↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/31

幽霊の話

注意!


自転車が喋るけど気にしないで!


チロリンチロリンと夏虫が鳴く、少し肌寒い夜の平原。

焚き火の煙が空に吸い込まれているその下では、旅人と自転車が地面に座り込んで休んでいる。

旅人は、月だけが浮かぶ夜空を眺め、何かを考える。

自転車はその様子を見て、周りをぐるぐると回ってやろうかと考える。

何分の時間が経ったのだろうか。急に旅人は自転車に尋ねる。

「ねえ、シド。私が死んだらどうする?」

シドと呼ばれた自転車は驚きもせず、さらりと答える。

「新しい旅人を見つけてついて行く。逆にメルはどうするの?」

メルと言われた旅人はそうくると思っていたのか、またもさらりと答える。

「新しい自転車を買って、旅を続ける。というか自転車って死ぬの?」

「さあ?でも少なくともメルは死んじゃうでしょ。」

「この前不老不死の薬入りの飲み物が試食できる国あったのを見てもそう言える?」

「言えないや。」

ギロリギロリと夏虫がまた鳴いた。

羽虫がそよそよと舞い、二人の眠りを妨げる。

しかしその企みさえも夜の眠気には勝てないようで、旅人と自転車は緑色のテントの中で眠りについた。


 ◯


次の日の早朝、大型動物がうろつく足音で目覚めたメルは、じっとしてテントの頂点を眺める。

熊だろうか。キョダイオオヘラクレスカブトの肥満種だろうか。

無駄な殺しは避ける傾向にあるメルは、いざという時の為に銃火器を握りしめながらも何もせず、もはやまた眠りにつこうとしている。

シドはまだ起きないかとメルが考えたその時、外から誰かの悲鳴が聞こえた。

「誰か襲われ……ぐふんっゲホッゲホ。」

今日喋るのが初めてだということを忘れて喋り始めてしまったので、強く咳き込んでしまった。

そのおかげというべきだろうか。シドがその音でようやく目覚めた。


テントの外に出てみると、やはり、誰かの死体が横たわっていた。

死体は損傷が激しく、見るも無惨という言葉を体現していた。

かろうじて女性のような見た目をしているのがわかる程度だ。

「うわぁっ朝から嫌なもの見せてくるなぁ……。何に殺されたんだろうね、メル。」

「熊とかじゃない?ここに切り傷があるし。」

「どうする?これでドラゴンとかだったら。」

「逃げる。」

「同じく。」

と、普段通りの会話をしていると、ぼんやりと死体の上に何かが浮かんできた。

輪郭がはっきりしないうちはただの霧のようにも見えたそれは、人の形を作り上げていく。

死体を復元したような見た目をしたところを見ると、死体の幽霊か何かのように見える。

仮に幽霊だとして、幽霊は死体を指差して笑っている。

メルは少し遠慮しながらその幽霊に声をかける。

「あの〜……すいません、何故笑っているんですか?」

「ハァッハハッハ!え〜っ!だって、この死体よく見て見なよ!あたしそっくり!つまりあたしの真似をしてたってことよっ!真似をしてまで……ハッ〜っ!死んじゃったなんてざまみろって思って……クフッフッフ!」

シドは小声でメルに思ったままのことを言う。

「どこをどう見てもこの死体の幽霊だよね?」

「うん……自分の死体を見て笑うなんて初めて見たよ。」

「幽霊はだいたい落ち込むものだと思ってた。それで、この幽霊はどうする?」

「とりあえずそのままにして、世界一周してここに戻ってきた時にまだ笑ってたら本当のことを話してあげよう。」

「りょーかい。じゃあテント片付けよう。」

メルはテントをしまっている間はシドは幽霊の笑い声を聞きながらそこら辺をぐるぐるしていた。

旅を再開できるようになっても幽霊はまだ高笑いを続けていた。

「あそこまで死の概念をあやふやにする幽霊が出るなんてね。」

とメルはポツリとつぶやいた。

その声は風に攫われて、どこかに消え去ってしまった。

もし私が死んだら枕元に出て化けて念仏を唱えてあげます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。