ネタのない話
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
「う〜ん……思いつかないなぁ……。」
池のほとりで休んでいるシドが、珍しく頭を悩ます。
「ネタ切れ?シド。」
「うん。全然思いつかない。」
「王道異世界ファンタジーとか?」
「わかってて言ってるでしょ。」
「シドは逆張りしか考えないもんね。」
森の中にポツンとある池が、なんとも幻想的に靡く。
旅の疲れを癒してくれるスポットとして人気だからか、いくつかの旅人が集まっている。
シドはネタを考えるためにその旅人たちをまじまじと眺める。
メルは世間話をするために旅人たちと話をし始める。
「こんにちは。」
少し背の高い女性の旅人は、メルに気がつく。
「こんにちは。貴女も旅をしているのかしら?」
「そうです。よく分かりましたね。いつも年齢のせいで迷子かと思われちゃうんです。」
旅人はくすりと笑う。
「ここに辿り着けて迷子は無いわよ。」
「結構簡単に辿り着けましたよ?」
メルはここまでの道のりを思い返す。
深いドロドロとした沼があっただけで特に難解な道ではなかったはずだ。
「なら運が良かったのね。そっちの沼には人喰らいの化け魚って呼ばれるでかい魚が住んでるのよ。」
「へぇ〜。」
「畏れ知らずかしら。それとも、世間知らず?」
「両方でしょうね。まだまだ未熟ですから。」
旅人はメルを羨ましそうな目で見る。
メルは首を傾げる。
「私は……その年になると何でもかんでも知った気がして、急に現実に希望が持てなくなったわね。」
「そうなんですか。」
「そう。もうちょっと希望持っておくべきだったわね。」
そう言うと、旅人は池に小石を投げ込む。
ぽちゃりと水が王冠を作り、森の静けさを引き立てる。
その王冠もほろりと消えて、池は何事も無かったと言うように靡き始める。
「それでは、そろそろ私は行きます。」
メルはシドの元へ、戻って行った。
「シドーそろそろ行くよ〜。」
恐ろしいと言われていた泥沼を、メルがシドに乗り走る。
「それで?どんなのができたの?」
「えーっと、こんな感じ。」
シドはメルに作った物語を聞かせる。
その内容は、何も変哲のない、面白い物語だった。
「いいじゃん。どうやって思いついたの?」
「適当に思いついたことを伸ばした感じ。」
「ふぅ〜ん。」
私もネタが無い、それがネタです。




