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シオサイの鐘

 数分前。




 モグリは地下室で会った村人らと北の砂浜にコユを探しに来ていた。




「足跡が沢山ある。もうランダスさん達はここを探し切った後みたいだ。他を探そう」

「北の港が近いな、行ってみるか?」

「だが海賊が来てるのもそこだろ。危ないんじゃないか?」

「それはそうだが⋯⋯」


 村人らが話し合っているのを他所に、モグリは砂浜から日の沈み切った海を眺めていた。月明かりが遥か先の水面に揺らめき、冷たい風と波が穏やかに押し寄せる。モグリは足元に視線を落としてしゃがんだ。


「モグリさんどうかしましたか?」

「この波で消えていない深い跡はなんでしょうか。うねうねしてるみたいな」

「これは、海藻の跡か?いや違うなこれは」



 ドパァン⋯⋯



 その時、港の方から叫び声と波が高く上がった大きな音が聞こえ、モグリ達は音の方向に振り向いた。近いとはいえある程度距離のある北の港だが、その巨大な姿は北の砂浜にいるモグリ達にもはっきりと捉える事が出来た。大きく太い白い体に、海賊船の帆より大きなエンペラ。海面からうねうねと生えたように動いている足。


「ク、クラーケンだあ‼︎」

「クラーケン?クラーケンってあの幻の生き物の?」

「幻?いや、珍しいですが深い海に生息する魔物です。ただこんな浅すぎる場所には姿を見せない筈ですよッ」

「とするとあのクラーケンは一体?」

「海賊が連れて来たんでしょう。使役している者が居るのかと。あの、モグリさん」

「なんです」

「真剣な表情してますけど、涎。垂れまくってますよ」

「へ」


 村人がモグリの口元から流れる涎を指差すと、モグリは慌てて口元を袖で拭った。村人らは「げぇ」という顔でモグリを見る。


「ま、さ、かですけどあの魔物美味しそだな~とか思ってないですよね」

「⋯⋯食べたらまずいのか」

「それは味ですか?それとも常識的にですか。」

「ど、どっちも」


 村人らは顔を見合わせて腕を組み、唸りながら考え始めた。


「味は知りませんが、魔物を食べたら体にどんな影響があるかわかりませんし。だいたい、危ないですよあんな大きな魔物。足の一振りでも喰らったらひとたまりもなi」

「なあ、モグリさんもう居ないぞ」

「ないですし居ないですし。は?」


 説明していた村人が顔を見上げると、既にモグリは目の前から消えて砂浜を港に向かって全速力で駆けていた。


「なんなんだあの人。まあ良いや、俺達も港に急ごう。仲間を助けなければ」

「ああ。モグリさんに続け‼︎」

「え、俺らもあれ食べるの?」

「喰わねぇよッ」







 ◇ ◇ ◇




 モグリは視線の先の巨大なイカに向かって夢中で駆けていた。暗く足元も悪い砂浜で、流木や石に躓きながらもただひたすらに。それもこれも全て、海賊とクラーケンから村を守る為。



 ではなく、



「はあ、はあ、はあっ。さっき貰ったスルメじゃ腹は満たされてないな。腹が減って仕方無い。あんな化け物がご馳走に見えてどうしようもなく食らいつきたい。これも、この体のせいか」


 先程のスルドイカより、あの化け物の方が格段に美味そうに見える。全部は食い切れずとも足先を齧れば腹は満たされるだろう。今モグリの頭の中には、クラーケンを倒すだとか海賊を追い返すとか村人の為だとかの考えは皆無だ。ただひたすらに、瞳に映るあの巨大なご馳走を、




 喰らいたいッッ。






 タダダダダダダッ




 ダンッ‼︎




 モグリは砂を強く踏んで飛び上がると港の堤防に着地し、もう一度強く踏み込んで海面から唯一姿を見せるクラーケンの足に飛び掛かった。そして口を大きく開けてクラーケンの足に思い切り噛み付いた。


「この弾力この甘みこの旨みっ。なんだこの味は⁈⁈」


 モグリはクラーケンの足に喰らい付いたまま、その味を噛み締めていた。が、


「美味いけどこれどうやって食べれば良いんだ?デカすぎで噛み切れない」


 足と一緒に段々と海に沈み始めた。



『デスロールって知ってるか?』

『ポニーテールの最上位?』

『違うよ何それ。ワニが使う技でね、獲物に噛み付いたまま体ごと回転して嚙み千切るんだ』

『やば』



 モグリは体を捻って力を溜め、思いっきり体を逆に回転した。モグリが噛み付いている部分のクラーケンの足がブチブチっと音を立てて引き裂かれ、クラーケンの足先が海に落ちる。


「イッカアアアアアアアアア⁈」


 突然足を引き千切られたクラーケンは動転し叫び声を上げながら海から飛び出した。足の断面には、その断面の上で丁度足の肉を飲み込んだモグリが立っている。モグリは満足そうに腹を撫でると海に飛び降り、落ちたクラーケンの足先を掴んだ。


「あれ、重いは重いが思ったより軽いな。いやこの体が力持ちなのか?とりあえずこの足先は持って帰ろう。明日の朝ご飯だな。よっ」


 モグリがクラーケンの足先を堤防に投げると、ドチャアと音を立てながら大きな足が堤防に打ち上がる。そこには、未だにうねうねと動くその足から転がり落ち、気を失ったコユの姿があった。


「コユッ‼︎」


 何が起こったか分からず固まったままの海賊を跳ね除け、ランダスは堤防をよじ登りコユの元へ急ぐ。うねうねと動き続けるクラーケンの足が倒れているコユを今にも押し潰しそうだからである。


「コユッ起きろコユ‼︎くそ、間に合わ」

「あらよっ」


 モグリが海から飛び上がり、堤防に着地するとクラーケンの足を両手でがっしりと掴んだ。


「うわっ動き止まんないな。どうするか」

「モグリ、そのまま足を押さえていろ‼︎」

「あ、ランダスさん」


 ランダスはモグリの足元で倒れていたコユを抱え上げると、すぐ様踵を返して堤防を走り出した。


「今のがコユって娘かな」

「モグリ、すまない感謝するっ。願わくばそのクラーケン全部食べてしまえ」

「色々言いたい事あるけどまず一つ、あなたですよね俺を殺すように命じたの」

「後ろ、危ない‼︎」

「おいコラ」


 モヤモヤしながらも、モグリが一応言われた通り後ろに振り返ると怒り狂ったクラーケンがモグリに向かって足を振るってきていた。


「どわああ⁈お、おりゃあああ‼︎」


 モグリは咄嗟に掴んでいたクラーケンの千切れた足を振り、自身に向けられたクラーケンの足にぶつけて薙ぎ払った。


 ドチーン‼︎‼︎‼︎‼︎


「おっほ」


 モグリは自身の怪力具合に冷や汗を掻きながら口角を上げる。自身の千切られた足で自身の足の攻撃を薙ぎ払われたクラーケンは、その屈辱と目の前の小さな亜人の力に畏怖しながらも「イガアアアッ」と、怒りの声を上げた。海賊や村人達もその異様な光景に唖然とし、ポロボラすら口をあんぐり開けていた。 


「ポ、ポロボラ様、あいつは一体?」

「知るかあんな化け物っ、おい貴様‼︎誰だ‼︎」

「ん、俺か?」


 ポロボラは海賊船の上から剣をモグリに向け、顔を真っ赤にしながら喚く。


「シオサイお抱えの傭兵か⁈ギルドの冒険者か、ま、まさか帝国海軍の」

「俺の名は⋯⋯」


 モグリは顔に親指をビシッと向けて自己紹介を始める。


「俺の名はモグリ。マッコウクジラの亜人らしい。記憶はまだ無い」

「ふざけてんのか?亜人、らしい⁇⁇記憶が無いってなんなんだ‼︎」

「お、れ、が、聞きたいわッ。で?お前は誰だ」

「ぐ、まあそうだな次は俺の番だな。俺は八足剣のオク」


 モグリはポロボラが喋っている途中でクラーケンの足を掴みながら走り出し、ポロボラの乗っている海賊船に向かって堤防から飛び上がった。


「名乗ってる途中だろうがイカれてんのかテメェ⁈」

「知るか。村を襲ってる海賊ってくらいこの状況見れば誰でもわかるわ。沈めッ」

「よせよせよせよs、どわああ⁈⁈」


 モグリは海賊船より高く飛び、クラーケンの足を海賊船の真ん中へ縦一閃に全力で振り下ろす。クラーケンの足が叩き付けられた海賊船は真ん中から盛大に音を立てて崩れ、半分に折れた状態になった。ボコボコと海に沈み始めた船で、ポロボラを始め海賊達は阿鼻叫喚の宴。必死に船にしがみつく者、叫びながら海に落ちる者。モグリは斜めに倒れた帆の柱に着地してその様子を眺めていた。ポロボラは海賊船の柵にしがみ付きながらモグリを見上げる。


「くそっ、化け物か貴様は⁈」

「クラーケン差し向けて良く言う」

「なにおうぅ。お前ら村はどうでも良い、この亜人を今すぐ殺せ‼︎」


 ポロボラがそう命令したが、海賊達はモグリに怯え戦意を失って動かない。ポロボラは動かない部下に苛立ちながら銃を構えて引き金に指を掛けた。


「如何に化け物とは言え亜人は亜人だ。弾丸には抗えまいッ」

「ほい」

「あ」


 モグリはポロボラのいる場所にクラーケンの足を投げ捨てる。ポロボラはクラーケンの足に潰されながら船から滑り落ち、海に落ちた。


「ぎゃああ⁈」

「後で拾うとしよう。さてと⋯⋯」


 モグリが視線を前に移すと、足を何本も海面から出し、顔を真っ赤に怒りながらこちらに突進するクラーケンがいた。足を乱暴に振るい、他2隻の海賊船や堤防、村の船や港の設備を壊し潰しながらモグリに向かって足を勢いよく伸ばしている。


「おっと」


 モグリは帆の柱から堤防に飛び降りてそれを交わすと、続いて堤防に振り下ろされた足を飛び退いて交わした。足が堤防を叩き割り、荒れた波が高々と飛沫上がった。


「このままここでクラーケンの相手をするのはまずいな」


 モグリが村の方に振り返ると、ランダスが頷く。


「モグリ、海賊は俺らで対処する。悪いがクラーケンを村から遠ざけてくれ‼︎」

「わかりました。港にいる村人も危ないし、どこまで戦えるかはわからないがやってみますッ」

「恩に切るっ。して君は、」

「はい?」

「泳げるのか?漂流していただろう君は」

「さあ」

「さ、さあ?」


 困惑するランダスを他所に、モグリは海に向かって堤防を走り出した。崩れた堤防や散らばった船の残骸、そして振り下ろされるクラーケンの足を避けながら顔だけランダスに振り返る。


「だって俺、記憶が無いですから」

「はっ。溺れても俺らが助けてやるさ」


 ランダスはモグリに笑いながら背を向けた。堤防の向こう側の砂浜に居る仲間達がコユを遠くへ運んでいるのを確認し、港に残り海賊と戦っている村人達を見渡す。


「よし皆、ここで海賊を全員とっちめるぞ‼︎そろそろ見回りに行っていた奴らも港に来る頃だ。絶対に村を守るぞ‼︎」

「おーー‼︎‼︎‼︎」


 モグリによる海賊船の破壊とポロボラの撃沈、そしてランダスの鼓舞によりシオサイの村人達は士気が上がり、海賊達はへっぴり腰になった。


「人間を合法的に狩れるんだ楽しめお前らあぁ‼︎」

「うおーーー‼︎‼︎‼︎」






 ◇ ◇ ◇





 モグリは堤防の端まで辿り着くと、助走を付けて海に飛び込んだ。


 泳げるか否か。



 艾理自身は泳ぎは上手いわけでは無かった。溺れ無いバタ足で25mが限界。



 水中で息を止めるのも、得意では無いが出来ると言った具合だ。マッコウクジラに憧れはしたが、深く潜れもせず。だが、水に顔を付けて息が苦しくなるまで、プールで浮かんで揺蕩うのは好きだった。


 静かで青い光が差し込む世界で、ただただ身を任せ揺られる。



 誰にも邪魔されずに。











 で、




 この体は泳げるのか、という問題。まず漂流していたのは転生されたのが北の砂浜で、そう捉えられたからだろう。実際に漂流していた訳では無いと考える。


 そして先程、一瞬だが噛み千切ったクラーケンの足と共に海に落ち、堤防に上がった際。



 クラーケンの足を掴んだまま堤防に上がれた怪力もそうだが、そもそもその堤防に上がった方法。あの時モグリはほぼ無意識に体を動かしていたが、水中で足を軽く屈伸しただけでクラーケンの足を掴んだまま海面から堤防まで飛び上がったのだ。


 クラーケンの足にそこまでの栄養があったか、もしくはクジラ亜人の底力か。




 だがモグリにはその時、一つだけ確信した感覚があった。




 水がモグリの動きを助けた。






 飛び上がる動きを助力した、というより体に触れている海水から押されるような感覚がモグリにあった。




 そこから導かれる「泳げるのか」という問いに対しての答えは、






 泳げるかは知らんけど多分溺れることは無いし、まぁ、思ってるよりは泳げるんじゃね?



 である。







 モグリは海に飛び込む直前、思いっきり息を吸い込んだ。夜の海風と潮の濃い匂いが鼻腔に充満した。人間の体なら有り得ない程の大海原臭に咽せているだろうが、今のモグリには安心するような懐かしさを感じる匂いに感じる。マッコウクジラの亜人なら、長時間潜水出来るはずだ。このまま沖合に泳いでクラーケンをシオサイ島から引き離し、先程の要領で適当に食い散らかせば撃退出来るだろう。


 充分に息を吸い込み、頭を海中に沈めると手足を掻いて更に潜った。しかしここでモグリに一つ誤算が生まれる。


「暗い」


 夜の海中は何も見えなかった。何の痛みも無く目を開けることは可能だが、にしても一切見えない。海の中だ。岩場や他に生き物が居ないなら何も見えないだろうが、それにしても何も見えない。海洋恐怖症の人ならここで気絶する程の、暗闇と波の音と潮の流れのみがモグリに情報としてなだれ込む。



 ドガッ



「げぶっ⁈」


 その時、モグリの体にクラーケンの足が激突した。一発目を境に、クラーケンは次々に足をモグリに向けて放ち、打ち込み叩き薙ぎ払う。モグリは頭を下げて腕をを交差させ、全身を丸く屈んでクラーケンの猛攻を耐える。クラーケンにはモグリの姿がはっきり見えている、もしくは場所が把握出来ているのだろう。モグリの体を的確に叩きのめす。


「ぐっ、何も見えないんじゃ避けようが無い。それにこうも打たれ続けたら方向感覚も狂ってシオサイ島と沖合の方向もわからなくなる。どうにかして脱出しなければ。な、何より」


 モグリの体中に切り傷や打撲跡が浮かび始め、口からも血が流れ出た。


「めちゃくちゃ痛いな。海中だとこうも強いのか、流石は海の怪物クラーケン」


 このままではイカにやられるマッコウクジラという食物連鎖逆転現象が起きてしまう。何か突破口はないか、モグリは必死に記憶を辿る。



 確か彼はあの時⋯⋯



 ◇ ◇ ◇



「マッコウクジラの主食はイカや魚。特に深海に生息するイカだね。あのダイオウイカさえ、マッコウクジラは食べてしまうんだ」

「すげぇ。でもよ、深海って真っ暗だろ。どうやって餌見つけんだ?」

「良い質問だね。音波によるソナー探知だよ。これはマッコウクジラだけじゃなく、他にも使える生物は居るんだけど。特にマッコウクジラのは強力で頭部にある脳油器官で音波を増幅して発射出来るんだ。周囲の探知に仲間との通信、超音波を餌に当てて弱らせたり色々出来るらしい」

「すげぇ。んで、脳油器官って何?」

「うん。脳油器官ってのはね、マッコウクジラが深海に潜れる理由にも繋がるんだけど⋯⋯」



 ◇ ◇ ◇





 モグリはハッと目を開いた。


「超音波だっ」


 モグリはクラーケンの足の連打にめった打ちにされながらも、突破口を思い付き笑みを浮かべた。意識を頭部に集中し、力を込める。


「やり方はわからないが、使える筈だ。まずは探知ッ。行くぞ、音波探知‼︎‼︎‼︎」



 ⋯⋯。



「音波探知‼︎」



 ⋯⋯。



「おん、音波探知‼︎」



 ⋯⋯。




「ソナー探知‼︎」




 ⋯⋯。





「生得能力じゃないのかーい」


 音波も何も出なかった。愕然とし海中で浮かぶモグリを、クラーケンは伸ばした足で包み込んで締め付けた。そのまま締め上げながら他の足も絡めて更に圧力を掛ける。モグリは外側に力を向けて、クラーケンの締め上げになんとか抗うが単純な体格差だろうか。段々と押し合いに負けて圧迫され始めた。


「ぐぐっ、こ、ここで死ぬのか。まだ浅い海に潜れただけだ、マッコウクジラっぽい事、出来て、な⋯⋯」








 ◇ ◇ ◇





 同時刻、村役場にて。



 役場の見張り台から望遠鏡で港の様子を見張っていた村人が、村長のいる部屋に駆け込んだ。


「村長ッ、マッコウクジラの亜人が海賊船を一隻沈ませてクラーケンを海の方に逃しました。そしてランダスを先頭に村人達で海賊を港に堰き止めてます‼︎」

「ん、情報が多いな。だがそれなら良かった。まだ村には海賊は押し寄せて無いのだな。皆、海賊には恨みがあるからのう。存分に暴れとるんじゃろ。だが皆逞しいとは言え相手は海賊じゃ。これ以上、酷い事にならなければ良いが」


 村長が深呼吸し、窓の外から聞こえる喧騒に耳を澄ませた。そして村人の方を力強い瞳で見つめた。


「シオサイの鐘を鳴らせ」

「な、シオサイの鐘を⁈」

「ああ。あの鐘の音を聞けば、村の皆も活気付くじゃろうて。盛大に鳴らしてくれと、伝えてくれ」

「わかりました。急ぐぞ、あの場所に‼︎」


 役場から数名の村人が飛び出し、やがて山の方に消えた。








 ◇ ◇ ◇




 港にて。




「ランダスさんっ、そろそろ押されるっすよ。流石に命のやり取りに躊躇しない奴らに俺達じゃ部が悪いッ。怪我人も増えた」

「言い訳は死んでからだ。何がなんでも村を守るんだ。死守だ。死守だッ‼︎‼︎」 


 体力はあるが戦闘経験など無い村人とは違い、海賊は薄汚いながらもその点には有利だった。最初は気後れしていた海賊に優勢だった村人も、次第に押され始め港から村の住宅の方へ引き下がっていた。


「げへへ。たかが漁師がイキがるからだ。野郎ども、ポロボラ兄貴の弔い合戦だ村を滅ぼせえ‼︎‼︎」


 士気が戻ってきた海賊に気圧される村人達。疲労が蓄積し停滞する彼らの耳に、




 クオーーーーーン



 コオーーーーーン



 

 寂しいような虚しいような、それでいて優しい音が届いた。



 突然村中に響き渡る不思議な音に、海賊は困惑し、対に村人達は顔を上げた。


「ランダスさん、この音って⋯⋯」


 ランダスはニィッと口角を上げ、銛を掲げる。


「ああ。シオサイの鐘だ。我々の音だ。勝つぞ。海の響きだ、勝つぞ‼︎」






 そしてその鐘の音は、






 海中のモグリにも届いた。







 続く。

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