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冒険者編⑨

翌朝。


王都の朝の光が、宿の窓からゆっくり差し込んでいた。

カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の床に細い線を作る。

鳥の声、遠くから聞こえる人々の話し声。

王都はもう目覚めていた。


だが――

宿の部屋の中は、まだ夜の延長のようだった。

アルマはベッドの上で目を開けた

「……」


天井がぐるぐる回っている

「うー……」


体を起こそうとして――

また横になる。

頭が重い。

胃もむかむかする。

初めての**二日酔い**だった。

アルマは目をこすりながら呟く

「……なんだこれ……」


横にはノエルの布団。


だが――

布団は完全に**山**になっている。


ノエルは中から一切出てこない。

もぞもぞ動く気配すらない。

アルマは重い体を引きずるようにベッドから降りた。


ふらふら歩く

「うー……」


目がまだ回っている。

そして布団の山に向かって声をかけた

「ノエルぅ……」


声がかすれている

「そろそろ起きる時間だぞ……」


布団の中から声

「ぅぅ……」


「無理ぃ……」


アルマはしばらく立っていたが――

やがて布団の横にしゃがみ、そのまま布団に潜り込む

「……」


次の瞬間、アルマが叫んだ

「酒くっせぇ!!」


布団の中は完全に酒の匂いだった。

ノエルがもぞっと動く

「昨日飲んだから……」


アルマは耐えきれず――

そのまま横になった

「もういい……」


そして**秒で寝た。**


布団の中で二人とも完全に沈黙する。

部屋の反対側でレオナは椅子に座り、紅茶を飲んでいた。

カップを持つ手は優雅だ。

表情も落ち着いている。

二人の様子を見て、少しだけ笑う

「……」


カップを机に置き小さくため息

「今日は」


「お休みの日ですね」


二人は完全に沈黙している。

レオナは立ち上がって外套を羽織るとドアへ向かう。


そして振り返が、アルマとノエルは完全に寝ていた

「少し」


「外歩いてきますね」


誰も返事はしない。

レオナは小さく笑って部屋を出た。


――――――


王都の朝。


石畳の通りはすでに賑わっていた。

屋台が準備を始めている。

パンの香り、商人の声、馬車の音。

人々が行き交い、街は活気に満ちている。

レオナはその中をゆっくり歩いた

(……)


空気を吸う。

朝の王都の匂いは少しだけ新鮮だった

(こうして)


周囲を見回す

(ひとりで出歩くの……久しぶりです)


普段は三人。学院でも。冒険でも。

いつもアルマとノエルが隣にいる。

だからこそ今のこの時間は、少し不思議な感じだった。


レオナはふと路地を見る。

人通りの少ない裏道に少し興味が湧く

「……」


「探検しましょうか」


レオナは裏道へ入った。

王都の裏道は静かだ。

洗濯物が干されている。

小さな店の裏口。

猫が塀の上で丸くなっている。

表通りの喧騒とは違う、穏やかな空気。

レオナはゆっくり歩きながら周囲を見る

(王都は賑やかですね)


通りの向こうから笑い声が聞こえる。

子供が走っていく。

パン屋の香り

(皆さん楽しそうで……)


レオナは少し微笑む

(私も楽しくなってきました)


銀髪が朝の光を受けて揺れた。

レオナは静かに王都を散策していった。

王都の裏道を歩いていたレオナは、やがて広い石畳の広場へ出た。


人通りが少し増える。

広場の奥に――


**神殿**が建っていた。


高い白い石柱、大きな階段、荘厳な門。

王都の建物の中でもひときわ目立つ建築だった。

レオナは足を止める

(神殿……)


(そういえば……)


ふと気づく

(私たちの村では)


思い出す。

山間の小さな村、冒険者、鍛錬、温泉。


だが――

(神に祈る、という風習はありませんでしたね)


村には神殿もなかった。

神官もいなかった。

祈りの時間もなかった。

レオナは少し考えたあと、階段を登った。


石の扉をくぐり神殿の中へ。


――――――


内部は、外の喧騒が遠くに聞こえるだ驚くほど静かだった。


空気が澄んでいる。

天井は高く、光が上から差し込んでいる。

色付きガラスの窓から、柔らかな光が床へ落ちる。

石の床、長い礼拝席。


奥には――

**巨大な十字架**


その前には女神像が立っていた。

神官や僧侶が静かに祈りを捧げている。

誰も大きな声を出さない。

祈りの言葉だけが小さく響く。

レオナはゆっくり歩き周囲を見回す。


建物の構造、彫刻、光の入り方。


すべてが美しい。

思わず目で追ってしまう。


そのとき後ろから声がした

「君」


振り向くと、年配の神官が立っていた。

穏やかな顔、白い衣。

神官は少し微笑む

「神殿は初めてかね?」


レオナは少し驚く

「……」


「わかりますか?」


神官は軽く肩をすくめた

「そんなにキョロキョロすると」


「初めてだ、というのが分かるよ」


レオナは少し照れる。

神官は続けた

「君は」


静かな声で

「神を信じるかい?」


レオナは少し考える。


【神】


存在するのかしないのか。

見たことはないし証明もない。


レオナは正直に答えた

「神、ですか……」


「見た事ないので何とも言えませんが……」


そして静かに言った

「いるといいな、とは思います」


神官は優しい顔で微笑んだ

「神は」


十字架の方を見る

「いつも人を見ていらっしゃる」


そしてレオナを見る

「信仰すると奇跡が起こる」


「その心を忘れずにいるといい」


神官はそう言って、静かに別の祈りの席へ歩いていった。

レオナはその背中を見送って少し考える

(神、ですか)


神殿の静かな空気、祈り、信仰。

(でも)


(私は)


視線を女神像へ向ける

(見たものでしか判断できない性分なんですよね……)


大きな女神像。優しい表情。祈る人々。

その光景は美しい。


だが――

レオナの頭に浮かんだのは、別の光景だった


**廃修道院。**


崩れた柱、荒れた礼拝堂、地下の術式、封印。

レオナは女神像を見上げた

(神がいるのならば……)


(なぜ)


(あの修道院は廃れたのでしょうか……)


祈りの場所だったはず。信仰の場所だったはず。

それが今は――


【廃墟】


神殿の静けさの中で、レオナはしばらくその場に立っていた。

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