霞の味
注意!
今回はハルカさんの話だよ!
「ほら、まだまだ山頂は先ですよ?」
「え〜っ!もう宇宙に辿り着いてしまいそうなぐらい歩いたのに……。」
「コハルさんが誘ったんじゃありませんか。私がイスターに乗れるように、仙人に会いに行こうって。」
「そりゃあそうですけど……。」
霞が漂う、涼しい空気の山の中、幾つもの尖峰に囲まれた大きな山に並べられた、丈夫な石の階段を登っている。
コハルさんが誘ったっていうのに、座り込んで駄々を捏ね始めるなんて大人気ないなあ。
まあ、大人だとしても同じ人間。疲れるのは当たり前か。
「早く行きますよ。」
「待ってくださ〜い。」
私よりヘロヘロな動きじゃん。
いつもビシバシと指導してるコハルさんは一体何処へ。
それにしても、まさしく仙人がいそうな場所。なんて言うか……うーん。何とも言えない。
けど、凄そうな感じがする。
これで仙人が変な人だったらガッカリする。
そんなことないだろうけどね。
……これフラグ?
○
やっとの思いで、数人で賑わった休憩所にありつけた私たちは、ベンチでお昼ご飯にすることにした。
「はい。熱いからゆっくり食べなよ?」
「ありがとうございます!」
コハルさんが、肉饅頭を買ってくれた。
春になったというのに、まだ寒い山の中で食べるあったかい食べ物は、美味しいな。
そう思ってると、ニコニコしながら私の食べる姿を見てるコハルさんが視野の端に映る。
「もう食べ終わったんですか?」
「ん?うん。」
そう答えた後も、コハルさんは私を眺めていた。
何か顔についてるのかな?
まあ、今はしっかりとこの肉饅頭の美味しさを噛み締めよう。
○
「あー!やっと着いたー!」
山頂から叫ぶ。
「ハルカさんも、意外とはしゃぐんですね。」
「まだまだ子供ですから。」
「私も何か叫びましょうかね。」
「そう言えば、仙人はどこにいるんですか?」
「ここじゃ。」
「うひゃあ!」
私の後ろから声が聞こえてくる。
振り返ると、登山客みたいな見た目をしたお爺さんが立っていた。
てっきり急に現れるみたいな感じかと思ってたけど、仙人だと私が分かってなかっただけか。
「ふん。わしに気がつかないとは愚か者が。」
仙人は、手に光る板を持って、それを指で触ってる。
なんていうんだっけ。どこかで聞いた気がする。
「それで、何のようじゃ。」
「あ!えーっと、イスターって乗り物に乗れるようになりたくて……。」
「ふむふむ……ぬ!?」
光る板を眺めたかと思うと、仙人はすごい形相で私を見つめる。
やっぱり何か顔についてる?
「お前は……!悪魔じゃあ!立ち去れぇ!」
「ええ?」
仙人は震えて怯えてる。今にも逃げ出しそうと思った時には、もう急足で逃げ出していた。
なんで?
「あ〜これのせいか。」
コハルさんが、仙人の落としていった光る板を拾い上げ、慣れたような手つきで触る。
「それ何ですか?」
「スマートフォン。何十年前に流行した機械ね。」
「ああ!この前話してましたね。扱い方を間違えれば危険なあれですよね。」
「そう。包丁みたいなね。」
なぁんだ。仙人って言っても他人の情報頼りか。
そんなので仙人になれるなら私は神様にだってなれるよ。
「あー!下山しなきゃなのか───────!」
コハルさんが叫ぶ。
地面に放り捨てられたスマートフォンには、悪魔の見分け方と書かれていた。
そんなこと簡単に信じられるのかなぁ……。
包丁を乱暴に扱わないように、です。




