終わりよければ全ていい話
注意!
自転車が喋るけど気にしないで!
人が死ぬから嫌な人は読まないで!
メルが泊まっている、家主の部屋を除けば4部屋しかない、小さな宿のこと。
早朝だと言うのに、叫び声が聞こえてきた。
「キャァァァ──────────────!!」
メルはびっくりして飛び起きた。
何があったのか気になったので、寝癖もついたまま、メルは廊下に飛び出して行った。
同じ階の別の部屋のドアの前に、さっき叫び声を上げたであろう女の人が立っていた。
恐ろしい物を見た目をしている。
「どうしたんですか!」
先に声をかけたのはメルではなく、同じ階の別の部屋に寝ていた、太った男だった。
メルはその様子を遠くから見ている。
「し…し……死体が!」
「うわぁ!」
太った男も驚く。
メルもその2人の後ろからちらりと覗く。
「あら〜……。」
部屋の中には、頭が破裂して脳みそが飛び出している、切り傷でズタズタの、足を曲げられている、これでもかってほど惨たらしい死体が、濡れた服と共にあった。
オーバーキルとでも言うのだろうか。
「メル〜?どうしたの?」
いつのまにか起きて隣にいたシドが、メルに話しかける。
「死体があるよ。」
「ふぅ〜ん。復讐劇かな。」
「まだ事件とは決まってないでしょ?ほぼ決まったと言ってもいいけど。」
「あそこまでぐしゃぐしゃじゃ、ね。」
その時、誰かが階段を登る足音が聞こえてきた。
木造の宿だからだろうか、軋む音が響く。
少し遠いところから、登ってきた女性が口を開く。
「みなさん。死体には触れないでください。」
探偵のような格好をしている。
フィクションでしか見ないような探偵の格好だ。
「なるほど……では皆さん、一回のロビーにお集まりください。私は、探偵です。」
○
第一発見者の女の人、太った男、家主、メル、シド、そして探偵の6人が、ロビーに探偵を中心にして円になって集まった。
「まずは愛称でも決めましょう。そっちの方が呼びやすいので。」
と、開口一番探偵がおかしなことを言う。
「まず貴女は、スタイルがいいので美人さん。」と、女の人を指差す。
「貴方は、太ってるので太っちょさん。」と、男の人を指差す。
「家主なので家主さん。」と、安直すぎる愛称をつける。
「貴女は………特に特徴がないので少女さん。と、自転車さん。」
愛称が全て決まったところで、とでも言うかのようにパンと手を叩く。
「まず、状況整理です。」
なぜか少し緊張した雰囲気が流れる。
「朝5時34分、美人さんがぐちゃぐちゃになった男の死体を見つけた。合ってますね?」
美人さんがこくりと頷く。
声に出して言えばいいのにと自転車さんが思う。
「おそらく今夜殺された人の死体でしょう。そして今夜は雨が降っていた。つまりこの宿にいた人以外入ってくることはできない。だから──。」
探偵は息を吸い込む。
「犯人はこの中にいる!」
少女さんと自転車さん以外はびっくりする。
少女さんは言いたかったんだろうなと思う。
なかなかどうして迫力がある。
「誰が犯人なのかわかってませんがね。今から考えます。」
容疑者1:美人さん
「貴女が第一発見者ですね?」
「はい。」
「昨日の夜はどこで何を?」
「203号室でずっと寝ていました。」
「なるほど……。」
探偵は難しい顔をして顎に手を当てる。
「何か音は聞きましたか?」
「特に何も。」
「わかりました。最後に二つ、この事件に何か思うことと、普段何をしているのかを教えてください。」
「悲惨な事件だと思います。普段は隣町の本屋を1人でしています。」
「教えてくださりありがとうございます。」
容疑者2:太っちょさん
「昨日の夜は何を?」
「眠れなくて、本を読んでました。」
確かに、男は少しやつれている。
「何か音は。」
「大きな物音がしましたが、その時はなんでもないと思ってました……それが殺人だなんて……。」
「怖かったでしょうね。最後に普段は何を?」
「放浪生活を送っています。お金はあるので……。」
「なるほど。では、次に行きましょう。」
容疑者3:家主さん
「昨日の夜は何を?」
「一回の部屋で寝ていました。」
「何か音は。」
「カラスが鳴いていましたね。それ以外は特に。」
「事件についてどう思います?」
「恐ろしいですね。私の宿でこんなことが起きるとは。」
探偵はため息をついた。
容疑者4&5:少女さんと自転車さん
「昨日は?」
「寝てました。自転車さんは?」
少女さんは少しふざける。
「寝てた。」
「2人とも寝ていたと。音などは?」
「少女さん、何か聞いた?」
自転車さんもやり返す。
「何も聞いていないです。」
探偵は頷く。
「この事件に何か思いますか?あと、普段は何を?」
「特に何も。」
「ふぅんって感じだよね。」
「普段はあてもない旅を、自転車さんとしています。」
「少女さんはいっつも転ぶんだから。」
探偵は深く頷く。
「犯人はまだわかりませんね。とりあえず、明日またここに集まってください。」
その一言から、全員は解散した。
○
次の日。
宿はいつもよりガランとしている。
ロビーに集まったのはメルとシドと探偵だけだった。
「……愛称を、決めてませんね。」
メルは探偵に言う。
「貴女は犯人なので、犯人さんでしょうか。」
「なぜ?」
探偵もとい犯人さんはメルに尋ねる。
「貴女は、死体があると、見てもいないのに言い当てました。」
「確かに。」
シドは今更気がつく。
「それに、この宿には四つしか部屋がないんです。つまり貴女は一度雨の中この宿に来ていた。」
「ああ!あの濡れたコートか!」
シドも証拠品が何なのかがわかった。
「そう。まあつまるところ貴女が犯人で合ってますよね?」
犯人さんは少し勿体ぶって口を開く。
「はい。そうです。……ただ、ハッピーエンドでしょう。」
「それはなぜ?」
「この事件を悲惨に思う人はもういないのですから。」
メルが捕まえようとした時には、犯人さんは宿を飛び出していた。
「逃げ足だけ早いや。」
シドがそう言う。
「そういうのは足も速いんだよ。自転車さん。」
「確かに。少女さん。」
2人は誰もいない宿で、笑っていた。
終わりよければそれでよし?




