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『三国志に転生したら死に戻りRPGだった件  〜寿命14年、武将ガチャで天下統一を目指す40代独身営業マン〜』  作者: ライディーンたけ


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2/20

第1話 Stage 1:李家の三日間、嵐の前の静けさ


転生から、半日。


俺、李明、十六歳。

中身は田中健一、四十二歳。


部屋を出た俺は廊下を、ゆっくりと歩いていた。


足はまだ少しふらつく。

三日間寝込んでいた体だ。仕方ない。

それでも四十二年使い込んだあの体に比べれば軽い軽い。


廊下の先に、明かりが見えた。

中庭に面した開けた板の間。


そこで男が一人、机に向かっていた。


頭の上に文字が浮かんでいる。



────────────────────────

李潤リ じゅん 李家の家長・45歳 信頼度:60/100

武力15/知力55/政治70/魅力50 性格:実直

────────────────────────



「父さん」


俺は声をかけた。


李潤――俺の父だ。


頭の中の記憶では、口数の少ない堅実な商人だ。

絹織物の品質には人一倍うるさく、「商売は信用が第一」を、口癖のようにしていた。


その父が机から顔を上げた。


そしてしばらく俺をじっと見つめた。


「……明か」


「ああ」


「もう起きて、いいのか」


「ああ、もう大丈夫だ」


父はゆっくりと頷いた。

そして机の上の帳簿をそっと閉じた。


「座れ」


俺は父の向かいに腰を下ろした。


膝が少し痛んだ。

病み上がりだからかそれともこの体が普段から座り慣れていないからか。

ふと元の李明は、こういう真面目な場で父と話すことを、避けてきたのかもしれない、と思った。


「お前、変わったな」


父がぽつりと言った。


「……え?」


「目が違う」


俺の心臓が跳ねた。


まずい。

気づかれた、か?


「川で溺れて、頭でも打ったか」


「あー、まあ、そんなところだ」


俺は苦笑した。


そして慎重に言葉を選んだ。


「父さん、ちょっと話があるんだ」


「うむ」


「最近、北の方で、よくないことが起きてる、と聞いた」


「……黄巾、のことか」


父の目がわずかに細まった。


「綾から、聞いたのか」


「ああ」


「あの子に、そういう話をするのは、好かんが」


父はふぅ、とため息をついた。


「だが、お前にも、知っておいてもらわねばならんな」


そして父はゆっくりと、語り始めた。


二月。

北の冀州、青州あたりで、黄色い布を頭に巻いた連中が、一斉に蜂起した。

その数、数十万。

名乗りは「蒼天已死 黄天當立」――蒼天はすでに死せり、黄天こそ立つべし。


朝廷は混乱し、各地に討伐軍を派遣。

だが、賊の数は減らず、むしろ広がっている。


南陽郡でも賊の動きが報告された。


南陽郡。

俺たちの住む襄陽から、北東に百キロほど。


「……」


俺は息を呑んだ。


頭の中の三国志知識が、フル回転していた。


南陽郡の黄巾。

張曼成が率いる、南陽の黄巾。

史実では、彼らは南陽郡治・宛城を攻略し、太守を殺害した。

そしてその後、何度も襄陽方面に侵攻を試みる。


「父さん」


「うむ」


「うちは、大丈夫なのか」


「……」


父はしばらく黙った。


そして低く、答えた。


「分からん」


「賊が襄陽まで来るかどうか。

 来たとしても、官軍が止められるかどうか。

 商売は、ひとまず、北への出荷を止めている」


「……」


「だが、明よ」


父は俺の目をじっと見た。


「お前は、商売のことは、まだいい。

 まず、健康を、取り戻せ。

 話は、それからだ」


そして父は立ち上がった。


「お前と話せて、よかった」


「父さん」


「うむ?」


「父さん、信用が第一、って、いつも言ってるよな」


「ああ」


「俺もそれ、覚えとく」


父の目がわずかに見開かれた。


そしてぽつりと。


「……お前、本当に変わったな」


それだけ言って、父は部屋を出て行った。



────────────────────────

李潤 信頼度:60 → 65(+5)

獲得ポイント:+5

現在の合計:13pt

────────────────────────



「お」


俺はウィンドウを見た。


父の信頼度、上がった。


「ふっ」


俺は苦笑した。


二十五年、営業マンとして、上司や取引先に、何度も「信用第一」と言ってきた。

それを、まさか、四十二歳になって死んで、転生した先の父にも、言うことになるとは。


「商売って、結局どこの世界でも同じか」


俺は呟いた。


そして立ち上がった。




中庭に出ると、母が洗濯物を干していた。


「あら、明。もう、起きて大丈夫なの?」


母――陳氏。

四十歳。

細い体に、優しい笑顔。


頭上の表示。



────────────────────────

陳氏(母・40歳) 信頼度:68/100

武力5/知力40/政治30/魅力55 性格:温和

────────────────────────



「うん、大丈夫だ。心配かけた」


「もう本当に。

 川で泳ぐなんて、無茶をするからよ」


「ごめん」


「もういいわ。

 お湯を沸かしてあるから、飲んでらっしゃい」


「ありがとう、母さん」


俺は頭を下げた。



────────────────────────

陳氏 信頼度:68 → 72(+4)

獲得ポイント:+4

現在の合計:17pt

────────────────────────



「あ」


母がふと何かを思い出したように、言った。


「明。

 今度から綾の世話は、お春に任せなさい。

 あなたは、自分の体を、まず大事にして」


「お春?」


「ええ新しい侍女。

 二年前から うちに来てるの。覚えてないの?」


「あ、ああ、もちろん覚えてる」


俺は慌てて頷いた。


頭の中の記憶を、必死で探る。


お春。

李家に仕えて二年の侍女。

十七歳。

李綾の世話係。


そういえば、さっき廊下を歩いている時に、すれ違った気がする。

若い娘だった。


「あの子も、お前のこと心配してたわよ」


「そっか」


「あら、噂をすれば」


母が視線を向けた先。


中庭の向こうから、若い娘が、こちらに歩いてきていた。


頭上に、文字。



────────────────────────

お春(侍女・17歳) 信頼度:50/100

武力3/知力20/政治8/魅力58

────────────────────────



質素な絹の服。

肩までの黒髪。

気の利きそうな顔つき。


「明さま、お目覚めになったのですね。

 よかった」


お春が丁寧に頭を下げた。


俺は思わず笑顔を作った。

二十五年の営業マンの、自然な反射だ。


「ああ、ありがとう。

 ずっと、看病してくれてたんだろう?」


「いえ私など、たいしたことは……」


「いや、本当に助かった」


「……」


お春の頬が、わずかに赤くなった。



────────────────────────

お春 信頼度:50 → 55(+5)

獲得ポイント:+5

現在の合計:22pt

────────────────────────



「あら、明、女の子に優しいわね」


母がにやりと笑った。


「いや、別に、そんなんじゃ……」


「いつもは、もっとぶっきらぼうだったのに」


「……」


俺は頬を掻いた。


元の李明、ぶっきらぼうだったのか。

怠惰な少年とは聞いていたが、女性にも素っ気なかったらしい。


「綾はどこに?」


「奥の部屋で、本を読んでるわ」


「分かった、ちょっと顔を出してくる」


俺は母とお春に、頭を下げて、その場を離れた。




奥の部屋。


そっと戸を開けると、綾が窓際で、本を読んでいた。


午後の光が、その小さな背中に、柔らかく降り注いでいた。


「綾」


「あ、兄さま」


綾が振り向いた。

そして嬉しそうに、微笑んだ。


「お休みじゃ、なかったんですか?」


「ああ、もう大丈夫だ。

 お前は、何を読んでるんだ?」


「『論語』です。

 最近、お父さまから、いただきました」


「論語、か」


俺は近づいて、覗き込んだ。


紙ではなく、竹簡だった。

ぎっしりと、漢字が書かれている。


「読めるのか?」


「少しずつですけど、お父さまが、教えてくださいます」


俺はその横顔をじっと見つめた。


十二歳。

病弱で、家から出られない。

だが、本を読むのが好きで、漢文も少しずつ理解している。


聡明な子だ、と思った。


「兄さま?」


「いや、なんでもない」


俺は綾の隣に、腰を下ろした。


「綾、ちょっと聞いていいか」


「はい」


「お前、もし、家族が、危ない目に遭ったら、どうする?」


綾はしばらく考えた。


そして答えた。


「兄さまが、守ってくださると、信じています」


「……」


俺の胸がぎゅっと、締めつけられた。


「綾」


「はい」


「俺はな、最近、ちょっと人生について、考えたんだ」


「人生ですか?」


「ああ。

 俺は、これまで、ぼんやり生きてきた。

 怠惰だった。たいしたことも、考えてこなかった」


「兄さま……」


「だが、川で溺れて、死にかけて、思ったんだ」


俺は綾の頭に手を置いた。


「俺はお前と、父さんと、母さんと、兄さんを、守りたい」


「……」


綾は目を丸くした。


「守る、ですか?」


「ああ。

 黄巾が来たら、誰が、お前たちを守るんだ? 誰かが、やらなきゃならんだろう?」


「でも私は、家にいるだけで……」


「綾、お前は、いるだけでいい」


「え……?」


「お前が、家にいてくれること。

 兄である俺が家に帰ってきた時、お前が笑顔で出迎えてくれること。

 それが、俺の生きる、理由になる」


「……兄さま」


綾の目に涙が滲んだ。


「俺はまだ商売も知らない。

 武術も、できない。

 だが、これから、勉強する。

 強くなる」


「……はい」


「だから、信じていてくれ」


「はい、兄さま」


綾はこくりと、頷いた。



────────────────────────

李綾 信頼度:80 → 92(+12)

獲得ポイント:+12

現在の合計:34pt

────────────────────────



「お」


俺はウィンドウを見て思わず声を漏らした。


信頼度、一気に+12。


正直、ここまで上がるとは、思わなかった。


「ふっ……」


俺はふと笑った。


これは、もはや、ポイントを稼ぐためじゃない。

本当にこいつを守りたい。

そう、思った。


「綾」


「はい」


「これ、約束な」


「はい、兄さま」


俺は立ち上がった。




部屋を出て、もう一度廊下を歩いた。


階段を、上る。


二階の、別の部屋。


その戸の前で、俺は立ち止まった。


頭上に、文字。



────────────────────────

李澄(兄・22歳・字:子明) 信頼度:55/100

武力25/知力60/政治65/魅力50 性格:実直・寡黙

────────────────────────



兄、李澄。

俺より、六つ上。

頭が良く、寡黙で、真面目。

父の右腕として、商売を学んでいる。


「兄さん」


俺は戸の外から、声をかけた。


「……明か」


「ああ、ちょっといいか」


「入れ」


戸を開けると、兄は机に向かっていた。

何かの帳簿をつけているらしかった。


「具合は、どうだ」


兄は振り向かずに、聞いた。


「もう大丈夫だ」


「そうか」


兄はそれだけ言って、また帳簿に目を戻した。


寡黙、というか。

表情に乏しい男だ。

でも頭の中の記憶では、決して冷たい人間じゃない。

ただ、感情を、表に出すのが苦手なだけだ。


「兄さん、聞きたいことがある」


「うむ」


「俺、これから、少し商売を手伝いたい」


兄の手が止まった。


そしてゆっくり振り向いた。


「お前が、か」


「ああ」


「……」


兄はしばらく俺をじっと見た。


そしてぽつりと。


「お前、川で溺れて、何があった」


「……いや、何も。

 ただ、ちょっと考えただけだ」


「考えた、か」


兄は苦笑した。

珍しく、口元が緩んだ。


「お前が考えるなど、雪が降るぞ」


「酷い言い草だな」


「事実だ」


「……まあ、否定はしないが」


俺は苦笑した。


兄は机に向かい直した。

そして帳簿をこちらに差し出した。


「読めるか」


俺はそれを、覗き込んだ。


絹の出荷数、仕入れ価格、得意先の名前、金額。

びっしりと、漢字と数字が並んでいる。


頭の中の李明の記憶では、これを読めなかった。

だが、田中健一の俺は二十五年、営業の数字を見てきた。

帳簿の構造は、現代も古代も、そう変わらない。


「……読める」


「ほう?」


兄の眉が、わずかに動いた。


「ここの、絹の出荷数だが」


俺は指差した。


「北への出荷を、止めてるな」


「ああ」


「いつから?」


「先月の半ばから、だ」


「南は?」


「江夏や長沙には、まだ通常通り」


「……」


俺はしばらく帳簿を眺めた。


そしてぽつりと。


「兄さん、南への出荷も、減らした方がいい」


「……何?」


「黄巾は、北だけじゃない。

 江南にも、必ず広がる」


「お前、なぜ、そう思う?」


「……勘だ」


俺は嘘をついた。


本当は、知識だ。

史実では、黄巾の乱は、すぐに鎮圧された。

だが、その後の混乱で、各地に賊が湧き、社会不安は、十年以上、続いた。


南への出荷を続けても、安全に届くとは限らない。

そして得意先が、戦乱に巻き込まれて、代金を払えなくなる可能性もある。


「……勘、か」


兄はしばらく黙った。


そして帳簿を閉じた。


「お前、本当に川で頭を打ったのかもしれんな」


「だから、そう言ってる」


「父上に、相談してみよう」


「……いいのか?」


「お前の意見、面白い。

 黄巾は、北だけ、と思い込んでいた」


「兄さん」


「うむ?」


「俺、これから、もっと勉強する。

 兄さんに、迷惑かけないようにする」


「……」


兄はわずかに、目を細めた。


「明」


「うん?」


「お前、いいやつになったな」


「酷い言い草だな、それも」


「事実だ」


兄は初めて、ふっと笑った。



────────────────────────

李澄 信頼度:55 → 65(+10)

獲得ポイント:+10

現在の合計:44pt

────────────────────────



「お」


俺は心の中でガッツポーズした。


兄の信頼度、+10。



────────────────────────

[!]通知

ガチャ可能回数:0 → 0

※ガチャは100pt以上で1回引けます

────────────────────────



「あと56pt」


俺は呟いた。


兄が不思議そうに、こちらを見た。


「何だ?」


「いや、何でもない」


俺は苦笑して、首を振った。




その日の夜。


俺は自分の部屋に戻って、布団に入った。


天井を見上げた。


転生から、半日。


家族と、話せた。

父、母、兄、妹。


それぞれ、いい人だった。

俺のために、心配してくれた。

俺のことを、信じてくれている。


四十二年生きて、こんな経験は、なかった。


「……」


俺は目を閉じた。


そして頭の中でシステムを呼び出した。



────────────────────────

【1日目終了:リザルト】


信頼度ポイント獲得:+44

・李潤(父) :+5

・陳氏(母) :+4

・お春(侍女):+5

・李綾(妹) :+12

・李澄(兄) :+10

・その他   :+8


現在のリソース:

・信頼度ポイント:44

・ガチャ可能回数:0(100ptで1回)


【メインクエスト】

第一段階:荊州の実権を掌握せよ

残り:5,109日


【サブクエスト】(自動生成)

・家族との信頼関係を強化する:継続中

・初ガチャを引く:100pt必要

・襄陽の情勢を把握する:進行中

────────────────────────



「……44pt、か」


俺は呟いた。


「明日、もう少し稼げば、初ガチャだな」


そしてふと思った。


これは、人生のゲーム化だ。

家族との関係も、ポイント。

信頼も、ポイント。

何もかも、数字に変換される。


「……それで、いいのか」


俺は自問した。


そして答えた。


「いや、いい。

 数字でも何でもいい。

 守れるなら」


俺は目を閉じた。


「明日も、頑張ろう」


そして眠りに落ちた。




二日目、三日目。


俺は家族との時間を、少しずつ、増やしていった。


母と、料理の話をした。

お春に、綾の好きな本を聞いた。

兄と、帳簿を一緒に見た。

妹と、論語を、少しずつ、読んだ。


信頼度ポイントは、着実に、増えていった。



────────────────────────

【3日目終了:リザルト】


信頼度ポイント:累計112pt

・初ガチャ可能!

────────────────────────



「お」


俺はベッドの上で、ガッツポーズした。


ようやく、100ptを超えた。


「やっとか」


俺は深く息をついた。


そして頭の中で念じた。


「ガチャ、起動」



────────────────────────

【LIMITED GACHA】


検索範囲:半径50km以内

年代:未確定


1回 100pt


[引く] [詳細]

────────────────────────



「……引くか」


俺は息を呑んだ。


四十二年生きて、初めての、本物のガチャ。


「[引く]」


念じた瞬間。


視界が白く、光った。



────────────────────────

【ガチャ演出】


星が、流れる。

光が、収束する。


……。


……。


……。


── 結果 ──


【Dレア】農夫の息子・張小六(22歳)

 武力:35/知力:12/政治:10/統率:20/魅力:30

 特技:農作業、力仕事

 性格:素直、忠実


★主従の縁が結ばれました★

 信頼度:80スタート

 即時配下化済み

 能力100%発揮、絶対忠誠


獲得しました。

────────────────────────



「……」


俺はしばらくウィンドウを見つめた。


「農夫の息子」


「Dレア」


「……」


「うっわ」


俺は頭を抱えた。


「初ガチャがFレアじゃなくて良かった、って思うべきか……」


「Dレアでも信頼度100pt使って、これか……」


「これ、諸葛亮を引くまで、何ptかかるんだ……」


ため息が、出た。


だが、もう一度ウィンドウを、よく見た。


「あれ……? 信頼度80スタート、即時配下化?」


「これ、めっちゃ強くね?」


俺は目を瞬かせた。


「100pt払う代わりに、信頼関係構築のフェーズを、丸ごとスキップ、ってことか」


「なるほど、ガチャは、そういう仕組みか」


信頼度80。

配下化条件、クリア。

即戦力。


これは、ありがたい。


ただし。


「諸葛亮なら、10,000pt、か……」


俺は頭を抱えた。


「気が、遠くなる」


そしてふと思った。


「いや、待て」


「これは、最初の一手だ」


「Bレアでも何でも味方は味方だ」


「やれることをやろう」


俺は頷いた。


そして頭の中で念じた。


「張小六、よろしくな」



────────────────────────

[!]通知

張小六が半径50km以内のあなたを認識しました。

「ずっと、あなたを探していた気がする」という、

不思議な縁の感覚を持って、数日中に訪れます。


※ガチャで獲得した人物は、信頼度80スタート。

 即時配下化済み、絶対忠誠の状態でやってきます。

────────────────────────



「自発的に、来るのか」


俺はウィンドウを見て不思議に思った。


「しかも、信頼度80スタートで、絶対忠誠……」


「ガチャの効果、想像以上に強いな」


「これなら、不自然な召喚現象もない。家族にも、説明がつく」


「ありがてぇシステム、設計してくれたな、神様」


俺はまだ会ったことのない神に、感謝した。


そして頭の中のウィンドウに、もう一つの通知が来た。



────────────────────────

[!]WARNING


南陽郡で、黄巾の動きが活発化しています。

襄陽郡への波及まで、推定 30日。


備えてください。

────────────────────────



「……」


俺は息を呑んだ。


30日。


たった、30日。


「来やがるな」


俺は呟いた。


そして決意した。


「綾は絶対に、守る」


「家族は、絶対に、守る」


「やれることを、全部やる」


俺はベッドの上で、拳を握りしめた。



────────────────────────

Stage 1:襄陽の春、進行中


現在のリソース:

・信頼度ポイント:12pt

・ガチャ可能回数:0

・配下:張小六(Bレア、襄陽郊外で農作業中)


第一段階:荊州の実権を掌握せよ

残り:5,107日


[!]黄巾の波及まで:推定30日

────────────────────────



嵐の前の、静けさ。


それは、もう終わりかけていた。




次回予告


Stage 1:黄巾来襲、奪われたもの


転生から、三十二日。

李明は、必死に準備をした。

だが、家族には、まだ「黄巾が来る」と、信じてもらえなかった。


「明、お前、考え過ぎだ」

「父さん、信じてくれ」

「賊がこんな田舎まで来るものか」

「……」


そして深夜。


「兄さま……」


綾が震える声で、俺を呼んだ。


「窓の外に、灯りが、いっぱい」


俺は跳ね起きた。


[!]EMERGENCY

 黄巾軍、李家屋敷へ侵入中

 推定50名、武装あり

 推奨アクション:直ちに家族の避難を


「……来やがった」


俺は震える手で剣を取った。


そして綾の震える肩を、抱きしめた。


「綾」


「兄、さま……」


「お前は、絶対守る」


「だから、信じて、ついてこい」


[次話に続く]


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