干からびた話
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
これはメルが商人からおかしな壺を買いそうになった所をシドが止めようとしている時の話。
「ええ、それはもう綺麗でしたよ!それで、このツボはどうするんですか?」
ゴマスリの手を巧妙にゴニョゴニョこねくり回している商人はウユユ塩湖という場所を語る。
「へぇ〜っ。空の景色が地面にですか。あ、買います。」
「塩湖っていうぐらいだから湖なの?あと買わないよ?」
「はい、湖というには少し浅いですが。それで、どっちなんです?」
「買いません。」
シドの方が少し早く言い切ったせいで、商人とメルはガッカリして諦めた。
それからというもの、メルはウユユ塩湖を目指して何十人にも話を聞いて回った。
「ここから東にあったよ。」と聞けば東に走り、「行き過ぎたんじゃない?」と言われればぐずりながら少し戻り、「南にあるよ。」と騙されたり、「ここよりも北にある。」と言われたら疑心暗鬼になって南に行ったり。やっぱり北だったので余分に走る事になったり。
幾つかの国と日を経由した所為で、噂を聞いた日から数ヶ月も経っていた。
それと同時に、期待も膨れ上がっていった。
◯
噂を聞いてから二ヶ月と二日が経った頃。
「メル、ウユユ塩湖って、湖だよね?」
「うん。」
「それで、空の景色が水平線に映し出されてまるで宙に浮いているように感じられるんだよね。」
「うん……。」
「だからビデオのオープニングによく使われるんだよね。」
「うん?それは知らない。」
「まあともかく、ここがウユユ塩湖だよね?」
「看板に書いてあったし、みんなここって言ってたよ。」
「それで、ここの風景は?」
「……。」
水の一滴すら見つからないほどひび割れている地面は、光を拒むかのように真っ白に染まり、雲一つない青空には強く光る太陽がギラリギラリと浮かんでいる。
「聞いていたのと違うね。」
「ものすごく違うね。メル、本当にあってるの?」
「ほら、これ。」
メルはポスんと六角形の地面に刺さっている看板を叩く。
そこにはしっかりと太文字で『ウユユ塩湖』と書かれている。
「今は乾季とか?」
「なるほど。」
「どうする?数ヶ月の努力が干からびたよ。こんな風に。」
「とりあえず日光浴でもして行こうか。」
そこから数ヶ月、日焼けした旅人が各地で目撃されたという。
からっからです。




