ただの国
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
「全部ただ!?」
メルが珍しく大きな声を出して驚く。
それに、道化師のような見た目をした門番は答える。
「はぁい!この国、あの店この店ぜぇんぶ!何もかも無料です!」
「赤字のならないの?」
と、シドが疑問をぶつける。
「大大大大だぁいじょうぶです!我が国の国民はぁ!なんとなんでも作れるノォです!」
「へぇ〜!」
「ならメル、いろいろもらっ──」
と、言う頃には、土埃が盛大に舞い上がるような速さで、メルは国の中に走っていっていた。
シドはメルの無駄もらいをなんとか止めないとと思い、いつもより早く国の中を走っていった。
○
シドがメルを発見した頃には、大量の箱を抱えていた。
10…いや、20はあるだろうか。
シドに出会うや否や、メルは冷や汗を出す。
「えーっと……これは……今日!今日全部消費するから!」
メルの持ってる殆どの物は食べ物だった。
「太るよ?」
「女の子にそれ言う?」
「メルじゃん。」
「確かに。」
とりあえず、今から消費しないとただでさえギチギチの荷物がはち切れてしまう。と、考えたシドはメルに全部食べさせることにした。
宿のバルコニーのベンチの上で、メルはひたすらもらった食べ物を食べる。
「そふひぃへばさ。」
「何?」
ごくんとメルは食べ物を飲み込む。
「この国、人を散歩してる人がいるんだよね。」
「へぇ……もしかして、人も人権も無料とか?」
「あるかもね。プライスレスじゃなくて。……あ。」
「どうした?面白いことでも思いついた?」
「うん。とびっきり面白いこと。」
「何を買うの?人?」
「それよりもいい物。買えたらだけどね。」
そよそよと風が吹いている。
髪が波のように靡き、明日試すことのワクワクを増幅させる。
気持ちのいい夕方だった。
○
翌朝。
メルは拡声器を買ってきた。
普通の拡声器よりも大きな、大声で叫べば国中に響くんじゃないかと思えるほどの大きさだった。
「それが面白いこと?」
「ううん。もうちょっとしないといけないことがある。」
そう言って、メルは拡声器を持ちながら高い場所に行く。
シドはその様子を下から何をするんだろうとワクワクしながら眺めている。
メルは深呼吸しながら、息を吸い込む。
「今から──、この国──、買いま─────す。」
国中が静まり返った。
数秒も経たずに、ざわめきが起きる。
「そして──。」
メルはまだ続ける。
「全員停止!」
メルがそう言った瞬間、国中がさらに静まる。
今度は完全な静寂だ。
国民も全て止まっている。まるで電源を落とされたロボットのように。
シドは降りてきたメルに聞く。
「どうやったの?メル。」
「ここの国の国民はロボットなんだって。国王が絶対の。」
「ふぅ〜ん。じゃあ元国王は?」
「そろそろ出てくるんじゃない?」
噂をすると、なんとやら。
城門からあの門番の男が走って出てくる。
どうやら慌ててるようだが、メルは知らんぷりして門から出ていく。
流石に、奴隷を売って繁盛していた国のことは許せなかったようだ。
許せない、許せる。
人間ですから。




