19:ゴザ村の芋姫とマヤ
ボーロ村を出て2日後、ワタシ達はゴザ村に到着した。ゴザ村はボーロ村と同じように、領主から預かった広大な土地で麦を育て、税として納めている貧しい村だ。人口は100人程とボーロ村よりもその規模は大きい。
本来であれば入村してすぐに、野宿先に案内されるのだが、今回だけは事情が違った。貴族のフェリ姉ちゃんがいるため、村長自ら挨拶に出て来たのだ。
「これは姫様・・・・村の徴収いらいでございますな」
村長が出てくると、多くの村人がそれに連れ立って外に出て来た。野次馬に出てきたはいいが、お貴族様がいて、引っ込みがつかなくなった感じだろうか?
誰も彼もが頬がこけ、やせ衰え、元気がないように見える。
「村の様子はどう? 村人の元気がないようだけど・・・・やっぱりあの徴収の影響かしら?」
「いいえ。姫様の徴収はこの村の状況を配慮したものでございましたので、苦しくはありましたが、それでもなんとかやっていけるくらいでございました。ところがその後が問題でした・・・・」
「その後とは?」
「この街道にある抜け道の先に、この村と交流のある、ベル村という村があるのですが・・・その村の徴収が厳しく、食料のほとんどを持っていかれたそうです・・・・」
「ベル村は確か海沿いの街道にあったずね?」
「さようでございます・・・・」
「その辺りの徴収はサッチャーの部隊ね・・・・」
噂によるとサッチャーという男の部隊は、山賊上がりの部隊で、村や街で苛烈な徴収を行っていたというのだ。そんな部隊の徴収を受けた街や村は、たまったものではないだろう。
「食料のなくなったペル村の連中が、鬼気迫る勢いでこの村に押し寄せたのでございます。なんとかペル村の連中は村の門前で抑えていたのですが、このままではいずれ突破され、村に被害が出てしまうと思い、協議を持ち掛けたのでございます。その結果なんとか説得して協議にはごぎつけられたのでございすが・・・・いかんせんこの村の人口のほとんどが、老人や女子供でございますから、実際戦いとなると、男手の多いペル村には敵いません・・・・」
食料の大半を持っていかれたというわけか・・・・
その話を聞いたフェル姉ちゃんは、唇を噛みしめ、後悔に満ちた表情になった。きっと聖騎士軍に加担していた自分を、攻めているのだろう。フェリ姉ちゃんとはそういう人だ。
これはもうこの村を、放っておくことなどとてもできないだろう。
「それじゃあその食料は・・・・ワタシがなんとかしましょう!」
気付くとワタシは、そう口にしていた。
「マヤちょっとあんた・・・!」
「それは無理だマヤ! 俺達は税の対象となる麦の運搬もしているのだぞ! 期限が限られている!」
確かその税の対象となる麦は、ワタシが【黒渦】の魔法で預かっているのだ。ワタシは以前ボーロ村を野菜や果樹で溢れさせているが、あの時は1ヶ月近くもかけて、それを可能にしている。ヴィルおじさんはそれを知っているがために、ワタシにそう言ってきたのだろう。納税が1ヶ月もずれるのは、確かに問題があるかもしれない。だがこの国の時間の感覚はアバウトなので、納税の期間が限られているとしても、そこには大きなラフがあるはずだ。
「その納税はいつまでに行えばいいですか?」
「たとえ納税が遅くなるとしても、待ってくれるのは、せいぜい一週間くらいが限界だろう・・・・」
一週間でこの村を作物で溢れさせるとすれば、さつまいもがいいかもしれない。さつまいもは現在持参したものがあるし、そのさつまいもに【植物改良】の魔法を使えば、じゃんじゃん苗を量産できる。さつまいもの苗はその蔓となるため、【植物改良】の魔法で手軽に増産可能だ。
その上この村から苗や種をかき集めれば、さらに効率よく作物を増やすことが可能だ。
「その期間でなんとかなりそうですよ!」
「本当かマヤ!?」「本当なのマヤ!?」
「ちょっとお待ちを!? その忌み子はこの村でいったい何をするつもりなのですかな!?」
どんどん話を進めるワタシに対して、それについていけない村長は、怪訝な顔付きで尋ねてくる。ワタシの魔法を知らなければ、そうなるのも無理はない。
「こうするんですよ!」
そう言うとワタシは、さつまいもを握りしめ、【植物改良】の魔法を行使した。【植物改良】の魔法は、植物の育成を、短時間で可能にする効果があるのだ。
当然そのさつまいもからは、わんさかと蔓が伸び始めた。
「「「わああああ!!」」」
その光景に驚いたゴザ村の面々が驚愕する。
「その魔法はエルフの植物魔法・・・・忌み子が特別な魔法を使うという噂は本当でしたか・・・・」
「この魔法でこの村を作物で溢れさせてあげますよ!」
「「「おおおお!」」」
その数時間後、村長の屋敷の裏の畑は、さつまいもで溢れていた。
「こ、これは奇跡か・・・・」
その畑の前にたたずみ、震えるように見つめる村長。
「俺の畑にもたのむ!」「私の畑にもきてちょうだい!」
すると次々とゴザ村の村人から、ワタシにオファーが殺到した。
「村に種か苗があるならそれも魔法で育成させましょう!」
「それは助かる!」「ぜひ家でも頼む!」
その数日は忙しい毎日となったが、わずか5日程で、ゴザ村は作物で溢れた。その大半がさつまいもであったのは、言うまでもない。
「芋姫様! このさつまいもというのは絶品でありますなあ!」
「芋姫様! このさつまいも家で茹でてみたんです! 味見してみてください!」
その日は村でさつまいも祭りが開催された。その中心にはワタシがいて、その呼び方はもはや忌み子でなく、芋姫に昇格していた。
「マヤ・・・・いいえ。これからは芋姫とよんだ方がいいかしら?」
「今まで通りマヤでお願いします・・・・」
フェル姉ちゃんからもそうからかわれる始末だ。ただでさえマヨネーズなんてみょうちくりんな名前なのに、さらに芋姫なんて呼び名がつくのは御免である。
その祭りにはやきいもは勿論、すりつぶしたキントンのようなものから、肉と一緒に合えたもの、汁物までが振舞われた。ただそんな幸せな祭りも、長くは続かなかった。
「ペル村の連中がまた集団で押し寄せてきたぞ!!」
「なんぢゃと!!」
再びペル村の連中がこのゴザ村に押し掛け、村に不穏な影を落としたのだ。この村から食料の大半を奪った者たちが、今度は何をしにきたというのだろうか?
お読みくださりありがとうございます!!
マヨネーズが好きな方★
冒険が好きな方★
食べるのが大好きな方★
ぜひコメントをください!
そして面白かったらブックマークと評価をぜひお願いします!
★★★★★いただけたら作者はテンション爆上がりですよ!




