炎は師の背中を追いかけて
その場で喜び合ったモエルたちは暫くすると移動し、巴さんの家に行った。廊下などの氷もやはり溶けていた。
巴は祝勝祝いだと言ってご馳走を出してくれた。酒も出してきてくれたが飲めないことを伝えると無理やり(巴さんが酔って強引に)飲まされ炎が暴走して家が危うく全焼するところだったりしたがそれでも皆笑っていた。それだけ氷牙鬼への勝利は大きかったのだ。
ご馳走も食べたり、話しをしていたらいつの間にか夜になっていた。巴さんが戦いで疲れているだろうと言って、風呂や布団の準備をしてくれていたのでお言葉に甘えて休ませて貰うことにした。
「モエルちゃん」
「何? ハジケちゃん」
夜、モエルとハジケは一緒の部屋で寝ることになった……というのも活躍したもの同士一緒に寝たらどうだと巴さんが言ったのだった。お互い話したいこともあったのでこうして一緒の部屋にいる。
「私たち、勝ったんだよね」
「うん、そうだよ。夢みたいだよね」
お互い暗い天井を見ながら話していたが、それは楽しそうに話すのではなくポツリポツリと今までのことを思い返しながらの会話だった。
「最初は勝てるのか心配だったよ」
「私も正直不安だった……けど勝てた。ハジケちゃんのおかげだよ」
「そんなことないよ。倒したのはモエルちゃんなんだから」
「でも吹鬼のとき引き受けてくれたじゃん。ハジケちゃんがそうしてたから勝てたんだよ。それにあのときのハジケちゃん、かっこよかったし」
「そ、そうかな」
お互い褒めあうがこれ以上言い続けると眠れなくなるし言いたいことがありすぎると思ったので続きは明日にして寝ることにした。久しぶりにいい眠りにつけそうな静かで、何にも怯える必要のない夜だった。
「行っちゃうの? モエルちゃん」
翌日になると朝食を食べながら昨日の褒めあいを再開した。それを聞いていた巴さんは笑っていた。お互い褒めるたびに顔を赤くしていたからだった……朝食を食べ終わるとモエルは立ち上がり、
巴の家から出ることにするといきなり言った。ハジケちゃんは驚いていたが巴さんは驚かなかった。
疑問に思いながらも玄関に向かって歩いていく。それを必死に止めようとするハジケだったがお師匠様の家でゆっくりしたいんだと言うと止めるのをやめた。止めるのは無理だと思ったのだろう。すると巴さんがいつでも来てくれてかまわないからなと言ってくれた。
「はい、分かりました」
モエルは玄関の扉を開けながら言った。
「モ、モエルちゃん!」
「何? ハジケちゃん」
いきなり呼び止められハジケのほうを向く。
「私たちもモエルちゃんのところ遊びに行ってもいいかな?」
不安そうに聞くがモエルは笑って「もちろん!」と笑顔で答えた。
そして背中から炎の翼を出すと羽ばたかせてかつてお師匠様と一緒に暮らしていた家を目指して飛んで行った。
「行っちまったな……」
巴がさびしそうに言う。本当なら此処にずっといて欲しかった。モエルが来てから私は変われた。あいつの決意を見たから冬将軍の城まで行くことができたのだから。でもあいつがそうしたいなら私は止める気はなかった。あのとき私に反論してきた強い決意のようなものを感じたからである。
それにいつでも会えるんだ。大丈夫さ……巴はハジケの肩に手を置き空を見上げた。
そこには熱く燃える太陽があった。
「ただいま。お師匠様」
かつてお師匠様と暮らしてた家に着くと、玄関の扉を開け家の中に入る。懐かしいなぁと思いながらも進むことはしなかった。何故なら久しぶりに修業がしたかったからである。お師匠様と一緒に修業した場所で……。
「ふっ! はあっ! やあっ!」
モエルは外に出て一人修業をする。
私はあのころより強くなりましたよ……お師匠様。だけどまだまだお師匠様には敵いません。あの時、氷牙鬼の技を押し返せたのはお師匠様が力を貸してくれたからですよね。
あの懐かしい感じ……お師匠様しかいませんからね。
モエルは一通り体を動かすと動きを止めて太陽を見上げた。
見ていてくださいお師匠様。私はもっと強くなってあの太陽より熱く、燃え上がって見せますから!
モエルの白炎がかつて師と修業した場所で静かに燃え上がった。




