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仇討の島  作者: タヌキ
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敵中突破

 生き残った隊員の中で車両盗のスキルを持っているのはジェイスのみであったので、彼が表に出ることになった。補佐としてカズミがついて行く。

 幸いなことに、人を乗せるのにおあつらえ向きの初代サニートラックと四代目フォードFが放置されており、車両の調達は容易であった。

 サニートラックのステアリングの下に仰向けで潜り、直結でエンジンを動かす。


「何処でそんなスキルを?」

「昔、基地内で起こった車両盗事件を捜査したことがあってな、そこで知った。まさか、実践するとは思わなかったがな」


 人間、何が活きてくるか分からないと思いながら、ジェイスはフォードの直結に移る。

 愛車と同じ型なので配線類は知り尽くしており、サニーの直結よりも早く済んだ。

 エンジンが動き出したのを確認し、ジェイスはボンネットを軽く叩いた。


「さぁ、突破するぞ」

「ええ」


 フォードFとサニートラックに市民を分乗させ、映画館を出発する。隊員が乗る分の車も盗んでおいた。

 ジェイスはフォードFの荷台に、カズミはサニートラックの荷台に乗って周囲を警戒する。


「全員乗ったな!」

「はい!」

「出せ!」


 先頭はフォードF、それにサニートラックが続く。

 荷台に人を乗せているのと、道路状況の関係で速度はあまり出せない。

 そのせいか、周囲の景色がゆっくりと流れていく。郊外も酷かったが、市内は輪にかけて酷かった。

 暴徒に撃たれた死体がそこら中に転がっていたり、焼かれていたりして胸糞悪くなる臭いを発している。


「……地獄ってのは、案外こういうふうなのかもな」


 市民に聞こえないよう、小さな声で呟く。

 だが、次に聞こえてきた声にジェイスは肝を冷やす。


「――地獄」


 日本語なので意味は分からなかったが、聞かれたと思い視線を下へやる。そこでは若者が震えていた。


「あの時と同じだ……あの時と……」


 若者の眼は遠くを見据えており、ジェイスなど眼中にない。日本語が分からないので本当のところは分からなかったが、聞かれていなかったと判断して周囲の警戒に戻る。

 車列は順調に進み、五号線まで戻ってきた。

 この調子で大学まで戻れる、分隊員達の目に希望が浮かぶ。

 しかし、運命は浮気者とシェイクスピアも綴っている。

 車よりも軽いエンジンの咆哮が聞こえてきた。単車の物だ。


「!」


 それを聞いたジェイスとカズミは警戒態勢に入る。


「どっちだ!」

「……あっちです!」


 カズミが叫び、指を指す。

 単車が五台、猛スピードで車列に近づいてきていた。

 エンジン音に混ざって、歯がぐらつく耳障りな金属音が聞こえてくる。

 五台とも二ケツしており、後ろに乗っている者がツルハシや鉄パイプをアスファルトに擦りつけ火花を散らしていた。


「暴徒だ!」

「速度上げて!」

「これ以上は無理だ! 民間人が転がり落ちるぞ!」


 速度が乗っていないトラックに、単車はすぐさま追い縋ってくる。振り切れないのなら、迎撃するしかない。


「クッ! 皆、頭を下げろ!」


 ジェイスが発したのは英語の叫びであったが、沖縄在住だけあって市民はすぐさま頭を下げた。

 ジェイス、カズミのM16が火を吹く。


「皆殺しやん(皆殺しだ)!」


 単車に乗った奴が叫び、鉄パイプを振るう。

 二人は近場の奴から狙い、発砲する。

 足場も悪く、相手もちょこまかと動いているので十何発も撃って、ようやく一発カズミの放った弾が命中する。

 当たったのは運転手の腕であり、痛みと衝撃で奴は運転を誤る。

 ハンドルを一気に切ってしまい、単車はひっくり返る。


「残り四!」

「……これなら、散弾銃の方が良かったな」


 リロードしながら、ジェイスは呻く。

 スピードを上げた四台が、フォードFとサニートラックへそれぞれ二台ずつ左右に並ぶ。

 前を走っている車に乗る分隊員達が援護しようとハコ乗りで銃を構えているも、民間人への流れ弾を気にして撃てない。

 単車の暴徒を撃てるのはジェイスとカズミしかいないのだ。


「クッ!」


 ジェイスは咄嗟に左手でGIコルトを抜き、その勢いで左側へ銃口を向ける。右手でM16のグリップを握ったまま。

 左右にそれぞれの銃の銃口を向け、発砲する。

 プラスチックを多用したM16という銃とジェイスの鍛えられた筋肉によって、片手での保持と発砲が可能であった。

 しかし、両手での発砲が求められるライフルであるので、命中させることは出来なかった。

 それでも幸いなのは、GIコルトの方は命中したことだろう。

 M16を構え直すよりGIコルトで狙った方が早いと、右側のバイクを撃つ。

 スライドが下がり切ったのと同時に、右側のバイクが転倒して流れ去っていく。


「カズミ!」


 彼女の方を見れば、彼女も彼女で大変なことになっていた。

 左右に付いたバイクの連中が荷台へ乗り移ろうとしているのだ。

 手にしているGIコルトは弾切れ、だがM16を構えている余裕は無い。最後の予備弾倉を叩き込み、スライドストップを下げる。

 カズミもただオロオロとしている訳ではない。

 目の前の敵だけでも始末せんと、乗り込んできた暴徒へ槍のように銃口を突き付けるやワンマガジン分の5.56ミリ弾を喰らわせる。

 彼女の後ろの敵はジェイスが四十五口径弾で始末を付けた。


「ありがとうございます!」

「気ぃ抜くな! まだ来るかもしれんぞ!」


 GIコルトをホルスターへ仕舞い、ジェイスは今度こそM16を構え直した。

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