お菓子の家の話
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
その森からは、凄く嫌な臭いがしていた。
偶然通りかかったメルも、顔を顰め鼻をつまむほどだ。
「酷い腐敗臭!メル、さっさとこんな森抜けよう。」
「それじゃあつまらないじゃん。原因を確かめよう。」
「メルはいいね。鼻をつまめる。」
「じゃあなんか紙でも詰めればいいじゃん。」
メルはそう提案するが、少し考えて今まで聞いたことのない質問をする。
「……自転車の鼻ってどこ?」
「ここ。」
シドは適当に返事した。
森の深くに行けば行くほど、腐敗臭はひどくなる。
きのこのせいかと、メルはシドから降りてウロウロするが、特に目立ったものは見当たらない。
「まだ〜?」
シドはさっさと森を出たいようだ。
「う〜ん気のせいってわけではないし、この木々も普通の木だな。」
「そうやって変なこと起きる場所は沢山あったんだからここもそうだよきっと。」
「そうなのかなぁ。」
「そうだよ。だから早く行こう!」
シドはさらに森から出ることを催促する。
「りょーかい。」
メルは渋々、森から抜けることにした。
しかし森はかなり広いようで、思ったように抜け出すことができない。
コンパスも途中で落としたせいで、壊れてしまっている。
「臭いがさらにひどくなってるよ!魔女でもいるんじゃない?この森。」
「なら会ってみたい。」
「じゃあやっぱりいない。」
「残念。」
と、気の抜けた話をしていると、向こう側に開けた空間があるのが見えた。
「なんとなくだけど、あそこからだよ。この臭いは。」
「なら確かめよう。……シド?」
シドは猛烈に嫌がっており、車輪を進ませない。
「じゃあここで待ってて。」
「りょーかい。魔女に食われないでね。」
と、メル1人でそこに向かうことになった。
茂みをかき分けて、ゆっくりと進む。
もし何か変なものがあったとしてもすぐ対応できるように、腰に手を当てている。
おそろおそる覗いてみると、そこには緑色と薄橙色の塊と、ハエの大群があった。
「うひゃあ。これが原因か。」
茂みから出て、ぐるりと回る。
すると、一つのプレートが見つかる。
メルはそれを手袋をしながら持ち上げ、読む。
「Sweets house」と書かれていた。
「お菓子の家?」
疑問に思いながら、鼻を近づける。
鼻が曲がりそうな腐敗臭の裏に、ほのかな砂糖の香りがする。
「何があった〜?」
シドも好奇心はあるようで、大声でメルに聞く。
「お菓子の家があった!ただ完全に腐ってる!」
メルは大声でそう返しながら、シドの元に戻って行った。
合流すると、シドが聞く。
「なんでお菓子の家?」
「さあ?ヘンゼルとグレーテルがいたんじゃない?」
「ならメルは脇役だね。」
「『その後、腐ったお菓子の家を見て、旅人は首を傾げました』ってこと?」
「そう。めでたしめでたし。」
全員が、脇役で主人公だと思っています。




