第7話 Stage 1:徐庶の友、現る
────────────────────────
◆ 前回のあらすじ
六日目、主人公・李明の家に若き旅人が訪れた。
名は、徐庶、字は元直。
後の劉備の最初の軍師となる男。
だが、彼には、過去の影があった。
若い頃、過ちを犯し、剣を捨てた身。
そして潁川に置いてきた、守るべき母。
主人公は、徐庶の靴の減り方、襟元の血の痕から、
彼が北方の戦場を抜けてきたことを見抜いた。
黄忠は徐庶の中の「剣を捨てた武人の影」を、見抜いた。
「過去は変えられん。だが、今、何をするかは、お主次第だ」
徐庶はしばらく李家に滞在することになった。
ただし、彼の中では、まだ迷いがあった。
「儂、まだ決めかねておる。
あの若僧に、本気で仕えるか、どうか」
そして徐庶はもう一人の友・石韜を迎えに行く、と言い出した。
────────────────────────
七日目の朝。
徐庶が早く起きて、出かける準備を、始めた。
「李明殿、しばし、出かけてくる」
「石韜殿を、迎えに、ですね」
「うむ。
今日中に、戻る予定だ」
徐庶は軽く頭を下げて、家を出て行った。
俺は見送りながら、考えていた。
徐庶はまだ俺を「主」として、認めていない。
「付き合ってみたい」という言葉の重み。
だから、石韜という友を、連れてくる。
もう一つの目で俺を、見定めるために。
「やってやろうじゃねぇか」
俺は呟いた。
玄関で、母が洗濯物を、運んでいた。
「明、徐庶殿は、出かけられたの」
「うん、夕方には戻るって」
「お友達を、連れて、いらっしゃるのね」
「ああ」
「準備しなきゃ」
母は台所に向かった。
さすが商家の女将。
客を迎える準備に、抜かりがない。
「ありがてぇ」
俺は呟いた。
庭で、兄と黄忠が剣の稽古をしていた。
「李澄殿、もっと肩の力を抜け」
「は、はい」
兄は素直に従って、剣を振った。
ここ数日で、明らかに兄の動きが、変わってきている。
黄忠の指導は、本物だ。
「黄忠殿」
「うむ」
「兄の調子は、どうですか」
「悪くない。
あと、二週間あれば、賊一人や二人、相手にできるようになる」
「ありがとうございます」
俺は深く頭を下げた。
────────────────────────
黄忠 信頼度:73 → 75(+2)
李澄 信頼度:78 → 81(+3)
★兄、配下化準備段階に到達★
────────────────────────
「おっ、兄ちゃん、80超えた」
俺は心の中でガッツポーズした。
家族でも信頼度80は、特別な意味がある。
「家族としての絆」を超えて、「右腕」としての関係が、築かれ始める。
居間に戻った。
妹の綾が本を読んでいた。
「兄さま」
「綾、今日も本か」
「はい。今日は『詩経』を」
「ほう」
綾の隣に、座った。
「綾、徐庶殿のことどう思う?」
「……」
綾はしばらく考えた。
「優しい方、だと思います。
でも、何か、悲しいことを、抱えていらっしゃる気がします」
……綾、十二歳とは、思えない、観察眼。
「綾、お前、なんで、それが、分かる?」
「目です」
「目?」
「徐庶殿の目、時々、遠くを、見ています」
「……」
俺は息を呑んだ。
子供だからこそ、見える、純粋な観察眼。
大人が、見落とすものを見ている。
────────────────────────
李綾 信頼度:100(変動なし、但し絆深化)
[!]通知
信頼度100到達後も、家族の絆は深まり続けます
────────────────────────
「綾」
「はい」
「徐庶殿に、優しくしてあげてくれ」
「もちろんです」
綾はにっこり、笑った。
昼。
俺は自分の部屋で、頭の中のシステムを開いていた。
────────────────────────
[!]累計信頼度ポイント:100pt到達!
ガチャが可能です。
[引く(100pt)] [溜める]
────────────────────────
「お、100ptきた」
俺は心の中で頷いた。
引くべきか、後にすべきか。
……いや、引こう。
ガチャは、即引きが、原則だ。
────────────────────────
【ガチャ演出】
光が、淡く……
……ピロロン♪
────────────────────────
「うっわ、また、しょぼい音だ」
俺は呟いた。
これは、Dレアか、Fレアの予感。
────────────────────────
結果:【Dレア・武具】
「鉄製の短剣」
効果:標準的な鉄製の短剣。
護身用として、使用可能。
────────────────────────
「お、武具」
俺は目を瞬かせた。
「鉄製の短剣……」
「これ、誰に渡そうか」
ふと思った。
妹の綾に、護身用として、持たせるか。
でも十二歳の女の子に、剣は、ちょっと違うか。
……お春がいいかもしれない。
綾の世話係。
何かあった時、綾を守る役目。
「お春に、渡そう」
俺は頷いた。
そして夕方。
玄関の戸が、開いた。
「李明殿、戻った」
徐庶の声。
そしてもう一人。
玄関に二人の男が立っていた。
徐庶と、もう一人。
二十代半ば。
質素な、しかし整った服。
知性を感じさせる、穏やかな顔つき。
ただし、右手に酒の入った瓢箪を、持っていた。
────────────────────────
石韜 字:広元 24歳
武力:50/統率:60/知力:85/政治:80
[Aレア]
状態:荊州にて勉学中、潁川出身
性格:知略型、酒好き、ツッコミ気質
[!]興味スイッチ発動
・徐庶が認めた者に強い興味
・知性を感じる若者に開く
・興味ボーナス:+20
初期信頼度:ベース35(徐庶の紹介) + 興味+20 = 55/100
────────────────────────
「李明殿、紹介する」
徐庶が口を開いた。
「儂の友、石韜、字は広元」
「石韜と申します」
石韜がぺこりと、頭を下げた。
そして瓢箪を、軽く振った。
「いや、徐庶殿が、しきりに『面白い若者がいる』と、言うので。
まあ、暇つぶしに、来てしまいました」
「徐庶、お主儂のこと暇つぶし扱いか」
黄忠が口を挟んだ。
「お主は別じゃろう、黄忠殿」
「ふっ、まあ、いい」
黄忠が笑った。
「あの、石韜殿、その瓢箪は……?」
「酒です」
石韜がにこりと、笑った。
「儂、酒なしでは、頭が回らないので」
「……マジか」
俺は思わずツッコんだ。
「マジです」
石韜は真顔で、頷いた。
「李明殿、商家の息子と、聞いておりますが」
「はい」
「うちにも、絹を卸していただけませんか」
「は?」
「儂、酒を、好きすぎて、家計が、厳しい。
絹で、利益を、上げて、酒代を、稼ぎたい」
「……」
……いや、この男、いきなり自分の話、ぶっこんできたな。
だが、俺はふっと笑った。
これは、これで、面白い。
居間で、四人で、座った。
俺、徐庶、石韜、そして黄忠。
「李明殿、率直に、お聞きします」
石韜が改めて口を開いた。
「あなた、何故、黄巾が、襄陽に来ると、確信しているのですか」
「俺、川で溺れて、目覚めてから、不思議と、世の中の流れが、見えるようになりました」
「ほう」
「南陽郡の黄巾は、これから、汝南、新野、と、進軍します。
そして、襄陽の北、約二十四日後、攻撃を、仕掛けてくる」
石韜の目がわずかに、見開かれた。
「……二十四日後、と、はっきり、おっしゃる」
「はい」
「もし、本当に来たら」
「来ます」
俺はまっすぐ、答えた。
「俺は家族を、守る。
そのために、できる、全てを、やる」
石韜はしばらく無言で、俺を、見つめた。
そして徐庶を、横目で見た。
徐庶はわずかに、頷いた。
「……あなた、面白いですな」
「ありがとうございます」
「もしよろしければ、儂、お力に、なれるかもしれません」
────────────────────────
石韜 信頼度:55 → 70(+15)
基礎+20 × ×1.3 × Aレア×0.5 = +13(端数調整+15)
────────────────────────
「儂、襄陽の、複数の塾と、文人達と、繋がりがあります。
情報収集なら、お任せください」
「ありがとうございます」
「ただし」
石韜が瓢箪を、軽く振った。
「報酬は、絹と、酒代で」
「いいですよ」
「うむ、よろしい」
石韜は満足げに、頷いた。
夜。
主人公の俺は廊下を、歩いていた。
すると、居間の方から、徐庶と石韜の、小声の話し声が聞こえた。
……立ち聞きするのは、悪いと思ったが、思わず足を、止めた。
「石韜、どう思う」
徐庶の声。
「……」
石韜はしばらく考えてから、口を開いた。
「面白い若者だ。
ただし」
「ただし?」
「儂もまだ決めかねる」
「儂と同じだな」
「うむ。
もう少し見させてもらいたい」
「……」
主人公の俺は廊下で、立ち止まっていた。
そうか。
石韜も、まだ俺を、見定めている。
徐庶と、同じ。
……当然、だな。
俺はまだ十六歳の商家の次男坊。
Aレア武将二人が、簡単に、仕える相手じゃない。
ここで焦っちゃ、いけない。
二人の信頼を、本気で勝ち取る。
そのためには、まず、黄巾を、撃退すること。
結果で、示す。
それしかない。
「やってやる」
俺は心の中で呟いた。
自分の部屋に戻った。
そして頭の中でシステムを、開いた。
────────────────────────
【7日目終了:リザルト】
主要な縁の状況:
・徐庶(Aレア):70 → 73(着実に上昇)
・石韜(Aレア・新規):55 → 70
・黄忠(Sレア):73 → 75
・張小六(Dレア・配下):85
家族:
・李潤(父):82
・李澄(兄):78 → 81 ★配下化準備段階★
・李綾(妹):100(完全解放)
・陳氏(母):74 → 76
[!]獲得アイテム
・「鉄製の短剣」(Dレア・武具)
→ お春に渡す予定
[!]今日の重要進捗
・石韜(Aレア)と縁を結ぶ
・兄、配下化準備段階に到達
・徐庶と石韜、まだ「仕える決意」はなし
[!]黄巾の波及まで:23日
累計信頼度ポイント:0pt(ガチャ消費後)
地位ランク:Rank 1(補正×1.3)
────────────────────────
「……」
俺はウィンドウを、見つめた。
戦力は、確実に、整いつつある。
だが、徐庶も石韜も、まだ「縁」の段階。
「配下」じゃない。
黄巾の襲撃まで、二十三日。
本気で結果を、出す。
そのために、明日から、もっと動く。
そしてその夜中。
居間で、徐庶と石韜がまだ話していた。
「徐庶、明日からは、どうする」
「儂は街での情報収集を、続ける」
「儂も塾を、回って、情報を、集めよう」
「うむ」
二人は、しばらく沈黙した。
そして石韜がぽつりと、言った。
「徐庶、もし、本当に黄巾が来たら」
「うむ?」
「儂、あの若僧の、力に、なる」
「儂もだ」
二人は、お互いを、見つめた。
「ただし、結果次第」
「結果次第」
次回予告
Stage 1:本格的な準備、迫る足音
八日目。
徐庶と石韜が本格的に、情報収集を、開始する。
そして襄陽の街である人物が、主人公の噂を、聞きつける。
[!]新たな縁の予兆
襄陽の武具屋にて、若き武人
「商家の息子に、武人の目を持つ若者がいる、と」
[次話に続く]




