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仇討の島  作者: タヌキ
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シューティングハイ

 ジェイスとカズミは背中合わせになりながら、お互いがお互いの死角をカバーする形で戦う。

 ワンタッチで弾倉交換が出来てフルオート射撃が可能な短機関銃とは違い、一発ずつチューブ弾倉に弾を装填して一発ごとに排莢しなければならない散弾銃は、突発的な判断を求められる乱戦には向かない。

 なのでジェイスは弾切れになったM1912を銃剣を外して放棄し、死体からM1カービンと予備弾倉が仕舞われたポーチを回収していた。

 カービンとはそもそも騎乗しながらの使用を念頭に置いた銃が発端であり、一般的にライフルと呼ばれる銃よりも全長が短い物だ。

 それ故の取り回しの良さと.30カービン弾の反動の少なさを最大限に活かしつつ、ジェイスは襲い掛かる南袢島の住民達を捌いていく。フルオート射撃出来ないのも無駄弾使わないのも助かっていた。


「付いてこい!」

「はい!」


 遮蔽から遮蔽へ。牽制射撃をしながら、港へと進んでいく。

 だが、地の利は住民達にある。他の住民の家を突っ切ったり、普段使いしているであろう木々の隙間や石垣の崩れた部分を利用し、ジェイス達の隙を突かんとする。

 この瞬間も中年女が包丁片手に石垣へ乗り、奇声を発しながら彼等へ飛びかかってきた。

 その女をカズミが短機関銃の掃射で撃ち落とす。

 間髪入れずに一人の爺がM10リボルバーの二丁拳銃で突っ込んでくる。

 その爺はジェイスが撃ち、沈黙させた。

 それでも、弾や住民はまだまだ容赦なく襲い掛かってくる。


「キリがない……!」


 空になったカービンの弾倉を捨てながら、ジェイスは呻くように言った。


「港まであと少し!」


 カズミが自分に言い聞かせるためか、刻み込むかのように言う。

 集落を出てから港に泊まっている船まで、まともな遮蔽物が無い。走り抜けるほかない。

 ジェイスは最後の弾倉をカービンへ挿し、カズミは深呼吸をした。


「三・二・一で出るぞ」

「分かりました」

「よし……三・二・一!」


 合図で二人は身を隠していたヤシの木の陰から飛び出した。

 弾丸がすぐそばを掠めた証である風切り音が聞こえる中、残された体力を振り絞って哨戒艇へと辿り着く。

 そして絶句する。哨戒艇の甲板が血で染まっていたからだ。

 そこには、下半身を執拗に刺された乗組員達の死体が転がっていた。釣りをしていたところを不意を突かれたらしく、抵抗した様子はない。釣り竿が海面で揺れていた。

 しかしながら、死体に動揺するだけ余裕は今のジェイス達には無かった。

 ジェイスはカズミへ牽制射撃を任せ、操縦席へ向かう。

 幸いなことに機械類は破壊されておらず、燃料も抜かれていなかった。

 見様見真似でエンジンを始動させ、船の運転を試みる。


「動け、動け、動いてくれよ……」


 舵などで四苦八苦する間に、住民達は港まで迫ってきていた。

 弾丸によって操縦席のガラスが割られる。

 心臓が痛いほどの脈動するのをジェイスは感じていた。そんな彼を追い詰めるように、カズミの悲鳴に近い声がする。


「弾切れです! 何か武器を!」


 咄嗟にジェイスは自身が持つカービンを彼女へ投げるも、それだって残る弾は弾倉内の十五発だけ。

 何かないかと船内へ素早く目を走らせると、船室の隅にウェポンクレートがあるのを見つけた。

 それを開く。中にはM16A1突撃銃と5.56ミリ弾が二十発詰まった弾倉が六つ収まっていた。

 クレートを蹴飛ばして船室の出入り口へと動かし、ジェイスは再び操縦へと集中した。

 カズミはクレートからM16を取り、弾倉を叩き込んだ。それから迫りくる住民達へ掃射を浴びせた。

 掃射により、パタパタと三人程の住民が倒れる。だが、住民達の勢いは衰えることは無い。


「まだですか!?」

「やってる!」


 なんとか動かせると確信したジェイスは操縦席を出て、もやいを解いた。

 エンジンの唸りがひときわ大きくなり、船が前進を始める。

 舵を面舵に取り、港を離れる。

 にもかかわらず、住民達は船を追いかけようと桟橋を駆ける。何人かは海に入った者もいた。

 流石にエンジンには敵わず、船は港を出て島から離れていく。

 島が遠く小さくなるまで、ジェイスとカズミは息を付くことが出来なかった。

 ようやく島が見えなくなったタイミングで、二人は揃ってその場でへたり込む。


「……い、生きてる」

「ああ……」


 もう差し迫った脅威は無くなったのに、カズミはM16を手放すことが出来なかった。手放そうと欄干へグリップの台尻を叩きつけるも、手が硬直してしまって取れない。


「ジェイスさん……」

「ん?」

「指、外してもらえません?」

「……ああ」


 移動すべく腰を上げようとしたジェイスであったが、彼は腰が抜けてしまって全く動けなかった。力を入れようにも、力は入らない。

 経験したことがないほどの修羅場であったのだ。こうなるのも無理もない話であった。

 二人は顔を見合わせ、アドレナリンの向くまま「へへへ」とだらしなく笑った。

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