20:ペル村の暴走とマヤ
「ゴザ村ではまだ大量の作物を隠し持ってるそうじゃねえか・・・・そいつをよこしな!」
村人の報せを聞いたワタシ達は、さっそく村の入り口の前までやってきた。すると村の入り口の前には、まるで山賊のような男達がつめかけ、封鎖された入り口の前で、足止めされ騒ぎ立てていた。あの山賊風の男達こそ、ペル村の連中のようだ。
男達の代表は村長が駆け付け、要件を尋ねると、太々しい態度でそう叫んだのだ。
「申し訳ありませんがお引き取りください・・・・。貴方達には以前ゴザ村の食料の大半を差し上げたはずです」
「あ~ん!? ふざけてんじゃねえぞこら! 食料の大半を差し出したなんて嘘じゃねえか! 第一ゴザ村にはまだ大量の食料が残ってんだろ!?」
「あちらの食料はある方からの慈悲で授けられたもの・・・・。貴方達に渡すつもりは微塵もございません!」
「口で言ってもわからねえようだな!」「暴力でわからせちまえ!」
するとペル村の連中は一斉に入り口の門に殺到し、その門を壊しにかかったのだ。村の食料を聖騎士軍に奪われたのには同情するが、自分達の欲求を満たすために、暴力に走る行為はとても許せるものではない。
「操土!! ・・・・土壁!!」
ゴゴゴゴ・・・・!!
ワタシはとっさに【操土】で土を操り、村の門の前に巨大な土壁を出現させた。
「おお! 芋姫様!」「芋姫様が再び奇跡をおこされた!」
するとゴザ村の村人達が、そう言って騒ぎ立てた。
今の状況でその呼び方をされると、力が抜けるので、止めていただきたいのだが・・・・
「ま、魔法だと!? おめえはいったい何だ!?」
「これ以上の狼藉は見過ごせません!」
ワタシはそう言うと、土壁の上に飛び乗り、ペル村の男達の前に飛び出した。すでにこいつらは山賊と化している。これだけの暴挙を働くのだ。ここで皆殺しにされても文句は言えまい。
「な、なんだこの忌み子は!?」「このガキ様子が変だぞ!」
ワタシが男達を睨みつけながら、徐々に歩みを進めると、なぜか男達は怯えたように、徐々に後ろに下がり始める。
ワタシは怒りのままに、腰に帯刀している黒塗りの短刀に手を掛ける。以前はやれなかったが、ここでこいつらを許したら、再び不幸を振りまく・・・・ワタシはそこで覚悟を決め・・・・
「待ちなさいマヤ!!」
するとここでフェリ姉ちゃんの声が響いた。
見るとフェリ姉ちゃんは村の入り口の門の見張り台に上がり、ワタシにそう声を掛けて来ていたのだ。
「ここで貴女が手を汚す必要はないわ!」
「なんだてめえは!」
すると男達の注意が一斉にフェリ姉ちゃんに向いた。
「私はフェリアンヌ・オルブラント! オルブラント公爵家の者よ!」
フェリ姉ちゃんはそう男達に高らかと名乗りを上げた。
「オ・・・オルブラントといやあ上級貴族じゃねえか!?」
「なんでそんな偉い貴族がここに・・・・」
「偽物に決まってる!!」「そうだ偽物だ!」
すると懐疑的な声も、ちらほらと出て来た。
「これでも偽物って言いきれるかしら!?」
ゴボボ~ウ!!
そう言うとフェリ姉ちゃんは何か呪文を唱え、上空に大きな炎を出現させ掲げた。
「オルブラント家と言えば火魔法の大家だ!」
「あんなでかい炎を出すなら本物にちげえねえ!」
「それにあの真っ赤な髪の色を見ろ! ありゃあ本物だ!」
するとペル村の男達は、それだけでフェリ姉ちゃんを信じてしまった。オルブラント公爵家が火魔法の大家だというのは、有名な話なだろう。それにオルブラント公爵家の人間が、真っ赤な髪の色をもつ者達だということは、良く聞く話だ。
「この村は現在オルブラント公爵家の庇護下にあるわ! その村に襲撃まかいなことをするなら、その村を山賊認定してあげてもいいのよ!」
非道な行為を繰り返す村が、山賊認定されるという話は良く聞く。そんな村がその後どうなるかは、簡単に想像がつく。この人間の命の価値が低い国で、まっさきに命を奪われるのは、そういった連中なのだ。
それにしてもこのゴザ村が、オルブラント公爵家の庇護下にあるというのは初耳だ。この村にフェリ姉ちゃんがいる時点で、それが成立しているということなのだろうか? まあそれも方便なのだろうが・・・・
「き、貴族に手を出すのはやばすぎる!」
「ひ、ひけえええ!!」「退却だ! 退却だああああ!!」
「今後この村にちょっかいをかけたら、オルブラント公爵家が許さないわ!!」
そのフェリ姉ちゃんの啖呵に、恐れをなしたペル村の男達は、次々と逃走を開始した。
そしてここでワタシは、貴族の力の有用性を、嫌という程理解させられたのだ。この国で何かをするためには、貴族の力なくしては、難しいことなのだろう。そうなるとワタシがオルブラント公爵家の庇護下に入る意味も、見えてくるというものだ。
残念だがこの国は、前世でワタシが住んでいた平和な国とは違い、力が全ての封建社会なのだ。その力というのは、何も武力だけというい意味ではない。国や国民からの信用というのも、力となりうるのだ。その力の全てを持っているのが、この国では王族や貴族ということだ。
こうしてゴザ村の騒動は無事に幕を閉じたのだ。
その翌日ワタシ達は、ゴザ村の人々に見送られながら、再びシムザスの街へ向けて旅立った。
その後、何事もなく次の村、ハラル村を通過したワタシ達は、その2日後にはシムザスの街に、たどり着くことができたのだ。
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