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仇討の島  作者: タヌキ
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ヒットマン

 先行したトラックの面々。彼等は無事にコザの街を抜けて、郊外へと辿り着いていた。

 坂の上にある正夫の邸宅を捉え、チンピラ達はいきり立つ。

 だが、彼等の調子も幸運もここまでであった。


「ん?」


 あと五十メートルというところで、運転手が邸宅から人が出てきたのを見た。勢いづいていた彼はこのまま跳ね飛ばしてやると、アクセルを踏み込んだ。

 邸宅から出てきた人――ヒットマンのハルは、米軍の倉庫から盗み出されたM60機関銃を抱えていた。銃の脇から垂れる弾帯には、7.62ミリNATO弾が五十発挿し込まれている。

 腰をどっしりと落としたハルは、トラックを銃口の先に据えた。

 息を大きく吸い込み、軽く吐いたところで息を止めて銃口のブレを抑える。

 彼の人差し指が動いた。

 腹の底に響く重低音がハルを包む。

 高速で飛来する7.62弾を前に、窓ガラスなど障壁にはなり得ない。運転手は座席へ縫い付けられたが如く、弾薬の運動エネルギーによって身を押し付けられてその命を消された。

 弾丸はエンジンを傷つけこそすれ破壊することは無かったが、経年劣化でボロボロだったタイヤを容易く貫いた。

 タイヤはそのままバーストし、制御する者も亡くなったトラックは荷台のチンピラ達を放り出す形で横転する。

 ハルが射撃を止めると、邸宅からナツがM72対戦車ロケットを一門持ってきた。

 ナツは片膝を付いてM72を構えると、トラックを狙ってトリガーを押し込んだ。

 発射された66ミリロケット弾によってトラックは破壊され、また荷台に積んであったダイナマイトを炸裂させる。

 更にダイナマイトの炸裂によってガソリンに引火し、かなりの爆発を起こした。これは全て一瞬の内に起こり、横転した際に生き残ったチンピラは逃げる間もなかった。

 紅蓮の炎が渦を巻いて天に昇り、その後を立ち昇っていく黒煙が追う。

 ヒットマン二人はそれを見て、満足そうに頷くと駆け足で邸宅に戻っていった。


 トラックの爆発音がジェイスとカズミの耳に届いたのは、あと少しでコザの街を抜けようというところであった。

 濛々と上がる黒煙を目にした二人は、何かあったとすぐに察する。

 そして、轟々と燃えるトラックを見た時、二人の表情は唖然としか表せないものであった。

 二人は慌ててジープを降り、生存者を探す。

 だが、オレンジの炎の切れ間から黒焦げの死体が転がっているのは確認出来るものの、熱くてトラックには近づけない。


「やってくれる……!」


 歯を噛みしめ、悔しさを表すと同時に内から湧き上がる緊張を押し殺すジェイス。


「……………………」


 ギャランとの撃ち合いでアドレナリンが出ているせいで緊張を忘れたカズミは、なんとかトラックに近づこうとするも生物としての本能故に引き下がることしか出来ず、強く拳を握り締めた。


「対戦車ロケットまで持ってるとはな……どうやら、俺達は連中を見くびり過ぎていたらしい」

「ええ……」


 道路はトラックで塞がれており、回り道しようにも待ち伏せの可能性や邸宅に正夫がいた場合は逃走を許す可能性がある。

 しかし、幸いと言うべきか道路の左脇は開発途中の造成地であった。トラックのすぐ横は土が盛られているのでジープは走れないが、徒歩ならばトラックを避けて向こう側まで行ける。

 突破のルートを見積もったジェイスは、カズミへ無線で他の襲撃部隊を呼ぶように頼んだ。


「――それで、君はここで待っててくれ。もし、俺の身に何が起きてもだ」

「ジェイスさん……一人で行くつもりですか?」

「ああ。散弾銃と対戦車ロケットじゃ分が悪いが、ここで手をこまねている訳にもいかない」

「なら、私も行きます。一人より二人です」

「その気持ちは有り難いが、駄目だ。君しか残党達とコミュニケーションが取れない。二人で行って全滅でもしたら、あの連中がどう暴走するか分かったもんじゃない。だから、君はここに残って連中を制御するんだ」

「……………………」


 ジェイスの言葉は正論であり、言い返す余地はなかった。それでも、カズミは何か言いたげであったが、チンタラしている暇はないとジェイスは盛り土をよじ登った。

 盛り土の上からブロック塀を飛び越え、邸宅の敷地内に侵入するジェイス。

 壁に耳を付け気配を探るも、人が数人いる程度しか分からなかった。壁のすぐ向こう側にいるという訳ではないようだ。

 ジェイスは素早く目を走らせ、侵入口を探す。玄関は論外とし、勝手口にかがんで向かう。

 鍵が掛かっていたので、ジェイスは上下の蝶番に散弾をぶち込む。

 そして、鍵の部分を編み込みブーツの底で蹴り押し、戸を破る。

 だが、勢いそのままに突入はしない。待ち伏せの可能性が完全に捨てきれないからだ。

 ジェイスはアーマーのポケットから散弾を出し、リロードしながら心の中で三秒数える。

 きっちり三秒数えた後、M1912を腰だめで構えつつ邸宅内へ突入する。

 キッチンのようで食器棚や流し台、ガスコンロがまず視界に入る。正夫か愛人が綺麗好きなのか、汚れやすいコンロ付近が清潔にされていた。

 キッチン内に人はおらず、隣にある脱衣所と風呂場をクリアリングしようとするジェイス。

 すいと、M1912の銃口を脱衣所に通じるガラス戸へ動かした。

 刹那。

 ガラス戸に黒い影が映ったと思えば、戸を破ってヒットマンのナツがタックルしてきた。

 ほとんど不意打ちに近い攻撃をジェイスはモロに喰らい、背後にあった食器棚に背中を打ちつけた。

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