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異世界真っ向!〜クジラ亜人、荒波転生録〜  作者: 牡丹鍋
第2章 海賊島の戦い編
22/64

激闘 キングクラーケン②

 ゴポゴポゴポゴポ⋯⋯







 (やべ)





 何の躊躇いも無く海中に潜ったモグリは、とある事に気付いてしまった。



 (そうだ。前は海面近くだったからまだマシだったけど、ここは全然水深のある海中。深海程では無いにしろ)




 真っ暗。




 (何も見えん)


 どういった仕組みかはわからないが、脱出口は直ぐ横が海中に繋がっているようだ。この繋がり方で海水が脱出口から海賊島内部に流れ出ないのは、何かしら魔法的な仕掛けがあるのだろう。もしくはそういった自然が存在する世界なのか。それでも不思議は無い。魔法やら魔物が普通に居る世界なのだから。


 なら、真っ暗な海中でも見えて欲しかった。ただでさえ、自分はクジラの亜人なのに。


 (あ、でもクジラも目で見てる訳じゃないんだったな。確か音波で見てるんだっけ。俺は使えないけど)





 先日、クラーケンに放った音波攻撃。


 初めてだったからか、それとも攻撃手段の音波だったからか。クラーケンの姿形や、周囲の海の様子のイメージやら情報がモグリに流れてくる事は無かった。


 そもそも水深が浅く、月明かりでもギリギリ姿が見えていたのも相まって意識がそこに向いていなかったのもあるだろう。




 (加えてあの時は村長がシオサイの鐘を鳴らしてくれたから発射出来た音波攻撃だ。だから⋯⋯)



 マッコウクジラの亜人として、海中での動きや音波の使い方を事前に学んでおきたかったところだ。


 それを許さなかったのが、シオサイの村の人達。モグリが海に少しでも近づけば、モグリを逃がさまいと十人単位で集まって陸に引き上げられていた。村人を引きずったまま無理矢理海に出ることも出来たが、溺れ掛けてでも離さない村人の執念にモグリは毎回負けていた。


 (訳言って監視有りでも海で泳いでおくんだったな。今の俺は泳ぎも不完全だろうし、音波のおの字も使えない)




 後悔するにも反省するにも、今現在。



 飛び出した手前、戦わねばならぬが。



 (見えないんだもん。多分、目の前とか近くに居るんだろうけれど)




 モグリは真っ暗な海に漂う。流されているのかどうかもわからないが。


 (目の前に居ると仮定して、前方に向かって最高速で頭突きしてみるか。はちゃめちゃに動き回ればどうにかなるだろ。なってくれ。なりますように)


 モグリは頭を低く、仰向けの状態になる。そして前方に向かって進むようにドルフィンキックをかました。



 ドウンッッ



 爆発的な推進力を感じたのと同時に、モグリは海中で猛撃の矢の如き速度で穿たれた。


 (この感覚は掴める。水の流れを掴む感覚。前から後ろへ、水が俺の動きを助けてくれるこの感じ)




 ドガッ‼︎


「ッッ‼︎‼︎」


 進み出して数秒、モグリは何かに激突した。


 (この感触、間違いない。キングクラーケンの触手ッ)


 モグリはぶつかった場所から大体の目測を付け、海中を猛スピードで旋回し進み始める。


 (海中の方が動きやすいのはキングクラーケンも同じ。加えて、恐らくあちらは俺の場所を把握出来ている。動き続けて撹乱しなければ)


 しかし。





 ガシッ



 (あ。おわた)


 待ち構えていた触手に、容易く捕まってしまった。そのまま複数本の触手に絡め取られ、怪力で締め付けられてしまった。いくらモグリとは言え、キングクラーケンの本気のとぐろ締めには為す術無く身動き出来ずにいた。骨が軋み、内臓が押し潰される。


 (目ん玉が飛び出そうだ。まずい、本気で死ぬ。シオサイの鐘の力が無いと駄目かもな。いやでもそれで今回勝てたとして)




 この先、この大海原で、


 大自然で生きていく中で、元の世界には居なかったであろう魔物には必ず出くわすだろう。



 (ピンチの度に、シオサイの鐘の世話になる気か。俺は)





 あの時の感覚を思い出せ。


 音波を出せたあの感覚を。





 ああ



 でも






 その前に





 意識が⋯⋯









 続く。

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