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異世界真っ向!〜クジラ亜人、荒波転生録〜  作者: 牡丹鍋
第2章 海賊島の戦い編
23/64

激闘 キングクラーケン③

「なあ知ってるかい。音は空中より個体、そして水中の順で速く伝わるんだよ。水中を伝わる音の速さは約1,500m/秒で、空気中を伝わる音の速さ約340m/秒。約4.4倍の差だよ」

「俺、別に水中で音聞かないから必要ないよそれ」

「いやいや。なんでこれを艾理に話したかというとね。前に君は生まれ変わったら、マッコウクジラになりたいって言っていただろ?」

「ん、まあ。適当に言っただけだけど」

「その時に役立つかも知れないからね」

「生まれ変わったとして、今の記憶あんのかな」

「ん?生まれ変わりには前向き?」

「いや別にそんなんじゃ⋯⋯」








「マッコウクジラに限った話じゃないんだけど、クジラとかイルカは音波で仲間とのコミュニケーションを取るんだ。クイック音とホイッスル音で言うと、ホイッスル音の方ね」

「はい?」

「まあこれは種にもよるし、海の状況次第なんだけど。ホイッスル音は数kmから数十kmまで届くとされているんだ。凄いよね」

「あはあ。それで水中の方が音が伝わりやすいって話ね」

「そう。それに、音を伝える能力も、受け取る能力もある。それが凄いよね。海の何処にいても、仲間の声が聞こえてくるんじゃないかな」

「うるさいかもな、それ」

「あはは。確かに。でもさ⋯⋯」

「ん?」






「きっと、淋しくはないよね」






 ◇ ◇ ◇









 そんな顔すんなよ。


 俺と喋ってる最中なのに、そんな、




 孤独な顔、すんなよ。







 ⋯⋯って言えなかったのが、俺の弱さか。








「だからさ艾理」

「え、あ、ああ」

「君がもし、生まれ変わってクジラになったら」








「耳を澄ますんだ」



 きっと


 君が独りで無いと







 誰かが教えてくれるから。












 ◇ ◇ ◇






 薄れて



 沈みゆく意識の中。






 コォン⋯⋯





 (⋯⋯はは。まさか君は、俺の来世まで知っていたのかい)



 クォン⋯⋯



 (この展開も知っていたのかな)





 クオーーーーーン






 コオーーーーーン





 (いや。まさか南の島のおじいちゃん1人が健気に鐘を鳴らしてくれる事で、俺を助けてくれる展開までは読めてないよな)




 クオーーーーーン






 コオーーーーーン






 (村長。心配かけて済まない)





 モグリはシオサイの鐘の音を頭で反芻させる。前の戦いの時よりも入念に、幾重にも繰り返す。


 次第にモグリの体に力が漲る。





 クオーーーーーン






 コオーーーーーン





「ぬぐっ、がっ、うぬぬぬ」


 モグリが全身に力を込めると、僅かにキングクラーケンの束縛が緩む。しかし、クラーケンの時のようには容易くいかない。


 (流石に簡単には引き裂けない。やっぱり、音波攻撃しかないな)


 シオサイの鐘の音を頭で反芻させて増幅し、相手へ放出する音波攻撃。


 (これもクラーケンの時の威力じゃ足りないんだろう。なあ、キングクラーケンッ)

「イガガガガガッ‼︎」


 あの時は音波攻撃でクラーケンを仕留められたが、キングクラーケンはそうはいかないだろう。だが、今はそれで良い。


 なんせ今は、腹が減っているのだから。


 キングクラーケンの体がどの向きにあるのかはわからないが、ひとまず⋯⋯



「ゲソを頂くっ」



 カチカチカチッ




 カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチッッッ




 うんざりする程反芻させ、音波の感覚を体に染み込ませた。同時に音波の威力を増幅。


 島に当たったら申し訳ないと思いつつ、満を持しての、





 音波攻撃。







 ガチッ‼︎





 グオオオオオオオオオオンッッ‼︎‼︎‼︎





「イギャアア⁈」


 モグリを拘束していたキングクラーケンの触手が音波攻撃により弾け飛び、周囲の海中に四散する。キングクラーケン自体も音波攻撃を喰らい、墨と血を吐きながらモグリから弾かれるように引き下がった。


「良かった。島とは反対の方向に発射出来たみたいだ」


 モグリは自身の周りを漂うキングクラーケンの肉片を掴む。


「小さくなって食べやすい。あーーん」


 細かくなったキングクラーケンの肉片に喰らい付いた。


 念願のキングクラーケンのお味は⋯⋯。







 クラーケンがご馳走だとすると、このキングクラーケンは、





 まさに。






「この世の至宝の味だ。はい。もう誰にもあげません全部俺のもんです。素材にもくれてやるか。キングクラーケン、お前の収納先は」

「イ、イ、イ」


 足が破壊され、自身もダメージを喰らい、その破壊された足を喰われ。終いには、その相手が目を青白く光らせながら自身を見ている。突然の出来事に、キングクラーケンは狼狽える。


「俺の胃袋だ」

「イ⁈⁈」



 続く。

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