ファンタジーな国 前編
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
葉が空に届くほど大きな木を中心に、ぐるりと囲まれて作られたその街は、人々の喧騒で賑わっている。
バイオリンの明るい音色が活気を大きく広げている。
踊り出しても不思議ではないほど賑わっているその国は、まさにワクワクを擬国化している。
そこに1人旅人が、自転車と話しながら歩いている。
「メル、ここが世界樹の国だよ。」
「わかってる。あんな大きな木があって世界樹じゃなかったら何になるの?」
「地球樹とか。」
「確かにありえる。」
2人はそんな話をしながらレンガの家が並ぶ道を歩く。
「賑わいが凄いね〜!」
「なんたって魔法と剣が栄えた国だよ。沢山の人がここに引っ越してくるらしい。」
「やっぱりそういうのには憧れがあるのかな。」
「かっこいいからね。」
レンガの道が終わったかと思えば、石畳の広場に出る。
世界樹の彫刻が彫られた噴水が中央にあり、元気よく水を噴き出している。
メルは立ち止まり、空を仰ぐ。
すると目を見開いて
「シド、見てあそこ。」
「え?どこ?」
「空だよ空。空飛ぶ人たちが火の玉を飛ばしあってる。」
清々しい青空を覗くと、この国の子供達が空中で遊んでいた。
火の玉を何もないところから取り出し、それを飛ばしている。
「まさに魔法国家って感じだなぁ!」
メルは感心する。
「感心するのもいいけど、ちゃんと前を見ないと転んじゃうよ。」
「大丈夫。魔法が助けてくれる。」
「メルっていつから魔法使いになったの?」
「今朝。」
「今朝?」
「ほら、あの変身アイテム。」
「ああ!今は魔法少女なのね。」
「うん。郷に入っては郷に従えでしょ。」
「あれ?服は?」
魔法少女に変身しているのにも関わらず、メルはいつものオーバーオール姿だ。
「着替えた。」
「できるんだ。」
「できたんだよ。なぜかね。」
そんなくだらない話をしながら、軽い足取りで冒険者ギルドと言われる場所へ向かう。
勿論、ファンタジーな体験をするためだ。
◯
『冒険者三日体験申し込みはあちらの窓口をお使いください。』
ギルドの建物に入ると、宙に浮く看板が教えてくれる。
「へぇ〜こんなところにも魔法。」
「よっぽど発展してるんだろうね。」
建物の中は酒場となっている様で、屈強な戦士や大きな杖を持った老人、尖った耳をしたエルフや眼帯をした少女まで。様々な冒険者で賑わっている。
冒険者体験は意外と人気な様で、旅人や家族連れの旅行者が列に並んでいる。
最後尾のちょっと情けない様な見た目をした青年の後ろに、メルとシドが並ぶ。
「自転車も冒険者になれるの?」
「あの看板に書いてあった。」
シドが指す先には、『二輪車でも体験できます!』と赤い吹き出しで書かれた看板があった。
「意外だね。役職とかも決まるらしいよ。」
「何になるんだろう。」
「シドには剣士は無理でしょ。魔法も使えないってなると……。
「荷物持ちだったり。」
「わかんないよ?」
周りの賑やかさに負けてられないと言わんばかりにメルとシドは話をし続ける。
長蛇の列も、いつのまにか次の次がメルの番になっていた。
「いよいよだね。メル。」
「楽しみ?」
「わかりきった事でしょ。」
「うん。」
と、その時。
「え─────────────っ!!!!!」
受付嬢が叫び声を上げ、ギルドが静まり返った。
メルの前の人の診断結果を見て口をパクパクさせる。
「どうした?」「何があった?」と、ざわめきが起きる。
受付嬢は口を開く。
「冒険者ランクSSS +で適正職が大剣豪、大魔法使い、賢者、ゆ…ゆ勇者!?しかも全能力Sランク、ついでに称号が“神に選ばれし者”!?」
読み上げられた青年はぽかんとしていた。
その青年を、驚愕の目で全員が見つめる。
「……え?凄いんですか?それ。」
青年は自分がどれほどのものかわかっていないかの様に言う。
すると全員からツッコミが入る。
「すげーよ!!」
メルもとりあえず周りに合わせてツッコんでおいた。
青年がちやほやされてあちこちのパーティに誘われている間、メルとシドは診断を受ける。
「えーっと、メル様のランクはD、シド様のランクもDですね。メル様は旅人と爆発魔が適正職でしたがどうなさいます?」
「じゃあ旅人でお願いします。」
「了解しました。シド様は剣士と荷物持ちでしたが……剣、扱えます?」
「意地悪でもしてる?」
「滅相もございません!では荷物持ちに設定しておきますね。」
冒険者カードを手に入れたメルとシドは、適当なクエストの薬草採取を受けて、森へ走って行った。
中編へ続きます




