亜人と神の狭間③
『何かお主には人には言えない、もしくは自分でも知らない奥底に眠る何かがあるのかも知れん。』
⋯⋯。
亜人と神の狭間。
というより、モグリにとってこの言葉は転生者である事を隠している事を指しているような気がした。
村長なら、もしモグリが転生者だと気付いても余計な事は言ってこないだろう。
その上での言葉だったら?
いや、そもそもこの世界には転生者という理論はあるのだろうか。
「モグリ。最後に一つ、聞いて良いかの?」
村長が立ち上がりながらそうモグリに尋ねると、モグリも立ち上がり尻を叩きながら頷いた。
「なんですか?」
「ルタイスとは、どうじゃ?」
「どう、とは」
「急に引き合わせてしもうたじゃろ?お主の事じゃから、内心どう思っとるのかなと」
モグリが心配、というより孫が心配なのだろう。村長には何故か買われているモグリだが、やはり実の孫が得体の知れないクジラ人間の側に居るというのは⋯⋯。
いや、この際だ。
「仲良くさせて貰ってますよ」
「はっ。気を遣って、お主らしくない」
「少なくともコユよりは接しやすいです。あの子どうにかなりません?」
「はははっ。あの子はお転婆過ぎてワシには手が付けられんわ」
「ミエラさんしか無理か⋯⋯」
村長は鐘を見ながら、優しく微笑む。
「ワシは生い先短い。ルタイスとコユの未来までは見てられんじゃろう。お主の行く末もじゃ、モグリ」
「⋯⋯」
「神だ跡取りだなんだと言われようが、どう生きるか。何になるかは結局、自分次第よ。だがな、そうは言ってもしがらみや困難は付き纏う。運命なんて言葉は、それらを綺麗に言い換えただけじゃ。だからの、モグリ」
「はい」
「人生という荒波を乗り越えてみせよ。お主らにはその力があると、今回の件でワシは確信したんじゃ」
「オジイさん⋯⋯」
「あ、カジイね。お爺さん呼びしただけじゃからそれ」
「運命、ですか」
「前は使命だとお主に言ったかの。どちらにせよ厄介な奴じゃよ、そいつは。んで、厄介な奴には仲間と立ち向かうのが一番じゃ。マッコウクジラだって、群れで行動するじゃろ?」
「成熟したオスは、単独で行動する筈です」
「成熟したオスになるまでは、仲間と共に強くなれと言いたいんじゃワシは。海で暮らすのは、その後でも良かろ?」
「⋯⋯」
「⋯⋯え、駄目?」
波が洞窟に反響する音のみが耳に入る。
「いや、あの、言いたい事は伝わりましたから」
「あ、うん。それなら良かったんじゃ。うんうん」
「カジイ村長」
「ん?なんじゃ」
「お世話になりました」
「ほう⋯⋯。いやいや、こちらこそじゃ」
2人は固い握手を交わし、頷き合った。
「頑張れよ、モグリ」
「村長もどうかお元気で」
「あ、そうだ。最後にこれだけ」
「へ?」
「コユはまだ10歳じゃから、その、」
「うるさいな」
「あっひゃっひゃっ、ひゃ~」
続く。




