探求の果てに見た一筋の光
研究班の部屋には、夕方の光が差し込み始めていた。
それでも豪翔は胸筋を揺らしながら、まだ画面に向かっていた。
豪翔が叫ぶ。
「ハハハッ!!観知流!!さっきの無限に甲羅を踏む案、試すぞ!!」
観知流は淡々と頷く。
「……甲羅を踏む位置と甲羅が跳ね返る位置を上手く調節すれば勝手に踏み続けられるはずだ」
律は炭筆を構え、画面の端を見つめる。
「踏む判定の位置がシビアなので、最小移動単位で調整が必要ですね」
探索班はもう黙って見ているしかなかった。
豪翔が甲羅を蹴る。
甲羅は跳ね返る──が、豪翔のキャラは少しズレて踏み損ねる。
豪翔は失敗すら喜んで言った。
「ハハハッ!!惜しい!!」
観知流はそんな豪翔とは対称的に冷静に観察して言った。
「……位置がズレてる。あと2最小移動単位左だ」
律は淡々と補足する。
「甲羅の跳ね返り位置と踏む位置が一致していませんね」
豪翔は何度も試す。
失敗、失敗、また失敗。
探索班は完全に置いていかれ、爽太が呟く。
「……何がそこまで駆り立てるんだ……」
そして──
甲羅が跳ね返り、豪翔のキャラが踏む。
また跳ね返り、また踏む。
画面左上に「1UP」「1UP」「1UP」……と連続で表示される。
豪翔が絶叫する。
「ハハハハハッ!!見ろ!!数字が止まらねぇ!!」
観知流は満足げに言う。
「……理論通りだな」
律は炭筆を走らせる。
「挑戦回数の増加に上限はなさそうです」
探索班はただ呆然と見つめていた。
外はすっかり夕焼けに染まっていた。
豪翔がまだまだ元気が余っていることを示すかのように背筋を盛り上げながら言った。
「ハハハッ!!太陽エネルギーが限界だな!!口惜しいが、今日はこの辺にするか!!」
研究班は片付けを始め、探索班もようやく息をつく。
その中で、孝二だけが装置を見つめたまま動かなかった。
胸の奥が少し重い。
孝二が静かに口を開く。
「……装置の用途を知るには、あまりに非効率的じゃないですか?用途を知るのにこんなことまで調べる必要ありますか?」
観知流がわずかに眉をひそめる。
「……俺らの研究に意味がないって言うのか?」
豪翔が観知流をなだめながら言った。
「まあまあ!!観知流、落ち着け!!
孝二、これはな──上からもよく言われるんだ!!
『そんなこと調べて何になる』ってよ!!」
豪翔は珍しく真面目な声で続けた。
「だけどな、人間だから完璧じゃないだろ?
“用途を知るために必要なこと”なんて、最初から全部分かるわけじゃねぇ。
いろいろ調べてみると、予想もしなかったことが分かる。
それが結果的に用途につながるんだ。」
豪翔はふと思い出したように語り始める。
「例えばだ、孝二。俺が研究班に入ってすぐぐらいの頃だ。
先代文明の遺跡で“台の下に目盛りと数字が書かれた本体がある奇妙な台”が見つかったんだよ。
上は『ただ縮むだけのガラクタだろ』って言ってた。
でも研究班で興味の赴くままに、石とか木片とかいろいろ置いてみたんだ。
そしたら針が回る量が全部違ってな。
当時の同僚の一人が『……回り方が一定じゃない』って言い出して、
置いたものと結果を全部記録したら──
重さが重いほど針が回る量が大きいって規則が見えたんだ。
つまり、重さを測るための装置だったんだよ。
最初から完璧に理解できるわけねぇ。
細かく調べたからこそ意味が見えたんだ。
しかもその時、あまりはっきり分かっていなかった先代文明の数字の法則も分かったんだ。
針が回った量に合わせて数字が並んでたからな。『これは重さを表す数字だ』って気づいて、
数字の法則まで分かったんだ。用途を知るためのヒントは、こういう観察の中に転がってるんだ。」
孝二は静かに息を飲んだ。
豪翔の言葉は、思っていた以上に重く響いた。
「……なるほど……確かに、そういうこともあるのか……」
豪翔は急に笑い出す。
「……というのは建前なんだけどな!!ハハハハッ!!
本当はただ、知りたいことを調べてるだけだ!!
ここだけの秘密にしておいてくれよ!!上に怒られるからな!!」
孝二は呆れながらも、少し笑ってしまう。
「……やっぱり駄目じゃないか」
豪翔は肩をすくめる。
「いや、でも嘘じゃないだろ。
知識は用途を知るための土台になり得るんだよ」
孝二は納得できない部分もあった。
それでも──研究班の“知りたい”の強さに、心が少しだけ揺れた。
夕焼けの中、研究班の調査はまた新しい段階へ進んでいく。
孝二は完全には納得していない。
それでも──研究班の“知りたい”の強さに、心が少しだけ揺れた。
豪翔は上腕二頭筋を見せつけながら言った。
「ハハハハッ!!それで、孝二!!研究班に入る気になったか?」
孝二は答える。
「いえ、やっぱり、研究班とは合わなそうです」
豪翔は胸筋をピクピクと動かしながら言った。
「ハハハハッ!!そうか、残念だ!!気が変わったらいつでも歓迎するぞ!!」
孝二は笑って答える。
「そんな時が来たらお願いします」
孝二は今日のことを振り返り、ふと思った。
「……用途を知るための道は、ひとつじゃないのかもしれない……」
夕暮れの光が装置を照らし、皆は部屋を後にした。
次話、研究班の探求を目の当たりにした翌朝、
探索班はその余韻を胸に抱えながら、再び発掘現場へ向かう。
前回見つけた遺産の周辺を調べ直す中で、
彼らは“前に挿さっていたものとよく似たカセット”を発見する。
それは、用途へ近づくための新たな手掛かりだった。
拠点へ戻り、カセットを本体に挿し込むと──
画面には「トテリス」の文字。
落ちてくる形、回転、落下速度、消える列。
探索班は再び未知の装置と向き合うことになる。
研究班の真似をするのではなく、
“用途につながる部分だけを選んで調べる”。
孝二の言葉をきっかけに、探索班は自分たちのやり方で調査を始める。
探索班の“用途を知るための調査”が動き出す。
来週金曜日、22:00頃更新予定。




