いざ、初クエスト
夏休み中の、とある日。
ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
「どわー!」
「あははは、参ったねこりゃ」
艾理と彼は、午後の急なゲリラ雷雨に降られ近くの駅ビルに避難した。間に合わずに全身ずぶ濡れになった2人は顔を見合わせて笑う。
「折りたたみ傘有ってもこれじゃ意味ないね」
「雨降らないで下さい用の意味無いお守りだぜ」
「ハンカチタオルじゃ体拭けないよ。このままじゃ、冷房で風邪ひいちゃう」
「ここ、上に100均あるぜ。タオル買っちゃおうぜ」
「名案だね」
艾理と彼は、それぞれフェイスタオルを買い全身を拭きながらエスカレーターに乗った。もう一つ上の階に本屋があるからだ。
「お前、来たこと無いんだ」
「う、うん。ここの駅は学校から遠いだろ?」
「でも同じ街の駅やん。ま、良いけどよ」
「あ、へぇ~。広くて綺麗だねここ」
「2年前に出来たんだっけな」
「そうみたいだね」
2人は読書感想文が既に終わっているため、課題図書コーナーを通り過ぎた。その隣の『夏だ!冒険だ!』コーナーに足を止める。彼が手に取ったのは、近年人気の異世界転生・転移モノの冒険物語であった。
「お前もそういうの読むんだ」
「海外の長編冒険譚はよく読むけど、こういうのは前に数冊読んだだけだね」
「数冊読んでんじゃん」
「⋯⋯これも何かの縁だし、久々に一冊読んでみよっかな」
「良いじゃん。じゃあ俺は攻略本の所行くわ」
「僕ここわかんないからちょっと待ってよ」
「あいあい」
購入した異世界転生モノの本を大事そうに抱えながら、彼は雨上がりの眩しい街中を歩く。艾理は機嫌の良い彼の顔を見て、「はっ」と鼻で笑った。
「なんで笑うんだい?」
「いや、嬉しそうだなって」
「まあね。久々に読むジャンルさ、面白かったらまた君に教えてあげるよ」
「そりゃどうも」
「⋯⋯艾理」
「ん?」
彼は自分より少しだけ背の高い艾理を見上げながら振り向いて、笑顔でこう言った。
「教えてくれて、ありがとう」
◇ ◇ ◇
「⋯⋯冒険、ねぇ」
「手続き簡単だったろ」
「うん。仮冒険証だして何かの書類にサインしたらすぐ済んだ」
「何かの書類?お前、説明ちゃんと聞いてなかっただろ」
「しっかし、良い天気だな~」
「モグリ。こっち見ろモグリ」
「まさに初クエスト日和、だね」
「おい、聞こえてんだろ。おーい」
アバルバントの街の東側城壁門を出て、モグリとルタイスは目的地の森を目指して歩く。ルタイスは地図をモグリに手渡し、カバンから別の紙を取り出した。
「森に入る前にもう一度、今回のクエストを確認しようぜ」
「うん」
「今回の依頼は、アバルバント近隣の森に出たスライムの討伐と薬草の採取。スライムは10匹以上、20匹まで。薬草は指定の種をこの袋いっぱいになるまで」
「はい。スライムの10匹から20匹ってのは何?」
「クエストの種類にもよるが、要するに生態系への影響を鑑みた適切な討伐数って話さ。ギルドの調査員が事前に調べた上で、生態系を保つ為のクエスト依頼って事よ」
「なるほど」
「⋯⋯お前がスライム討伐しに行くとか、馬鹿馬鹿しいよな」
「良いじゃん。初心者冒険者の第一歩としては、満点じゃないか」
「俺としては、思ってたよりお前が乗り気で良かったよ」
「え、まぁね」
ルタイスは自身の胸の茶色のアーマーを叩くと、三叉銛をクルクル回して地面に底を突き立てた。
「俺も久々のモンスター討伐のクエストだしな。初心を思い出すとやら、数匹仕留めてみるぜ」
「薬草採取も教えてね」
「ルタイス先輩に任せろって」
「ルタイス先輩」
「ん~。良い響きだぁ」
「先輩、質問があります」
「なんだぁ?言ってみろぉ?」
「スライムは食べれますか?」
「さ、気を引き締めていこう」
「先輩」
指定の森に入り、2人は地図の印で囲われた場所まで足を進める。
「まずは俺がやるから、よく見とけ」
「はい先輩」
「ん~、俺の背中を見ておけ~」
「先輩。背中に虫付いてます」
「あ、取って」
続く。




