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41 敗北とエルメス

最近のワイ アニメOP中に筋トレ 本編中は観賞 ED中に筋トレ

某アニメの影響力が強すぎてやばい。

「終わった……よな?」

 攪拌された空気が収まり、地面から熱が逃げていく。

 防壁をまだ発動したまま、エルメスは周辺を探っていた。


 熱と爆風で、周囲の地面は生命の姿はなく、ガラス化した地面があちこちにある。

 熱量に伴う毒は制限したので、数日以内には人間の踏む込むことが出来るまでに回復するだろう。


 エルメスはじっくりと待っていた。

 熱が拡散し、大気が正常に戻るのを。

 ここで防壁を解いたら、高温の大気を呼吸して、肺が焼ける。

 もし歩こうと思ったら、地面で靴が焼けるだろう。


 その当然の待機は、正しかった。

「……マジかぁ……」

 エルメスから見て上方、点に見えていたその姿が段々と大きくなる。

 全体的に黒焦げになっていたが、明らかにアスモデウスは生きていた。


 ぱらぱらとこぼれる、おそらくは表皮であったもの。

 その下からは既に皮膚が再生している。

 エルメスも高度な治癒魔術は使えるが、あくまであれは魔術である。

 素の力でこの再生力は、やはり悪魔とはずるい存在である。

「やべ……負ける?」

 核魔術を使うため、それにさえ耐える防壁を張っていた。だがアスモデウスもまた、核魔術には耐えた。

 その意味をエルメスは正確に理解した。




 アスモデウスの姿が消えた。

 魔力の反応があるのでもちろん本当に消えたわけではない。

 だが、もはやエルメスの動体視力で捉えられる速度でなくなったのは確かだ。

 加速の魔術を使ってもなお、その反応は全く及ばない。

 それでも今までは鉄壁の防御で、足を止めながら戦っていたのだが。

 どうにか移動先は、魔力感知で補足出来たが、反応出来そうにない。


 アスモデウスから油断が消えた。

 エルメスの脅威を正しく理解した。

 そして結論を出した。この人間は、ここで殺すと。

 配下にしようかなどと考えていたが、こいつの力は危険すぎる。

 アスモデウスの知る限り、エルメスの使った魔術は魔王でもそうそう出せはしないものだ。


 魔王アスモデウス。彼は魔王の中でも上位の者である。

 地獄の勢力は四つの大きな魔王と、それ以下の魔王に大別される。

 アスモデウスはそれ以下の魔王であるが、それ以下の中では屈指の力を持つ者でもあった。

 よってエルメスのような配下がほしいのは本当であったが、認識を改める。


 核魔術というのを、アスモデウスは知らない。

 魔王である彼が知らないということは、あるいは神でさえも知らないということだ。

 そんな魔術を使う存在を、たとえ人間だからと甘く見るのは危険すぎる。


 いや、とアスモデウスに疑問が浮かぶ。

 魔王ですら使えない、おそらく地上のみならず地獄でさえ失伝している魔術を、この若さで会得できるものなのだろうか。

「貴様……何者だ?」

 今更ながらにアスモデウスは考える。

「何って……スキルを持たないこと以外は普通の人間ですが?」


 悪魔はスキルを重視しない。

 そもそもあれは神が――つまり自分たちもだが――作ったもので、強さの本質的な指針にはならない。

 単に人間を管理するために便利だから存在するのだ。

 しかしエルメスのスキルは見えない。この点からも、アスモデウスはスキルを考慮して判断はしない。


 エルメスは危険なほど強い。それさえ分かっていれば充分だ。




 アスモデウスは全力を出すことを決めた。

 これ以上エルメスとの戦いを長引かせはしない。

 エルメスが杖を何本も使っている以上、それを使い切らせたところで倒すのが、確実な倒し方なのだろう。


 だがアスモデウスはそれを選択しない。

 エルメスは危険だ。危険は一刻も早く排除すべきだ。

 このアスモデウスの判断は正しい。

 エルメスは時間があれば、さらに強力な核魔術を構築できるのだから。


 アスモデウスはもはや様子見などもせず、単純な力押しで勝負を決めることを狙った。

 エルメスもまた、アスモデウスの危険は感じた。

 理論上先ほど以上の破壊力を持つ魔術はあるし使えるが、咄嗟には無理だ。

 防御。思考はそれ一色になる。

 逆にアスモデウスは、全力での攻撃を決める。


 音速のアスモデウスは魔力を纏い、エルメスの防壁へと突撃する。

 エルメスの防壁は見る間にその耐久値を減らしていく。慌てて杖を追加して、どうにかそれを防ぐ。


 だがアスモデウスの力は圧倒的だ。エルメスが追加する防壁の強度が、どんどんと削られていく。

(間に合わない!?)

 エルメスは咄嗟に、杖に構築されていた、緊急の魔術を発動した。

 それは転移の魔術である。


 転移魔術はあまりにも高度なものである。どれぐらい高度かと言うと、地上と地獄をつなぐぐらい高度。

 それを使ってエルメスは、視界の通る果てまで転移した。

 あらかじめ位置を指定していればもっと遠くにも跳べるのだが、この際はそんな余裕はない。

 とにかくアスモデウスから距離を取るのが精一杯だった。


 そして、これは悪手である。


 アスモデウスとの間に、距離は出来た。

 しかしそれは神速のアスモデウスにとってはほとんど意味を成さない距離であり、そしてエルメスは防壁を失っている。

 エルメスもまた、すぐにそれに気づいた。だが判断が遅い。

 再度転移するか、それとも防壁を張るか。

 その判断の遅れが、致命的な隙となった。




 無理だ。逃げるしかない。

 転移の魔術を使おうとした瞬間には、アスモデウスの肉体が前にあった。


 牛鬼に比べれば小柄な、しかし人間に対しては圧倒的な巨躯。

 エルメスはそこで動きを止めてしまった。

 アスモデウスは止まらなかった。

 そして魔王の拳は、音速を超えてエルメスの頭部を打ち砕いた。

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