冒険者編⑧
ギルドの奥のテーブル。
木のテーブルの上には料理が並び、酒のジョッキがぶつかり合っていた。
油灯の光が揺れ、影が壁に踊る。
冒険者たちは楽しそうに笑いながら三人を囲んでいた
「でよ」
一人の冒険者が身を乗り出す
「トラの魔獣ってどんなんだった?」
別の男が腕を組む
「大型クラスの魔獣はよ」
酒を一口飲む
「中堅の俺らでも手をやくのに」
トリニティを見る
「やるなぁ」
アルマは少し照れくさそうに頭をかいた
「まぁ」
肩をすくめる
「なんとかなった」
そのときノエルがくすっと笑った。
少し楽しそうな顔
「アルマ」
ちらっと横を見る
「猫パンチされてね」
一瞬の沈黙。
そして――
「おいおい!!」
大声が上がった
「トラの猫パンチなんてシャレにならねーだろ!!」
別の冒険者がテーブルを叩く
「なんで生きてんだ!?」
さらに笑い声
「普通死ぬぞ!」
「顔残ってるの奇跡だろ!」
アルマは顔をしかめる
「肉球だったんだよ!」
ノエルが笑う。
レオナも口元を押さえて笑っている。
ギルドの中に笑い声が広がる
「はははは!」
「いいじゃねーか!」
「運も実力のうちだ!」
誰かがジョッキを掲げた
「トリニティに乾杯!」
「乾杯!」
ジョッキがぶつかり合いながら酒の泡がこぼれる。
アルマ、ノエル、レオナは少し照れながらも笑っていた。
嬉しいけど少し恥ずかしい。
そんな不思議な気持ちだった。
すると、年配の冒険者が静かに言った
「お前ら」
ジョッキを机に置き少し真面目な声で
「強くなるぞ」
「強い冒険者ってのはな」
指を一本立てる。
「少しずつ」
「しっかりと」
「勝ち続けていくんだ」
少し静かな空気。
その横の男がすぐツッコんだ
「お前が言うなよ!」
テーブルが揺れる
「この前オオカミに追い回されてただろ!」
「うるせぇ!」
「逃げたのは戦術だ!」
「言い訳すんな!」
**ゲラゲラゲラ!!**
また大きな笑い声が上がる。
ノエルはそれを見て思った
(なんか……)
少しだけ嬉しい
(いいな、この感じ)
アルマも笑っている。
レオナも穏やかな表情だ。
ギルドの夜。
酒、笑い声、そして――
冒険者たち。
トリニティの三人は、その輪の中にいた。
~~~~~~~~~~~~~
宿の窓から、遠くの酒場のざわめきがかすかに聞こえていた。
笑い声、ジョッキのぶつかる音、誰かの大きな歌声。
ギルドの夜は、まだ続いているらしい。
その喧騒から少し離れた宿の部屋。
ランプの灯りが柔らかく揺れている。
ベッドと小さな机。
質素だが落ち着く空間だった。
アルマは椅子に座り、ぐでっと背もたれに体を預けていた。
顔が赤くなって完全に酒が回っている。
ぼんやりと天井を見ながら呟く
「……なんかいいな」
「こーゆーの」
冒険者たちの笑い声、歓迎、乾杯。
全部がまだ頭の中に残っていた。
ノエルはベッドの上でごろんと転がっている。
顔が真っ赤だ。
かなり酔っている
「ん〜〜」
体を伸ばす。
レオナは椅子に座り、少し苦笑しながら二人を見ていた。
レオナも少しだけ顔が赤いが、まだしっかりしている
「少しずつ」
「認められて」
窓の外を見る
「強くなっていくんですね」
その言葉には、少しだけ実感がこもっていた。
学院・初任務・腕相撲・今日の依頼。
全部が繋がっている。
ノエルが突然起き上が目をキラキラさせ
「そのうち!」
拳を握る
「トリニティ最強!」
「って認めてもらえるようになろうね!」
アルマが笑う
「おー!」
完全に酔って気分が高まっている。
アルマは立ち上がり、ふらふらしながら拳を突き上げた
「巨躯!」
声が大きい
「ぶっ倒して!」
「英雄なる!!」
ノエルが笑う
「なるなる!」
レオナは思わず笑ってしまった
「ふふ……」
少し呆れたその表情は優しい。
【トリニティ】
三人でひとつのパーティー。
まだ小さな冒険者。
確実に前へ進んでいる。
窓の外では、王都の夜が静かに更けていった。




