人を食べる国
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
人肉は食べると大体死ぬから真似しないでね!
少しどんよりしていて、分厚い雲が今にも雨を降らしそうな空の下。
牧場に放牧された食用人間が、もさりもさりと草を貪っている。
人間といえど家畜であるようで、体の形以外は全て牛や山羊と同じだった。
「へぇ〜!珍しいね、メル。」
「そうだね。あっ見てこっちに寄ってきた。」
木の柵の向こうには撫でて欲しそうな小さな仔人が擦り寄ってきていた。
メルは綺麗にブラッシングされた真っ黒な毛を撫でる。
仔人は目を瞑り、嬉しそうに微笑みを浮かべる。
その間、シドは気になったことを呟く。
「出荷っていつなんだろう。」
「さあ?食べたことないし。」
「じゃあ食べてみる?」
「遠慮しておく。」
撫で終わられた仔人は広い牧場の向こう側へと走っていった。
そこには親だと思われる人間がいた。
「あれをみる限りは出荷の年齢、どっちかわからないね。シドはどう思う?」
「雌の親は搾乳、雄は肉になるとか?」
「ふうん。確かにそれはありそう。乳製品の名産地らしいしね。」
「皮のサドルも、他の国にはない乗り心地が有名だよ。」
「人の皮ってこと?」
「多分ね。」
その時、ギュルリとメルのお腹が鳴いた。
「レストラン行く?人肉レストランしかないけど。」
「野菜ぐらいはあると思う。」
メルの勘は見事に外れ、レストランは人肉で埋め尽くされていた。
そのせいでメルは八百屋で野菜を買うことになった上に、宿にキッチンがなかったので生で齧る羽目になった。
「どう?生野菜は美味しい?」
「そこそこね。キャベツとかは甘くて美味しいよ。」
「気分は?」
「いい気付きの機会になったと思えばギリギリ。」
「マオンネーズとかはないの?」
「あるけどその中にある。」
メルは爆弾にでもなりそうなリュックを指差す。
「中身飛び出てるんじゃないの?」
「高技術の容器で密封されてるやつだから行ける。」
「本当?」
「多分。」
メルはしゃくりしゃくりと野菜を齧っていき、いずれ満腹になっていった。
明日の分を楽しみに置いておいて、あとは国をぶらりと歩き回ることにした。
牧場だけではなく、人肉加工工場だったり、精肉店だったりが数多く並んでいた。
そこでは人が人を捌き、人が人を買う社会が構築されていた。
「そういえば、お腹壊さないのかな。」
と、シドはメルに聞く。
するとメルは少し考えてから、
「そういう体をしているんじゃない?食べる側も、食べられる側も。」
と、適当な結論を出した。
相手が人であった瞬間、それは問題となるのです。




