禁忌の技
「くらえっ」
氷牙鬼に殴りかかるモエルだったが避けられる。また殴りかかるが避けられる……その繰り返しだった。攻撃するたびにモエルの体力はどんどん削られていった。このままでは勝てない……だったら一気に力を込めた一撃をくらわせて一気に決めてみせる!
モエルと氷牙鬼……考えていることは同じだった。それぐらいどちらも追い詰められていたのだ。
体力の消費もどちらも限界と言えるほどだったがそれでも戦う……何故か?答えは簡単で負けたくない……ただそれだけなのだ。モエルは皆の仇、お師匠様との約束と仇、そして仲間の信頼に答えること。氷牙鬼は天下凍一という野望を達成させるため……お互い背負っているものは違うがそれが体を動かしていることは共通だった。
「はあっ」
モエルの横蹴りを氷牙鬼はかわすがモエルが口から炎を吐いた攻撃は避けきることができず、腕で守ったためくらってしまう。炎を受けた腕は溶けてしまう。やむを得ず冷気を集め修復するが、修復しているところにモエルが踵落としをくらわせる。修復に集中していた氷牙鬼はそれを受けてしまい、地面に向かって落ちていく。
「ぐうっ、くそ……」
体制を立て直し着地するとイラついたように言う。力を溜めて一撃で仕留めようと思っていたのに攻撃を受けてしまいさらにダメージが蓄積されていく。そうすれば負けるのはこっちになる……相手も体力が落ちていっているようだがこちらの方が体力の消耗が多い……このままではこちらが負けてしまう。
だったらあの技を使うしかない……あの禁忌の技を使うしかない。このまま体力切れで負けるよりかはましだ。氷牙鬼は動きを止めた。それを見たモエルはチャンスとばかりに空中から氷牙鬼目掛けて飛びかかろうとしたが、
「!?」
いきなり腕が凍りついたのだ。一体何がと思いながら氷牙鬼のほうを見ると、氷牙鬼を包み込むように冷気が集まり分厚い壁のようになっていたのだ。それはさらに分厚くなっていきモエルに迫ってくる。
この冷気は突破できないと思ったモエルは氷牙鬼から離れ、その様子を見る。
「ぬあああああああああああっ」
雄たけびを上げながら冷気を集めていく氷牙鬼。そして、
「凍獄 コーキュトス!」
そう叫ぶと冷気を全て吸収する。すると体はガチガチと音を立ててパワーアップしていく。腕、足には筋肉のような盛り上がりが出来、体はさらに大きくなっていった。
「い、一体何をしたの!?」
急にパワーアップした氷牙鬼に叫び、問う。
「凍獄 コーキュトス……我は禁忌の技を使ったのだ」
息を荒くしながら答える氷牙鬼。特徴的だった牙はさらに長くなり鋭さを増している。
「禁忌の技?」
今まで禁忌の技なんてものを見たことがないモエルは頭の上に?マークを浮かべながら問いかける。
「くくくくくくっ、これを使ったのは貴様が初めてだぞ? 炎の力を持つ者よ。この技は肉体の限界を無理やり突破し、パワーアップすることが出来る技……だがこれを使えば我の体への負担は計り知れなく使えば死ぬかもしれない……だから使うのが貴様が初めてなのだ」
「限界を無理やりだって? でも死ぬかもしれない技を使うなんてもし私に勝ったとしてもその後のことは考えていないの?」
いくら禁忌の技を使って勝ったとしても死ぬかもしれないんじゃリスクの方が大きすぎる。
「ふん、そんなもの考えてはおらん。もう私はお前を殺すことしか考えていないのだ。そうしなければ天下凍一もできないからな」
もはや死ぬかもしれないというリスクさえも氷牙鬼にとってはどうでもよかった。目の前の相手さえやることさえできればそれで良かったのだ。
「行くぞ! その炎を消し去り、天下凍一を成し遂げるっ!」
地面を蹴り、モエルに向かって飛び掛った。氷牙鬼が勢いをつけるため蹴った地面は割れ、抉れていた。以前より格段に速くなっていた氷牙鬼に反応できずモエルはアッパーを腹に受け、宙に浮いた所を蹴り上げられさらに浮いたところに鉄槌打ちを頭に決められ、地面に落ちていくが氷牙鬼はモエルが地面に落ちる前に降り立ち、モエルが丁度目の前まで落ちてきたところで殴った。
その威力でモエルは吹き飛んでいき城の瓦礫にぶつかり止まった。
モエルは瓦礫をどけて這い出てきたがそこに氷牙鬼はさっきいた場所から勢いをつけこちらに低空飛行してきてモエルの目の前で上昇すると落下しモエルを踏みつける。
「ぐああっ!?」
踏みつけられたモエルは地面にめり込む。だがそれだけでは終わらず氷牙鬼は氷槍ツララを何本も作り上げるとモエルに向かって投げつけまくる。
氷槍ツララが地面に何本も突き刺さっていくたびに土煙のような冷気が起こり、地面が見えなくなる。
「ぐおっ……」
突然体中に激痛が走り攻撃をやめてしまう。禁忌の技を使った代償が出始めていき、氷牙鬼の体を蝕んでいく。




