少し見させてもらいますね。」
「ええ。いくらでもどうぞ。」
と、メルは店内を見て回る。
その間シドは店主と話をしていた。
数分後、メルは怪しい壺を持ってきた。
「これくだ──」
「駄目だよメル。お金ないんだから。」
と、すぐに拒否されたが。
そのあとは特に目立ったこともなく、2日目の朝に国を出た。
───────
メルはパタンと本を閉じる。
「ねえ、シド。これに書かれてること以外って何起きたっけ?」
「忘れた。」
◆
少し遠い空の下。
ハルカは自転車とバイクの中間みたいな乗り物(イスターという。)に乗れるように日々奮闘していた。
そのある日、ハルカが住んでいる街に旅の本屋がやってきた。
物珍しさから見ていると、一つの本が目に入る。
少し読んだとかと思えば、店主に尋ねる。
「これって誰が作者なんですか?」
「さあ?旅の人が渡してくれたからわからないね。あー…確かどこかの国の出来事が記録されてるって言ってたね。」
ハルカは即買いした。
「えへへへへ……。」と、不適な笑みを浮かべながら、ただの旅人ですが、何ですか?と表紙に書かれた本を持ち帰っていた。
ハルカさんはとても嬉しそうに隅々まで読んだそうです




