夜空の話
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
満天の星々が広がる満点のような夜空が眺められる、天井に穴が空いた洞窟。
その洞窟でメルは、光苔さえも生えない真っ暗な岩肌の上で、ポカンと口を開いて上を向いている。
空を眺めている……のかは見た目からは見当もつかないシドは、同じように固まっている。
その視線の先には、地球があった。
蒼く、美しく、文明の光と自然の緑が入り混じった地球が、空を埋め尽くすように、そこにあった。
信じられない光景のせいで開かなかった口を、シドが先に開く。
「いつのまに月にでも来たの?メル。」
「それにしては近くない?あの地球。」
「確かに。じゃあ今どこにいるの?」
「地球……?」
「じゃああれは何?」
目を何度も擦って、疑って、それでもなおそこには地球が浮かんでいる。
「偽物とか?」
「じゃあ石でも投げてみる?」
「わかった。」
メルはそこら辺に石が落ちていないかを手探りで探し、ようやく見つけた真っ赤な軽い鉱石を、全力で空に向かって投げる。
ふわりと浮いた石は地球に当たりもせず、虚しくこっち側の地球に当たった。
顔で石の行方を追っていたメルは地面を眺めることになって、結果をシドに報告する。
「少なくともはるか上空にあることは確定した。」
「じゃああれは何だろう。」
「シドでも表面は見えない?」
「うん。」
「じゃああの望遠鏡の出番だ。」
「この暗闇でリュックから一発で取り出せる自信は?」
「なし。」
メルが言った通り、リュックがすっからかんになるまで望遠鏡は出てこなかった。
星の数ほどあるガラクタが散らばった床の上で、メルは望遠鏡を構える。
ロケットランチャーのような見た目からは考えられないほど高性能らしい。
「見えた?」
「あー……待って……はい、見えたけど────。」
「ど?」
「実際に見た方がいいんじゃない?」
「わかった。」
メルはシドの目の辺りに望遠鏡を持ってこようとする。が、どこが目なのか分からず適当にシドの目の前に置く。
シドはその望遠鏡を覗く。
その先には、望遠鏡を覗くシドがいた。
同じ姿の、同じポーズをしたシドが、向こうの地球で望遠鏡を覗いている。
メルは腰の後ろに手を回して、微笑む。
その手を解いて、大きく手を振る。無言のまま。
「そういえばメル、向こうのメルはリュック整理してたけど。」
向こうのメルは、どんな旅路を送ってきたのでしょう。




