微かで懐かしい感じ
「ううううっ……」
モエルがどんなに力を込めても相手の技を押し返すことが出来ない。それどころかこちらが押されていっている。でも逃げるわけにいかない。どんなに押されてもモエルは逃げようとも諦めようともしなかった。
「くくくっ、無駄だ! 諦めるんだな。軽々しく相手の提案に乗ったこと、そして我の本当の力を解放させたことを地獄で同胞たちとともに悔やむんだなっ」
これで最後だと言わんばかりに力を込め、モエルの技を打ち破りそのまま氷漬けにするべく氷牙鬼の技がモエルの技を押していく。
「ぐぬぬうううっ!」
同胞の仲間の仇を討つため、信頼に答えるため私は戦っているんだ。今までだってそうだったじゃないか。炎の色を赤から白に何度も逆転してきたんだ……全て諦めなかった結果だった。だから私は今回も諦めない!
モエルの体から白炎が燃え上がり、モエルはその炎を技に吸収させパワーアップさせるがそれでも少し押し返しただけで逆転とは行かなかった。
「くくくっ、無駄無駄。押し返すことなど出来んわ! 諦めてさっさと氷漬けになってしまえ」
氷牙鬼はそう言うとさらに力を込めていく。禁忌の技でパワーアップした分を技に込めてモエルが押し返した分を押し返していき、あと一押しすればモエルに技が届く。モエルから見て氷牙鬼の技は目の前にまできていた。
「諦めるもんかっ」
それでも耐える……が技が打ち破られやられるのはもはや時間の問題だった。諦めず力を込めるがそれは自らの寿命をほんの少しだけ延ばすだけだった。
もう駄目だ……そう思ったとき何かがモエルを包んだ。それは暖かくどこか懐かしい感じがしたがモエルには何処となくその暖かい感じが分かった。それはずっとモエルが幼いころからずっと一緒にいて、一緒に修業をしてくれたあのお師匠様の感じがした。
そしてお師匠様が一緒に戦ってくれているかのようにも感じた。そう思うとモエルは力がみなぎってきた……これならいけるかもしれない。そうも思ったモエルは自身の技に力を込めてみる。
すると、今までどんなに力を込めても押し返せなかった氷牙鬼の技をだんだんと押し返し始めた。
「何っ、押し返し始めただと!?」
氷牙鬼は咄嗟に力を込め押し返そうとするが、何故か出来ない。むしろどんどん押されていく。
「!?」
氷牙鬼は驚愕した。何故ならモエルの方を見るとモエルにかぶるようにして、もう一人いるように見えたのだから。
「あ、あの姿は……冷鬼を倒した者か!?」
だが、やつは冷鬼とともに自爆し死んだはずだ。生きているはずがない……だがモエルにかぶるようにして技を放っているように見える。
「あ、ありえない! そんな事が……」
そんなことを言っている間にも氷牙鬼の技はどんどん押されていく。どんなに力を込めようとも押し返すことが出来ないのだ。こちらは本当の姿にもなり、天候も我に有利なものにし、挙句の果てには禁忌の技まで使ったと言うのに押し返すことが出来ない。もう目の前までモエルの放った炎のレーザーは目の前まで来ていた。
「ぐおおおおおっ!」
氷牙鬼はそれでも力を込める。もう天下凍一などどうでもいい。禁忌の技を使い続けもはや命を落とすことは確実だろうと思った。何故なら激痛が走るばかりではなく意識まで朦朧としてきたのだ。
だからもうこの勝負に勝てればそれでいい。体中の力を技に込めるがそれでも炎は押し返すことは出来なかった。
そして……
「くらえっ、氷牙鬼! 焼滅しろーーーーっ!!!」
モエルは一気に力を技に込める。すると氷牙鬼の放った技を打ち破り、氷牙鬼にぶつかる。
「ぐおおおおおおぉぉぉっ!」
体中が炎で包まれ溶けていく氷牙鬼。溶けながら走馬灯のように色々な事を思い返していた。
あのとき母親とともに殺しておけば……
油断せずさっさと刀で斬り殺しておけば……
もっと早く本当の姿になっていれば……
禁忌の技をもっと早く使っておけば……
我が負けたのは全て自分自身の甘さが招いた結果というわけか……体が完全に溶け、かろうじて残っていた頭で考えていたがやがて頭も溶けていき、炎のレーザーは氷牙鬼を溶かしながらそのままの威力で突き進み天にまで届き、そして爆発した。そして氷牙鬼が作り出した雪を降らす雲がその衝撃で吹き飛び、太陽の光が差し込んだ。
「勝った……勝ったんだ」
モエルは全てを出し切ったのでその場に仰向けに、太陽の光を見るかたちで倒れ込んだ。
氷牙鬼の作り上げていた氷の城の瓦礫は氷牙鬼がいなくなったことで溶け始めていた。
ふいに自分を呼ぶ声が聞こえた。その声の主はだんだんと近づいてきてそして、急に抱きしめられた。
「よくやったな! モエル」
それは巴さんだった。ハジケちゃんも巴さんの後に抱きついてきて喜び合った。
「勝ったんだね! モエルちゃん」
「うん、勝ったよ。私たちが勝ったんだよ」




