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異世界真っ向!〜クジラ亜人、荒波転生録〜  作者: 牡丹鍋
第3章 アバルバント編
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シオサイからの要求

「今までシオサイの村からの救援要請を無視していた件に付いての説明責任と、それによる村への海賊による被害の賠償金をアバルバントに請求します」

「⋯⋯アバルバントに、ですか」


 ルタイスが突き出した条件。これは救援要請を無視していた理由を話さない、もしくは濁して伝えた場合でも、アバルバントは損害賠償金をシオサイの村に支払う事になる。


「それは、半ば我々への脅迫と見ても宜しいですか」

「ああ」


 ルタイスが答える前に、ランダスがアサバへ返事をした。


「これは俺らシオサイの村からのアバルバントへの直接の提訴でもある。アバルバントは領地内である我々からの救援要請を無視した。これは明らかなアバルバントの防衛的活動への責任放棄だ。それについても、なんだか軍からの人手も少なかった事も気になるが。なんにせよ、今の俺達には街と正式な裁判をする金も暇も無い。説明と賠償金を受けた以上は、それ以上、こちらからも詮索はしない」

「親父の言う通り。実際、海賊は追い出したし今はアバルバント軍から巡回警備をしてもらってるしな」

「ああ。この賠償金については、一度村に持ち帰って改めてそちらに提示する。どうだ?」

「⋯⋯なるほど」


 アサバは心の中で盛大に舌打ちをする。


 これを断る事はアバルバント側には出来ない。


 確かに救援要請を長期に渡り無碍にした事実、そこに今は話せない事情がある事実。


 そして、シオサイの村への説明責任と賠償金支払いの正当性も明らか。





 何より、モグリの件についての提案を差し出した以上、こちらとしてもルタイスや村からの提案を飲まなければならない。




 そして、一番の理由。


 この提案を退けば、モグリが遠回りにでもアバルバント側と敵対関係になる可能性があるからだ。


 ルタイスは現時点でモグリの手綱を引ける唯一の存在。



 そんな彼らからの要求をこれ以上無碍にする事は、アバルバントへの損害になり得る。



「承知いたしました。詳細に着いて明日、アバルバント軍も交えて基地にて話し合いましょう。副隊長、予め隊長に話を通して置いて下さい」

「承知した」

「私も本件を最優先事項とし、午後にでも領主様や司法に話を通しておきます。宜しいですか、ルタイス殿」

「はいアサバさん。俺も、モグリの面倒を見続けますよ」

「ご協力感謝します。本日は以上になります。⋯⋯ガルバンダーさん」


 アサバに呼ばれたガルバンダーは、葉巻を灰皿に押し付け火を消した。腕を組み、順々に会議室の面々を見渡した。


「濃度の濃い話し合いだったな。わかっちゃいるだろうが、この話は内々でのみで共有し、他言無用で頼む。ランダス、ルタイス、色々すまねぇが」

「くどい」

「そう言うなランダス。色々すまねぇが、宜しく頼むよ。個人的なお詫びと言っちゃなんだが、ルタイスとモグリには後で良いもんやるよ。ランダスには、あ、今夜は奢ってやるよ」

「毎度奢れアホンダラ。立場をわきまえろ馬鹿が」

「は?お前の方が飲むだろ」

「あ?お前の方が食うだろ」


 アサバが咳払いし、ランダスとガルバンダーのイチャイチャの予兆を掻き消した。


「ここは会議室です。私語は外でして下さい。それに珍しく真面目な発言をしていたので口を挟みませんでしたが、葉巻も喫煙所や建物の外でしてください。何度目ですか?」

「2、3回?」

「156回目です。貴方は組織のトップとしてもっと規範となる⋯⋯」

「なんか今回でより思ったが、お前本当友人居なそうだよな」

「関係ありません」

「は?あったろ、今回の件には友人の有無」


 アサバは眼鏡を指でくいっとあげると、アバルバント軍の副隊長らに頭を下げてギルド職員に彼らの退席の先導を指示した。副隊長らが会議室を後にすると、ガルバンダーを見下しながら再度手を後ろで組んだ。


「⋯⋯友人は居ます」

「嘘付けお前」

「失礼ですね。プライバシーの侵害です。ギルド本部の上層部にパワーハラスメント案件として報告します」

「かっーー‼︎たまんねぇなおい、聞いたか2人共。こいつ本当」

「ランダス殿、また後程。ルタイス殿はお疲れ様でした。職員にお声がけ下さい。モグリ殿の所までご案内致します。お2人方、本日はお疲れ様でした」

「おう」

「⋯⋯お疲れ様でした」


 会議室を後にする2人に陽気に手を振るガルバンダーにアサバはギロッ、と見下ろしながら睨みを効かせた。


「居ますから友人。余計なお世話です」

「本当か?」

「ええ」

「規律くんと合理ちゃんか?がははは」

「貴方には今から資料さんと手続きさんと仲良くして頂きます」

「あいや、そいつらとはもう仲違いしててだな」

「⋯⋯冗談はさておき」

「ん、ああ。さっきのシオサイからの要求の件か?」


 アサバは空いた席に腰掛けると、深い溜息を吐いた。


「飲む他、ありませんでした」

「しゃあないわな。珍しく、あれはお前も一本取られたな」

「ええ。ですがモグリ殿を繋ぎ止めるにはそうする他、選択肢がありませんでした」

「まぁ、各所に掛け合う時には俺も同席するよ」

「領主様の時はお願いします。何故か貴方は領主様に気に入られていますから」

「接待無しの飲み友だからな」

「その飲み会を、接待として今回は使わせて頂きます」

「あー、嫌な奴」

「恐れ入ります。で、今後の予定ですが⋯⋯」






 続く。

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