我、腹ペコなり
ハイオーク、グランド・ハイオークに、キングクラーケン⋯⋯
こんな上位種が出てくると事前に知っていたらこの作戦、私は。
「わ、私は⋯⋯」
「ちくしょう、今ので出口が崩れやがった」
激痛で霞む視線の先に、ポロボラを担ぎながら銛で壁を掘ろうと苦戦しているルタイスが映った。
「イイガア」
「っ、ま、待て」
リッカはもう動けないと見たキングクラーケンは、狙いをルタイスに変えた。ルタイスもそれに気付き、ポロボラを後ろに投げ捨て身構える。
「くそっ。来やがれ化け物。モグリのご馳走ごときがよ‼︎」
「イガガガガガガアアア‼︎」
ここで、
こんな所で蹲るために、私は冒険者になった訳では無い。
私は、
私は。
「待て‼︎待てキングクラーケン。私はまだ戦えるッ」
リッカは、軋む体を残り僅かな体力と魔力で無理矢理立たせる。
「おい止せリッカ‼︎血吐きながら何言ってやがる‼︎」
「私に構う暇があるなら早く壁に穴を開けて上に行けッ。出口が崩れたのは私の力不足だ。その分の時間は必ず稼ぐ」
「お前死にたいのか⁈」
「私を無駄死にさせる気かッ」
リッカは魔力による斬撃をキングクラーケンに飛ばし、注意を自らに向けた。斬撃は変わらず全くキングクラーケンに傷を負わせる事は無かった。が、キングクラーケンは唸り声を上げながらリッカ目掛けて触手を振り上げる。今までよりも高く振りかぶったその触手に、リッカは目を見開いて固まった。
次の一撃で、必ず死ぬ。
そうとわかれば、覚悟が決まれば。
「⋯⋯誉れあれ」
リッカは息を整えると最後の力を振り絞り、剣に霜と冷気を纏わせる。
「イガアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎‼︎」
強烈な勢いで振り下ろされたキングクラーケンの触手の攻撃。それにリッカは正面から飛び出し、剣を振るった。
触手と剣がカチ合う刹那、時が遅くなる。
ああ。
クラーケンを喰える力とかは無くても。
グランド・ハイオークと正面から殴り合える力が、私にも、あれば。
そんな力があれば私は、
私は⋯⋯
リッカの剣が砕かれるその寸前。
リッカの前の地面がヒビ割れた。
ピシッ
ガゴ
ゴゴゴッ
ガガガガガガガガガガガガッ
「見つけたっ」
ドガッ‼︎‼︎‼︎
「イガァ⁈⁈⁈」
地面から飛び出した何かが、キングクラーケンの触手を飛び出した勢いで頭突きして全て弾き返した。キングクラーケンは目を丸くし、その何かを凝視している。
リッカもその目の前に飛び出してきた何かを見て固まっていた。
「モグリィ‼︎」
壁に開けた穴にポロボラを蹴り飛ばしながら、ルタイスが腕を振る。
「あ、ルタイス。ポロボラは捕えたんだね」
「ああ。リッカのお陰でな。お前もグランド・ハイオークを倒したみたいだな。流石だぜ。信じてたんだぜ俺は」
「ん、いや、うん。まあ。そんな感じ」
「は?なんだその煮え切らない返事は」
「それはさて置き」
「おいこら置くな。ちょっと待て、モg」
モグリは腕捲りしながら、背後のリッカに振り返る。満身創痍のリッカを一目し、モグリは視線をキングクラーケンに再び戻した。
「リッカ。遅れてごめん。後は引き受ける」
「っ⋯⋯」
リッカは俯き、下唇を噛む。
「お前なら、勝てるのか」
「キングクラーケンって、こいつか」
「そうだ」
モグリが首を鳴らしながら、キングクラーケンに向かって歩いて行く。
「クラーケンにも簡単に勝てなかったからなぁ。その上位種なんでしょこいつ。うーん。まあ、ただ」
「ただ?」
モグリの腹が「ぐぅ~」と鳴り、輝く瞳でキングクラーケンを見上げる。
「今さ、腹減ってんだよな。俺」
続く。




