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仇討の島  作者: タヌキ
33/50

襲撃開始

 約一時間後。コザ市。

 コザの道路は警察の広報もあってか、民間車両の姿はほとんどなかった。

 人の往来も少なく、ジェイスは胸を撫で下ろす。

 家の中にいても流れ弾のリスクはあるが、いつも通りの日常を送っている市民を急に鉄火場へ放り込むのは気が引けたからだ。

 交差点に差し掛かると、無線が鳴り出した。


『あんしぇー、手筈通りんかい分かりやびーん(それじゃあ、手筈通りに分かれます)』


 ジェイスは無線機のマイクを取ると、カズミの口元へと持っていく。


「了解しました。何かあったら、連絡してください」


 列の最後尾にいるトラックが交差点を曲がっていく。

 コザ市内に点在している比嘉派の拠点を同時多発で襲撃するためだ。こうすることによって、比嘉派が混乱して組織的な抵抗が鈍るか出来なくなる。

 そこからも、交差点やT字路に差し掛かる度に無線が鳴り、トラックが離れていく。

 そして、最終的に一台のトラックとジェイス達のジープが残る。その二台が向かう先は、本命である比嘉正夫の自宅だ。

 コザ郊外の小高い丘の上に鉄筋コンクリート造の家を建て、若い愛人と一緒に暮らしている。

 いつか読ませてもらった警察の資料をジェイスは思い出す。

 このまま、何事もなく襲撃が進めばいいが。

 サイドミラーの中で流れる景色を眺めながら、ジェイスはそう思った。隣に座るカズミも、全く同じことを思っていた。



 分かれたヤクザの一組。

 情婦のホステスに隠れ家の住所を書いた手紙渡すという大ポカをやらかしたヤクザが、小隊長の部隊だ。

 彼等が向かうのは、いつぞやヒットマンが逃げ込んだ自動車整備工場である。


「いきー! 日和るなさぁ!(いけー! 日和るなよ!)」


 運転手を鼓舞した彼は、足元に置いてあった盗品のM1ガーランド自動小銃を手に取った。

 トリガーガードの前部にある安全装置を解除し、いつでも撃てるようにしておく。

 他のチンピラ達も、ドスの鞘を抜いたり、拳銃の残弾を確認したりする。

 そして、工場のシャッターを正面に捉えると運転手はギアを一つ上げ、アクセルを踏み込んだ。


「突っ込めいー!(突っ込めー!)」


 誰かの雄叫びは、シャッターを突き破る音でかき消される。トラックは前から工場内へ突入した。

 衝撃が荷台を揺らす。人や物がひっちゃかめっちゃかに掻き回される。

 お粗末な武器管理だったのにも関わらず、奇跡的に銃を暴発させたり、刃を味方へ当てたりする者はいなかった。


「とー行けー! 行けー!(さぁ行け! 行け!)」


 荷台から飛び降りたチンピラ達が壊れたシャッターの隙間から、次々と工場内へと飛び込んでいく。

 工場内にいた十数名の比嘉派の構成員達は、突然の襲撃に対応しきれていなかった。

 その慌てようは滑稽で、目の前にドス振りかざしたチンピラがいるのに、驚いてズボンに被せてしまったビールの始末をしようとする者もいるぐらいだ。

 銃声と怒号がそこかしこでしだす。

 大ポカヤクザもガーランドを構え、右往左往する比嘉派の構成員を撃ちまくった。

 もっとも、ガーランドの装弾数は八発。その弾数でようやく一人撃ち殺したところで、弾が切れる。

 予備弾を装填したクリップを持ってきていなかったヤクザはガーランドを放棄し、腰に差してあったドスを使うことにした。

 雄叫びを挙げ、逃げ惑っていた構成員の肩を後ろから掴む。そして、その腰の辺りへ深々と刃を刺しこんだ。

 抵抗はさしてない。刃は面白いほどスルスルと身体に滑り込んでいく。

 だが、その感覚に反して構成員が負ったダメージはかなりのものであった。

 痛みは勿論のこと、刃は彼の腎臓を破壊していた。出血も多く、よしんば助かっても人工透析は免れないだろう。

 ヤクザがドスを引き抜いて身体から手を離すと、構成員は血を床へ擦り付けながらのたうち回った。

 ここで構成員の一人が仲間の仇討とばかりに、ヤクザへ襲い掛かる。

 殺気を感じ取ったヤクザは、ドスを握る手を裏拳の要領で後ろへと繰り出した。

 ドスの切先が襲い掛かる構成員の両目を抉った。勢いで刃に付いた鮮血がシュバと散る。

 言葉にならない悲鳴を挙げ、顔を押さえる構成員。

 ヤクザは振り返り、空いてる方の手で構成員の首を掴んで、ドスを無防備な腹へ何度も突き刺した。

 アドレナリンで目をぎらつかせ、返り血を浴びた様はまさに悪鬼羅刹。

 チンピラ達も同じように、やったやられたを繰り返しながら比嘉派の構成員達を血祭りにしていく。

 そうしているうちに、銃声と怒号が静まり、呻き声と荒い呼吸が工場内を支配するようになった。工場内の構成員達は死んだか、死ぬしかない大怪我を負っている。

 当然、チンピラ達も全員無事では済まない。

 襲撃部隊十三名の内、五名が死に二名が手の施しようがない怪我を負い、五人が大なり小なり怪我をして無傷なのは一人だけであった。

 大ポカヤクザも反撃を受けて、頭から血を流している。しかしながら、襲撃は成功した。

 ヤクザはトラックの荷台に戻り、ジープのジェイスとカズミへ報告を行う。


『整備工場突撃部隊。襲撃成功。やしが、正夫ぬかーげーねーん(でも、正夫の姿は無い)』

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