モエルの策
「速い……」
相手に攻撃を一度でも当てることができればこちらに勝機が見えてくるのだが全然見えてこない。あの冬将軍を倒したときの白炎を纏って戦っていると言うのに一度も当たらないしそれどころかこちらが押されている状況だ。どうにかして攻撃を当てるか、それとも動きを封じてから攻撃するか……どちらにせよ相手を捕らえなくてはいけないのだ。でもどうやって……
「考えたって無駄だぜ。俺のスピードについて来れる奴はいねぇんだからなっ」
そう言うと掻鬼氷はモエルに向かって飛び掛り爪を振り下ろす。
下手に攻撃しても避けられるのなら相手が近づいてくる今がチャンスだ!そう思ったモエルは爪での攻撃をかわすと同時に炎を吐いて攻撃する……が
「遅い」
掻鬼氷は素早く後ろに移動し炎から逃れる。
「また避けられた!?」
広範囲に広がる炎をかわす……それも掻鬼氷は攻撃を仕掛けてきていたのでかなりの至近距離だったのにそれを避けるなんてどれだけ速いのこいつ!?
「おうおう、今のはちょっと危なかったな」
まるですべるように移動していった。どういうことなの……まさか、あいつ自身が速いということもあるかもしれないけど滑るように移動していった。考えてみれば今までもそうだった。ということはこのここら一帯に広がっている氷の地面を利用している?とりあえずやってみなきゃ。
「おい、どうすんだ? 俺の勝ちは決まってるから攻撃してやってないだけだぜ。少しでもあがいて見せてくれよ。炎の力を持つ者よぉ」
「……」
「あ? 黙っちゃって……降参か? それとも何か策でも練ってるのか?」
「降参なんかしないよ。私は諦めが悪いからね」
ニヤリと掻鬼氷に笑ってみせる。その笑みに何かを感じとったのか掻鬼氷も笑う。
「そうか、その笑み……何か考えがあるって感じだな。面白いぜ」
掻鬼氷は再度爪を擦り合わせる。これはどうやら爪を研いでいるらしい。さっきの攻撃は前の攻撃よりも破壊力があった……でも今度はそうはいかない。爪を研ぐ暇すら与えてやらない。
モエルは白炎を手に集め、集中する……そしてそのまま地面を殴りつけた。すると地面を覆っていた分厚い氷は砕け散り、元の地面が現れる。
「何っ!?」
その行為に驚いたのか初めて動揺を見せる掻鬼氷。全力で殴りつけたので広範囲にわたって氷は砕け散っていったので咄嗟に掻鬼氷は後ろに跳んでモエルから距離をとる。
「おわっ!?」
予想外だったのか掻鬼氷は驚きのあまり声を出してしまった。さっきまで戦っていた場所はもちろん広範囲にわたって地面を覆っていた氷が砕け散っていってしまった……これじゃああれができない。
掻鬼氷のあれとはまさしくモエルの読みどおり地面を覆っていた氷を利用して移動がするということだった。氷の上を滑るように移動しもともとのスピードにさらに上乗せしていたのだが氷が壊されたことによりそれができなくなりスピードが落ちてしまうのだ。
「ちっ、やってくれるじゃねぇか」
爪を研ぎながら言う掻鬼氷。内心焦ってはいるのだがそれを見せないようにしている。掻鬼氷の見立てでは氷の上を滑るのと自身の持つ速さを足してモエルの攻撃をかわしていたのだがもう氷は使えない……今のスピードでは相手と同じぐらいか少し上回っている程度のまでに落ちてしまった。炎の攻撃を受けたらひとたまりもない……最初の余裕は掻鬼氷にはなくなっていた。
「だがまだ勝機はあ!?」
掻鬼氷が考えている間に目の前からモエルの姿はなくなっていた。何処へ行ったのか辺りを急いで見回すと、
「うるあっ!」
「ぐふっ!?」
頭上から声がしたと思い上を向くと、そこにはモエルがいてこちらに拳を振り下ろしているところだった。避けようとしたが避けきれずそのまま殴られ地面に倒れこんでしまう。
「くらえっ」
地面に倒れこんでいる掻鬼氷に容赦なく今度は冬将軍にも使ったあの炎のレーザーを地面もろとも焼き尽くそうと放つが、
「くそがあっ!」
氷の上を利用して戦って素早さを上げていた掻鬼氷だったがそれがなくとももともと掻鬼氷は素早く動けるらしくそれを間一髪避けられてしまう。
「倒れこんでいる状態で避けるなんて……」
これにはモエルも驚く。だがこれでもともと相手は素早く動けるということが分かったのは大きな収穫だ。何故かと言うとそれが分かった方が対策がしやすいからである。
「はぁはぁ……」
掻鬼氷が今さっきまで倒れこんでいた場所は焼け焦げており地面も抉れていた。恐らく当たっていたら即死だった。この勝負やばいかもな……だがこいつらがトドコオリ様に勝てるはずがない俺に今出来ることは少しでも相手の体力を減らすこと。
そう考えると勝つことを諦め、ひたすら相手の体力を減らすことに決めた、そして今ある全ての力を体に集中させる。
「やってやるぜ。炎の力を持つ者め……」




