相手の提案
ガラッ……ガラガラッ
氷牙鬼が攻撃していた場所から瓦礫をどけながらモエルが立ち上がってきたが……禁忌の技を使いパワーアップした攻撃をまともにたくさん受けてしまったのでふらつきながらだった。
「ぐうっ……まだまだあっ」
ふらつきながらも立ち上がってきたモエルに氷牙鬼は驚愕した。禁忌の技でパワーアップした我の攻撃をたくさんくらわせたのに立ち上がってくるとは……だがこれで奴もふらつき始めた。
激痛が体中に走るが、体は動く。我の勝利が近づいてきてはいるが早めに勝負をつけなくては禁忌の技を使った代償で命を落とす危険性が高まっていく。一気に畳み掛けなくては……
そう考えた氷牙鬼はモエルに向かって殴りかかる。
「潰れろーーっ!」
だがモエルは氷牙鬼の拳を手で受け流し、逆にカウンターとして顎にアッパーをくらわせる。
そして怯んだところに炎を吐き体全体に攻撃し、最後に腹に蹴りを入れ氷牙鬼を蹴り飛ばした。
「禁忌の技を使った割には大した事ないんじゃない?」
確かに攻撃は強力だったが思っていたよりかは大した事なかった。もっと動きも速くなって、強力な攻撃をたくさんしてくるのかと思っていたのだが、そんなことはなく一度たくさん攻撃しただけで今みたいに攻撃が通じてしまったのは自分でも予想外だった。
「ぐおううっ……」
蹴り飛ばされた氷牙鬼はよろめきながらも立ち上がる。凍獄コーキュトスを使うのはもっと早めにしておけば確実に勝てていた。今まで受けたダメージと禁忌の技を使ったダメージが積み重なり、パワーアップをしてもイマイチその効果を発揮できないのだ。自分が相手を舐めすぎていたのだ。
「ぐううっ!?」
またもや体中に激痛が走る。駄目だもうこれ以上戦い続けるのは危険だ……そう思った氷牙鬼はモエルに向かって叫ぶ。
「貴様も限界に達しているのだろう? ここは一気にお互いの力を全力でぶつけ合うというのはどうだ。貴様も我の全力を倒してこそと言っていたではないか」
「何っ!?」
いきなりそんな提案を受け入れるわけがない。それに相手の提案だ。信用性がない。
だが限界に達し始めているのは本当だった。このままパワーアップした相手と戦うのはさすがにきつい。信用性はないがもうやるしかないだろう。
「分かった。その提案受け入れるけどまさか裏切るとかしないよね?」
モエルは信用できないが参考までに一応聞いておきたかった。
「くくくくくっ……そんなことするわけがないだろう。我も貴様もほぼ限界だ。だからこんな提案をしたのだぞ? それともこのままだらだら戦い続けるか?」
氷牙鬼にとっては賭けだった。この提案に乗ってくれなければ蓄積されたダメージと禁忌の技を使った代償で体中に走る激痛で体がもたない……長引けばこちらが負けてしまう可能性の方げ高すぎる。この提案に乗ってくれなければ……と氷牙鬼が思っていると、
「いいよ、その提案に乗った」
あっさり乗った。
敵の提案にあっさりと乗るとはな……だがこれで我が勝てるぞ。この勝負もらった!
「だったら我は空中にて技を放つ。貴様は地上から技を放て、全力でな」
「わかった」
モエルはあっさりとその提案すら乗った。おそらく相手が最大限に力を出せるのは空中からだろう。寒鬼たちも空中から氷の塊やら何やらを落とすことが多かったし、現に相手もそういう技で決着をつけてくるだろう……そう思ったモエルは氷牙鬼が空中で止まったのを確認すると力を溜め始める。
それに比べ氷牙鬼は、
(くくくくっ、馬鹿なやつよ。敵である我の提案をあっさりと受け入れるとは思いもせんかったが、我が有利になるということを知っていての事だとしたら侮れな。だが力を溜める必要はない。何故ならさっきまで力を溜めていたからな……貴様はこれで終わりだ)
力を溜める素振りは見せず一気に技を放った。
「アブソリュートゼロ・ブラスト!」
「何っ!?」
モエルに向かっていきなり技を使ってきた氷牙鬼に驚く。まさかさっき攻撃せず避け続けていたのは力を溜めるためだった!?
青く不気味に光り輝きながらモエル目掛けて向かってくる……が避けることはしない。全力をぶつけ合って勝つんだ。モエルも炎のレーザーを放つ。力を溜めきれず氷牙鬼の技を打ち破れるか心配だったが放たなければやられてしまうので仕方なかった。
互いの技はぶつかり合うと、押しては押されを繰り返し始めた。それを見た氷牙鬼は、
「くくくくっ、十分に力を溜め切れなかったようだな。そんな技で我の全力の技を打ち破れるものかっ!」
氷牙鬼はさらに力を込める。禁忌の技の代償で体中に激痛が走っていたがもうそんなことお構いなしに力を込めていく。
「ぐううううっ……」
モエルは少しずつ押され始めていた。力を込めるがどんどん押されていってしまう。
「くくくくっ、そのまま氷漬けになってしまえ」




