縁が出来たな
「あ?クラーケンとキングクラーケンを?嘘に決まってんだろ。こんな俺より小さな」
「その話、本当だぞ」
「あ?」
大食堂の別のテーブルに座っていた10人程の冒険者が立ち上がり、ルタイスの所まで歩いてくると彼の横に並ぶ。
「今度は誰だテメェら」
「俺達はこの坊主の依頼を受けて海賊島で彼とあのクジラの兄ちゃんと一緒に戦った冒険者だ」
「そうだ。キングクラーケンを倒したのも、船の上でしかと見届けている。正式な依頼完了書類にもガルバンダーさん直々にそう書かれてる筈だぜ?」
「な、ぐぐっ⋯⋯」
その冒険者達が、豪鉄の剣に躙り寄る。
「黙って聞いてれば俺らの英雄を好き勝手に言いやがってテメェら」
「俺はB級だからな。とことん睨ませてもらうぜ?豪鉄ちゃんよぉ」
「このご時世、見慣れない獣人に警戒すんのはごもっともだがよ。にしても酔ってたにしろ、礼儀ってのがあんだろうが。なぁ?」
「俺の娘婿はイルカの半亜人だが、どうなんだよああ?何か言ってみろ。いや、ともかく、」
「ああ。彼に謝れ」
豪鉄の剣達は「ぐぬぬ⋯⋯」と唸ったのち、テーブルに金貨を叩き付ける。そして苛立ちを見せつつ足早に大食堂の周りに集まっていた人混みを掻き分けながら、
「覚えていやがれ‼︎‼︎」
と吐き捨て、ギルドを抜け出した。
それを黙って見送ったランダスが
「お手本みたいな捨て台詞だなぁ」
と一言。それを皮切りにギルドの喧騒が戻り始める。ルタイスが、
「いやぁ、助かったぜお前ら」
と口にした瞬間、ルタイスに味方した冒険者達が次々にルタイスをどついたり蹴飛ばしたりし始めた。モグリ、ルタイスにも他の仲間の冒険者が集まり始める。
「いやぁ助かったぜ、じゃねぇんだよッ」
「あははは、痛い痛い、悪かったってば‼︎」
「何してんだルタイス、テメェ‼︎急に騒ぎを作りやがってこの野郎‼︎面白い奴め‼︎」
「痛たたたっ、た、助かったよお前らッ。まだこの街に居たのか」
「当たり前だろ、まだ俺達、お前に酒奢って貰ってないしな」
「げ」
「先に街を出た仲間たちの分も、今の分も合算して奢って貰わねぇとな」
「やべやべ」
モグリとランダスも、仲間の冒険者に肩を組まれている。
「また世話になったな」
「良いって事でっさあ。俺達も頭に来たからな‼︎にしても、ランダスさん達、思ってたより街に来るのが早かったっすね」
「ああ。早めにこれを作って置きたかったんだ。モグリ、こいつらに見せてやれ」
「はい」
モグリが出来たてほやほやの仮冒険者証を両手で持って見せると、ルタイスを羽交い締めにしていた冒険者達も振り返った。
「おお‼︎仮冒険者証か。こりゃめでたいな」
「モグリさんも晴れて俺達の仲間入りだな」
「俺らモグリさんの先輩か」
「まぁ、モグリさんならあっちゅうまにSランクに行きそうだけどな」
「違いねぇわな」
豪快に笑い始める冒険者らとルタイスに、モグリは軽く頭を下げた。
「なんかすいません、ありがとうございます」
「あ?俺が勝手に頭に来ただけだ。俺がキレなきゃ、親父がやってた」
モグリがランダスを見ると、ランダスは頷いていた。
「どっちにしろ、後でガルバンダーにはチクるがな」
「そうだぜモグリさん、俺達がいる限り、好き勝手には言わせねぇよ」
「んだんだ。一度共に死線を潜れば、それ即ち仲間なり」
「⋯⋯モグリが死線と思ってたかは別だがな」
「ん、キングクラーケン食べてたしな」
「うーん」
ランダスが愛想笑いを返すモグリの肩に手を置いた。
「モグリ。これもお前が自分で手に入れた力だ。元冒険者の端くれ、先輩として言っておく。こういう縁は取っておいて損は無い。俺とガルバンダーみたいにな」
「⋯⋯はい」
返事をしたのち、目の前でまだはしゃいでいるルタイスと冒険者達を眺めていたモグリは、
「はいっ」
と改めてはっきりと返事を口にした。ランダスはそのモグリの返事に微笑むと同時に、仲間の冒険者に袈裟固めを決められているルタイスを何処か自慢げな表情で見つめる。
「しかしまぁ、あいつ。ははっ、後先考えずにダチの為に突っ込んで行きやがって。バカ息子めが」
続く。




