彼の者達の真意②
「グランド・ハイオークと戦闘した後、キングクラーケンと連戦したという事実も驚異的です。彼に海洋生物への特効があるとしても、グランド・ハイオークと地上で正面から渡り合った事実は変わりません。ハイオークを軽く叩いて壁に打ちつけた粘土のようにして片付けた事も、冒険者ならA級上位以上の実力です」
「お前の友達、なんなんだ?」
ガルバンダーが葉巻を指で叩き灰を落としながら、テーブルに肘を付いてルタイスに笑みを浮かべる。
「SS、確かに規格外だが改めてあいつのした事考えると大袈裟な評価では無いんだよな⋯⋯」
「最低でもSランク以上は確定かと。キングクラーケン以上の怪力であれば、充分に街は蹂躙されます。勿論、対処はしますが」
「要するにだな。この会議で何回要するにって言った?ま、要するにだな、俺達としては変にモグリを刺激したく無いんだよ」
「なるほど。失礼な事言いますが⋯⋯、仮冒険者登録がすんなり行ったのって」
「ああ。村に居る時から話し合わせてたのも、受付ですんなり行ったのも、ごめんな?別にお前らを騙していた訳では無いのだが、俺は個人的にはめちゃくちゃモグリが気に入ってんだが、いつか一緒に飯にでも行きたいが⋯⋯」
ガルバンダーは葉巻の煙を全て吐き出すと、見た事無い程の真剣な表情をランダスとルタイスに向けた。
「ギルドマスターとしては、あいつを野放しには出来ん。これは俺の責務だ」
「お前⋯⋯」
ランダスがガルバンダーを指差す。
「今のはアサバの台本か?」
「あそうそう特に最後のセリフがって、今のが冗談に聞こえたか?」
「いんや?まだ島にいる時にお前から仮冒険者登録だのの事務的な話が出た時点で怪しいとは踏んでたんだよ。バカな倅とは違って、俺はな」
「うっせぇ、俺だって薄々気付いてはいたさ。だがモグリを仮登録させんのはメリットが多かったからよ⋯⋯」
ガルバンダーがルタイスに申し訳無さそうに眉を顰めた。
「ごめんなルタイス。なんかモグリを売った様な感じになっちまって」
「気にすんなよ。あんたにはあんたの立場と役割があるのは重々承知してら。アサバさんの入れ知恵があったとは言え」
「⋯⋯私が入れ知恵?」
「アッ、スイマセン」
「勿論しましたよ。ただ語弊があります、後押しです」
ルタイスはアサバからの圧で掻いた冷や汗を拭うと、姿勢を正した。
「別に今更、この件であんたらにどうこう噛み付く気はないです。ただ、それと俺がモグリのダチである事は両立させますよ、そこは譲れない」
「⋯⋯まぁ、良いでしょう。ルタイス殿の証言を我々が聞き入れる以上、その非合理的な二律背反には目を瞑ります」
「譲れない上でモグリをここに呼ばない理由を聞いた上で。ギルマス、アサバさん」
「おう?」
「はい、なんでしょう」
ルタイスは背筋を伸ばし、真っ直ぐな視線をガルバンダーとアサバに向ける。
「アバルバントは、モグリをどうするつもりですか?」
アサバは数秒した後、こう答えた。
「別にどうもしません。彼を仮冒険者の1人として支えていきます」
「ほえ⋯⋯⁇」
ルタイスは目を丸くして固まった。アサバは間髪入れずに話を始める。
「彼が変な気起こさず、冒険者として普通に働いて貰う分には何も問題ございません」
「じゃあ今までのなんだったんですか。⋯⋯いや、なるほど。そういう事ですか」
「どうされました?」
「つまるとこ、俺はモグリの監視役って訳ですか」
「仰る通りです」
「ルタイス殿には、モグリ殿の仮冒険者保証人、代理ですが。保証人としてモグリ殿の依頼には毎時同行して頂きます。それ以外でも、ルタイス殿はモグリ殿の日頃の生活に同行して頂き、常識や生活の術をご教示しながら⋯⋯」
「早い話が、怪しい動きがあったら逐一報告しろって話ですね?」
「早い話がそうです。ですから、ルタイス殿にはこれからも変わらずモグリ殿と接して頂いて結構です。寧ろそれを希望します」
「⋯⋯言われんでも」
「ギルドや街としても、特段接触するつもりはございません。如何でしょうか」
アサバ、いやアバルバント側からの提案を聞きしばらくルタイスは考え込んだ。ランダスを見上げると、ランダスは黙って頷いた。
「お前が決めろ」
「ああ」
ルタイスはアバルバント勢に向き直り、拳をテーブルに軽く叩き付けた。
「わかりました。何かあれば、ギルドに報告します。けれどそちらからモグリに対して何か制度的に不利になるような働きをしてきたら」
「しません。これは今、私の口から断言します。ここまで貴方に内情を打ち明けた我々が、そのような制裁をする合理性がありません」
「⋯⋯でしょうね。が、受ける上でこちらからも条件があります」
「宜しいでしょう。まずは仰って下さい」
続く。




