笛の音が響く国
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
ある広大な平原に、1人の旅人が現れた。
旅人の名を、ランと言った。
赤いマントが特徴的だった。
ランはその平原に何かを感じた。
その何かが何なのかはわからない。しかし、そのせいか旅人はそこで旅人をやめた。
「ここを私の家にしよう!そうだな……資源が必要だ。」
ランは辺りの木々を斧で倒し、穴を掘り石を集め、それらを組み立てて行った。
「痛っ!」
途中、手を怪我してしまった。
「う〜ん。辺りに病院でもあればいいが……。」
そんなことを言っても、ここには何もない。
「いずれ出会うだろう。」
そう思うながら組み立てにまた戻った。
家が完成すると、土や泥に塗れながらも、自慢げな顔をしてガッツポーズをした。
「いい出来栄えだ。これから、よろしくね。」
ランは手を家につけた。
家もよろしくと言っている気がした。
気持ちが高まったランはカバンから笛を取り出す。
「ピュゥ──ゥルルラ──♪」と笛が歌う。
平原に歌が響く。
風が吹き、草木が揺れる。
幾日か経ったある日、ランはまた笛を響かせる。
「ピュゥ──ゥルルラ──♪」
その時、その音に合わせるように森の低木が揺れた。
風の仕業ではない。
「誰?」
ランは言うが、返事がない。
「そうだ!」
ランはまた笛を響かせる。
「ピヤャ─レルルゥ──♪」
がさっと低木がまた動く。
「ヨ─ルレヒィ──♪」
今度は大きく動いた。
また笛に口をつけようとすると、その低木から1人の男が出てくる。
男は広い平原を見渡し、ランを見つけ、近づいてくる。
ランは笑顔で大きく手を振り、こっちだよと教える。
男は目の前にくる。
「君かい?笛の音を森と、平原と、そして僕の心に響かせていたのは。」
「そう、私!」
「いい音色だ。この家は君の家?いい場所に立てたね!」
「私が作ったの。」
「近くに住んでもいいかい?」
「もちろん!」
ランはとびっきりの笑顔で返した。
男は、自分をルドと名乗った。
ルドは木々を斧で切り倒し、穴を掘り石を集め、それらを組み立てて行った。
ランもそれを手伝った。
「ふぅ。ランさん、手伝ってくれてありがとう。」
「フフっ。ランでいいわよ。」
「じゃっ…じゃあラン、ありがとう。」
「どういたしまして!」
平原には二つの家が建った。
次の日、ランは今日も笛を響かせる。
「ヒュ─レルラ──♪」
するとルドが横に出てきて、笛に合わせて歌う。
「ドゥルレ──♪」
ランは驚き、目を大きくする。
「嫌だった?」
「ううん。むしろ最高!」
ルドは途端に笑顔になり、それに釣られてランも笑顔になる。
その日は、一日中笛と歌声が平原に響いた。
その日から、次々と人々がやってきた。
森から、平平原から、空から。
笛の音と歌声に惹かれて、5人、10人、20人とやってきた。
そしてみんなが家を建てて、いずれ村となった。
そして……
○
赤いマントを羽織った少女が一つの国を走っている。
その後ろを、執事服を着た人が走っている。
「王女様〜!お待ちくださ〜い!」
「や〜だね!待ってと言われて待つやつがどこにいるもんか!」
少女は舌を出し、執事を煽る。
市場に出ると、人々が少女に声をかける。
「お〜!ルンちゃん!もぎたてのリンゴ持ってってくれ!」
八百屋はリンゴを投げ、ルンと呼ばれた少女は受け取る。
「うちの魚見てってくれ〜!いいのが入ってるよ〜!」
「おぉぅ!」
少女は足を止め、ショーケースを眺めながら目を輝かせる。
「執事!このマグロ買ってくれ!」
「ハイハイ。」
執事は財布を取り出す。
「今のうちだ!」
少女はまた逃げ出す。
「あぁ〜!お待ちください!」
その国王室。
「もう。ダメじゃない。マントもこんなに汚しちゃって!」
ランはルンを叱る。
「はぁい。」
ルンはしょんぼりした顔を浮かべ、ランはため息をつく。
「全く。誰に似たのかしら。」
すると、後ろからルドがランの肩に手をかける。
「僕とランだろう。昔は同じように草原を走り回ったもんだ。」
「そうね。あなたの歌声に合わせて笛も吹いたわ。」
「お母さん笛吹けるの!?」
ルンは驚く。
「そうよ〜上手だったんだから!」
「え〜っ!意外だなぁ!」
「それどう言う意味?」
ルドは吹き出し笑う。
ルンも笑い、ランは恥ずかしそうにしたが、釣られて笑った。
ランはその日、懐かしさからか、窓の外に向かって笛を吹く。
「ピュゥ──ゥルルラ──♪」
下の方の国民は、その音色に気が付き、ランに向かって手を振る。
ランは手を振りかえす。
「お母さんっ!」
「わ!」
後ろからルンに話しかけられる。
「もう一回やって!」
「いいよ。」
ランはまた笛を鳴らす。
「ピュゥ──ゥルルラ──♪」
「私もできたらなぁ。」
「吹いてみる?」
ランが笛を貸すと、ルンは目を輝かせながら笛を口に当てる。
「ブゥゥゥゥ。」
汚い音が出た。
「うまくできな〜い!」
「コツが必要なの。」
ランは優しく笛の鳴らし方を教える。
○
幾年か過ぎた頃の、王室。
大きくなったルンは赤いマントを羽織り、笛を歌わせる。
「ピュゥ──ゥルルラ──♪」
その音は、まだ続く。
「ピュゥ──ゥルルラ──ピヤャ─レルルゥ──ヨ─ルレヒィ──ヒュ─レルラ──♪」
演奏が終わると、数秒の静寂が訪れる。
ルンは緊張しながら、耳を大きくする。
「──合格!」
ランが言うと、国中の誰もが盛大な拍手をする。
ルンは肩をすくめ、笑顔になる。
「最高じゃないか!」
ルドが褒める。
「でしょでしょ!練習したのよ!」
「じゃあ、もう心配は無いわね。」
少し老けたようにも見えるランは、ルンに近づき、冠を外す。
ルンは頭を下げる。
冠は、ランの手からルンの頭に渡る。
王室どころか、国中が静まり返る。
ルンが振り返ると、ランは言う。
「たった今から、第一王女ルンは、正式に我が国の女王だ!」
また国全体から拍手が巻き起こる。
ルンは振り向き、全国放送のカメラに笑顔を向ける。
その日から一週間、国はお祭り騒ぎだった。
ただ。
○
ルンが王女になってから、五ヶ月が経った頃だろうか。
ルンは母と同じように、窓の外に向かって笛を歌わせる。
「ピュゥ──ゥルルラ──♪」
笛の音が国に響いた時、空に黒い影が出てきた。
それを不思議そうに眺めながら、また笛を吹く。
「ピュゥ──」
突然のことだった。
影が落ちてきた。
雨でも、爆弾でも無い。
大きな足だった。
足は国よりも大きく。
瞬きをする間もなく、降ってきた。
国は元の平原のような形に戻り、何かがあったかもわからない。
笛の音は、もう響かない。
◆
「って言うのはどう?メル。」
シドが言う。
「う〜ん。いきなり過ぎたけど、まあいいんじゃ無い?」
「でしょ?もしかしたらメルも踏んじゃってるかもね。」
「だったら怖いけど、もしその物語を聞かなかったら怖くなかっただろうね。」
「ただ小さい国があるって伝えられただけだとってこと?」
「そう。人は物語があるから悲しむの。」
メルはとある森を抜ける途中、暇だったからシドに物語を考えてもらっていた。
そろそろ森を抜ける。
と、思い。ペダルを踏み込む。
「ピュゥ──ゥルルラ──♪」
と、笛の音が聞こえてきたが、すぐに途切れた。
書いている途中からエンディングを十回くらい変えたいと思ってしまった話です。




