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24:公爵令嬢の憤り

「ねえマヤちゃん・・・・夜中外が少し騒がしくなかった?」


「ああ・・・それはワタシがカロンに頼んで、夜の特訓をしていたからですよ! 騒がしかったなら申し訳ないです・・・・」


 翌朝ワタシは、セリアちゃんに夜中のことを聞かれ、少し焦ったが、適当なことを言って誤魔化してしまった。


 戦闘の痕跡は眠い目をこすりつつ、夜中の内に片付けた。2人の姉妹の目には、あまり触れさせたくなかったのだ。勿論悟られないように、昨夜受けた傷も、全て【治癒】の魔法で完治済みだ。服に出来た、いくつか切れ込みを、縫い合わせるのに少し手間取ったが、2人が目を覚ます前には、なんとか縫い終わった。これはワタシのエゴかもしれないが、出来るだけワタシは、2人の姉妹には、残酷な現実を見せたくはなかったのだ。


『やれやれ・・・・君にはまだまだ、教えることが沢山ありそうだ・・・・』


 するとカロンに呆れ顔で、そんなことを言われてしまった。まあカロンに教わることが、多くあることは、ワタシ自身自覚はしている。


「それでカロン・・・・その後奴らの様子はどうですか?」


 勿論奴らとは、崖道で退却した聖騎士軍のことである。カロンは風の精霊を、聖騎士軍の野営地に見張りとして置き、その様子を窺っているのだ。


『どうやら数名だけ残して、退却するみたいだよ? ここまでの通り道があんなだし、どうにもならないと判断したんだろうね?』


 ここまでの通り道である狭い崖道は、ワタシの巨大な水球により破壊され、通行不能となっているのだ。奴らが再び軍勢を率いてこちらに来るとしたら、あそこに橋でも掛けないと無理だろう。強硬手段として、森を抜ける方法もあるが、軍勢での行軍は、竜種などの強力な魔物を刺激する可能性もあるので、危険が多いことも確かだ。まずそんな手段をとることは、考えられないというのがカロンの見解だ。ある程度の手練れならば、崖でも余裕で渡ってくるので、少数の刺客には、今現在も警戒は必要だがね。


『どちらにせよ・・・・当分は攻めてこないんじゃないかな?』


「なら安心ですね・・・・」


 こうして気を取り直したワタシは、その日の朝食の準備に取り掛かった。皆を食べさせないといけないし、いつまでも悩んでばかりはいられない。

 さて・・・・今日の朝食のメニューは、何にしましょうかね?





 第三者視点~


「シャリ・・・・この小さな村で見付けたという木の実はなかなかの味だ。ここの酒は今一だがな・・・・」


 その頃シュルケル王子は、美女を侍らせ、酒とボーロ村で手に入れたとみられる、知恵の実に似た木の実に舌鼓を打っていた。

 現在シュルケル王子が滞在しているのは、シムザスの街でも、最高峰の宿の一室だ。聖騎士軍はその宿を占拠し、拠点としていたのだ。


「勇者様・・・・お楽しみのところ申し訳ありません。火急の伝令が来ておりますが・・・・いかがいたしましょう」


 すると執事である初老の男が、シュルケル王子の傍らに静かにたたずみ、そう耳打ちした。ちなみに勇者様とはシュルケル王子のことである。そうよばなければシュルケル王子は、途端に不機嫌となり、何をするかわからないからだ。


「ちっ! 手早く申せと伝えよ!」


 するとシュルケル王子は、不機嫌そうにその執事の男に申し付けた。

 そして執事が静かに頭を下げ退出してから数分後、一人の兵士を伴って戻って来た。そして執事に促され兵士が口を開く。


「申し上げます! 魔族領へ続く崖道が崩落! 道が絶たれました!」


「ちっ! 森を抜ける道だけは避けたいのだがな・・・」


 魔族領へ続く道は、あの崖道以外にも、途中で獣道を挟む、危険な経路も存在していた。竜種の存在が確認されているその道を、シュルケル王子はどうしても避けたかったのだ。


「土魔法ではどうにもならぬのか!?」


 聖騎士軍には数人の土魔術師がおり、通行不能な道の修繕などで、既に活躍していた。


「崩落の規模が大きいため、修繕には月日を要するとのことでした!」


 この報告がシュルケル王子に上がる前には、数々の部隊長や幹部の耳にも入っており、既にそういう結論が出ていた。


「ちっ! このまま月日を掛ければ、王の機嫌を損ねるやもしれぬな・・・・」


 聖騎士軍はこれまでの行軍にも時間をかけており、方々で迷惑行為が相次いでいた。そのためすぐにでも魔族領に向かうようにと、国王からの伝令を、受けたばかりであった。


「・・・・なおそのおりに第4部隊隊長サッチャー様が・・・そして第5部隊隊長マークベン様が、行方をくらませたそうです!」


「なんだと!?」


 その兵士の報告に、シュルケル王子の表情が曇る。


「あの2人はこんな時に何をやっておるのだ!!」


 シュルケル王子は憤るが、その2人が彼の前に現れることは二度とない。なぜなら彼らは、既に命を落としているからだ。


「数日のうちには行軍を再開する! もはやあの森を抜ける他あるまい!」


 シュルケル王子は憤りながらも、そう決定を下した。


「ちょっと失礼するわよ!」


 するとそんなおりに、第6部隊の隊長であり、公爵令嬢のフェリアンヌが、そこへ現れたのだ。


「何だフェリアンヌ? ここへは用事はないはずだぞ?」


 シュルケル王子は、怪訝な顔つきで、そうフェリアンヌに尋ねる。


「獣人の村に襲撃を掛けたという話は本当かしら!?」


 フェリアンヌの言う獣人の村とは、シュルケル王子の部隊によって壊滅させられた、ラザ村のことであった。その話を聞いたフェリアンヌは、血相を変えて、シュルケル王子の下へ駆けつけたのだ。正義感の強いフェリアンヌは、その王子の行為が、許せなかったのである。


「ああ・・・あの汚れた者達の村か? 滅ぼして当然であろう・・・あのような者達は?」


「本当だったのね・・・・この人でなし・・・・」


 そのシュルケル王子の言葉に、フェリアンヌは憤り頭に血が上りかけるが、下唇を噛みしめなんとか耐え抜いた。

 これまでにフェリアンヌは、シュルケル王子の部隊の蛮行は耳にしていたが、噂程度のことと聞き流していた。

 ところが今回は違った。シュルケル王子の部隊と合流したおりに、笑いながらラザ村の襲撃の話をする、ならず者の話を耳にしまったのだ。


「なんだ? よく聞こえぬぞ?」


 シュルケル王子は、そのフェリアンヌの罵倒の呟きを、聞こえないふりをした。それは公爵家であるフェリアンヌを怒らせても、ろくなことにならないことを理解していたからだ。だが今回だけはその行為も意味をなさなかった。


「わたくしフェリアンヌは・・・・本日をもって・・・・この聖騎士軍を抜けさせていただきます!」


 その時フェリアンヌの口から出た言葉は、シュルケル王子にも信じられない言葉だったのだ。公爵家は王族の親戚筋にあたり、王家を支えるのは当たり前だと、シュルケル王子は認識していた。そのフェリアンヌがシュルケル王子が率いる、聖騎士軍を抜けると言い出したのだ。


「はあ? おい・・・・? いったいお前は何を言っている!?」


 シュルケル王子は慌てるが、聞く耳を持たないフェリアンヌは、即座にその場を後にした。


「それではわたくしもこれにて失礼させていただきます・・・・」


 すると執事の男までが、そんなことを言いだした。


「なんだと! なぜお前までもが!?」


「当然のことでございます・・・・。もともとわたくしは公爵家に仕える身でございますから・・・・」


 シュルケル王子はやたらと気の利くこの執事を気に入り、フェリアンヌから取り上げ、側に置いていたのだ。そしてフェリアンヌは自分のためだと言い聞かせ、執事をシュルケル王子に仕えさせていた。もともと王家に逆らえない公爵家の身では、その行為は当たり前だと、今までは思っていた。だが今回ばかりはフェリアンヌも、堪忍袋の尾が切れた。


「どうします? 始末しますか?」


 シュルケル王子に仕えるならず者の一人が、フェリアンヌと執事が去った後に現れ、シュルケル王子にそう尋ねて来た。今までシュルケル王子は、聖騎士軍から脱退する者を、見せしめと言わんばかりに亡き者にしてきたのだ。


「手を出すな・・・・あいつは・・・・」


 フェリアンヌはシュルケル王子の婚約者候補でもあった。またシュルケル王子は、高貴な血筋という言葉にこだわりを持っていた。そのためシュルケル王子は、フェリアンヌの命を奪うのは気が引けたのだ。


 そんなフェリアンヌはすでに馬に跨り、シムザスの街から出る気でいた。それは勿論あのラザ村の様子を、確認するためであった。そして救済できる者がいるなら、救済したいと考えてもいた。

 そんな中フェリアンヌの馬に近付く、もう一頭の馬がいた。その馬には執事の男が、跨っていた。

 

「お嬢様お待ちを! わたくしもお供いたします!」


 それは公爵家の執事である、ファリアンヌのよく見知った男であった。


「あらラルフ・・・・? 貴方には王子のお世話役を命じたはずだけど?」


「申し訳ありませんお嬢様。わたくしめの仕事は、もともとお嬢様のお世話と警護をすることでもありましたから・・・・。たった今お1人になられたお嬢様には護衛がおりませぬゆえ、勝手ながらこのラルフが警護に就かせていただきます・・・・」


「そう・・・勝手にするといいわ・・・・」


 ラルフの言う通り、1人で街の外に出るのは、危険な行為であった。それは街の外には魔物が出るし、盗賊なども現れるからだ。そのためフェリアンヌには、ラルフの提案は有難いものであった。ラルフは剣の達人でもあり、戦闘面でも頼りになる男だったからだ。

 そしてこういう時のラルフが、頑として引かないのも、フェリアンヌはよく知っていた。そこでラルフの提案を、受け入れることにしたのだ。


 話が終わるとフェリアンヌは、馬の歩みを進めた。その後には執事のラルフが、同じく馬に跨り、付き従うのであった。

 こうしてフェリアンヌと執事のラルフは、シムザスの街を後にし、ラザ村を目指したのだった。





「これより我が聖騎士軍は、ラングロワ辺境伯領へ向けて進軍する!!」


「「「おおぉぉぉぉおおお!!」」」


 その朝、馬に跨ったシュルケル王子は、剣を掲げると、そう高らかに全軍に号令かけたのだ。その号令と共に、聖騎士軍全軍の兵士が、掛け声を上げる。そして前進するシュルケル王子に続き、ゆっくりと歩を進め始めたのだ。

 そこはシムザスの街の城門の前で、多くの民衆が詰めかけ、その様子を見ていた。その多くが安堵の表情を見せ、中には涙を流す者や、怒りに歯噛みする者までいた。それほどまでに聖騎士軍の街での行動は、目に余るものがあったのだ。

 それはフェリアンヌが、聖騎士軍を抜け出した日から、丁度3日後のことであった。

 お読みくださりありがとうございます!!


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