いざアバルバントへ
4人が港に着くと、ギルドの船の乗り場に村人が集まっていた。ガルバンダーが手を振り、ランダスが早く来いと手招きしている。
「あ、モグリさんとルタイスだ‼︎」
「おーいモグリさーん‼︎」
「ルタイスは早く帰れー」
早速、仲の良い村人達と取っ組み合いを始めたルタイスを無視してモグリは乗り場へと向かう。モグリに声を掛けたり、手を握ってくる村人に頭を下げたり手を振り返す。
「モグリさん、本当、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。お世話になりました」
「これからもルタイスをお願いします」
「はい。逆では?」
「またいつでも遊びに来て下さいね」
「はい、またバーベキューしましょう」
村人達とモグリの様子を少し後ろから眺めていた村長が、モグリにグーサインを向けた。そして口パクで、
(色々、頑張れ⭐︎)
とニヤけ顔で伝えてきた。モグリは村長の裏腹を汲み取り、白目を剥いて戯けた後に鼻で笑って返す。
海神伝説やらギルドやら、まあ、好きなように色々頑張ってみろって事じゃ⭐︎
って、感じだろう。
村長とはもう何度も話し合った。別れの言葉も伝えてある。
モグリが礼を伝えようと頭を下げると、村長が頷いて応えた。
「よし、出航だ‼︎」
ガルバンダーがそう声を上げると、船が動き始めた。徐々に離れ始める船の上のモグリやルタイスに村人達が声を掛け、手を振る。村長とミエラ、コユも手を振り、モグリやルタイスも手を振り返す。
「またなー‼︎モグリさーん、ルタイスー‼︎」
「おうよお前ら、村を頼n」
「お前が偉そうな事言うなッ」
「言わせろやッ」
ランダスが仲間の漁師達に、
「村の事や親父の補佐、しばらく頼むぞ」
と伝えると、仲間達は「任せろ‼︎」と口々に腕を振り上げる。
「じゃあなー‼︎」
「またな~」
「またね~モグリ様~‼︎」
またね、か。
じゃあ、またね⋯⋯
胸につっかえるこの感じ。
軽々しくもう言えないと、思っていた。
けど、
この村なら、
この人達なら。
モグリは腕を挙げて振り返した。
「皆さん、また‼︎お元気でっ」
と声を張り上げた。見送りに来ていた村人を始め、ルタイスやランダス、ガルバンダーも驚いて固まった。が、コユが飛び跳ねてはしゃぎ出した。
「うん‼︎またねモグリ様~‼︎」
そのコユに続き、他の村人達も続いてモグリに別れの言葉を掛け始めた。ルタイスはそんなモグリの顔を横目に見て笑う。
「⋯⋯ なんだよルタイス」
「モグリ、良い顔してるぜ」
「そうか」
「ああ、そうだ」
「そう、かもな。なんかお別れなのに嫌な気分じゃないから、不思議だ。なんでだろう」
「さぁな。ま、いずれ分かるさ」
「かっこつけてる?」
「かっこつけた。お前こそ、また儚い系男子になってたぜ」
「はっ、確かに」
「はははっ」
朝の日差しが海に反射する中で、2人は笑い合いながら、村人の姿が見えなくなるまで手を振っていた。
船は帆の角度を変え、風を受けて更に加速して海の上を走り出す。カモメの群れが船の上を飛び、モグリは空を見上げた。ルタイスが果物を齧りながら顎で海の向こうを指した。
「あのカモメが向かった先がアバルバントだぜ」
「まだ見えないね」
「今出たばっかだろ。まぁ、お前が泳げばすぐに着くんだろうがな」
「多分迷っちゃうから」
「で、今の気分はどうだ?」
「ん?船酔いしてないよ」
「じゃなくて」
「あ、ああ⋯⋯ 」
憧れた海の旅。
思っていた流れとは全く違うが、まあ、良いか。
潮風の向こう側、まだまだ知らない世界が広がっているんだろう。果てしない世界が。
煌めく海面と澄み切った青空を眺めながら、モグリは凛々しい顔付きになる。
「悪くないね」
「お前もかっこつけてんじゃねぇか」
「ルタイス程じゃないけど」
「うるせぇよ」
「ははっ」
「あ、そうだ。街に着いてからの流れをギルマスと親父と話さないとなんだわ。船の中来てくれ」
「うん。わかった」
「りんごいる?」
「ん、ちょうだい」
「あいよ」
モグリはルタイスの後に続いて、船の中に入っていった。
船はモグリ達を乗せ、アバルバントへ。
続く。




