異なる“知りたい”
研究班の部屋に、探索班が静かに立ち尽くしていた。
豪翔は装置の前に立ち、胸筋をピクピクさせながら振り返る。
豪翔が言う。
「ハハハッ!!律!!何か調べたいことあるか?」
律は炭筆を軽く持ち直しながら答える。
「他にも位置で変わっていそうなことを調べるのはどうですか?例えば……“キノコの出現後の移動方向”とか」
豪翔が胸筋を揺らしながら笑った。
「ハハハッ!!いいぞ律!!じゃあ左端から試すぞ!!」
豪翔がブロックを叩き、キノコが出る。
キノコは右へ進んだ。
観知流が淡々と言う。
「……右に行ったな」
律が記録する。
「では、最小移動単位分位置をずらしながらキノコを出現させてください」
好機は呆然とつぶやく。
「最小移動単位……?」
豪翔はプレイヤーキャラを少しずつ右へずらしながら、何度もブロックを叩いた。
途中で豪翔が2ドット移動させた直後、観知流が冷徹に突っ込む。
「おい、今最小移動単位じゃなかったぞ」
豪翔は観知流の冷たさを気にも留めず答える。
「ハハハッ!!そうだったか?すまん、すまん!!細かい動作はどうも苦手でな!!この制御端末小さいだろ?」
豪翔は笑いながらコントローラーを観知流に見せ、少し左へ戻る。
観知流が再び冷徹に突っ込む。
「てめぇがでけぇだけだろ。筋肉バカが」
豪翔がふと疑問を口にする。
「ん?キノコの出現後の移動方向とキャラの向きは関係ないのか?」
律は炭筆でメモを取る手を止めて答える。
「関係あるかもしれないですね。それも調べてみましょう」
豪翔が新たな疑問との遭遇を喜びながら言った。
「ハハハッ!!そうだな!!まずは、これまでの通り右向きで試すぞ!!」
研究班は調査を続ける。
キノコは右へ進んでいたが、途中から左へ進むようになった。
観知流は画面を凝視しながら、ぼそりと漏らす。
「……境目があるぞ。位置で方向が変わる」
律はメモを見ながら言った。
「左側半分を叩くと右へ、右側半分を叩くと左へ移動するようです」
豪翔が胸筋を揺らしながら叫ぶ。
「ハハハッ!!じゃあ次は左向きで試すぞ!!」
豪翔が左向きで再び左端からブロックを叩いていく。
キノコは先ほどと同じく右へ進んでいたが、途中から左へ進むようになった。
観知流が淡々と言う。
「……向きじゃねぇ。位置だ」
律が頷く。
「向きは影響していません。位置だけです」
豪翔が勢いを増す。
「ハハハッ!!じゃあ次は俺の疑問を調べさせてくれ!!せっかくブロックを壊せるんだ!!
試しにブロックを全部壊してみるぞ!!」
慎介は引き気味に言う。
「全部……?」
豪翔がブロックを叩く。
ブロックは壊れるだけで何も起きなかった。
観知流が言う。
「……壊れるだけだな」
律が記録する。
「変化なし、と」
次のブロックを叩くとコインが出て、壊れず、色が変わった。
観知流が言う。
「……何か出たぞ。色まで変わったな」
律が記録する。
「普通のブロックに見えて黄色い楕円のものが出るブロックが存在しますね」
さらに別のブロックを叩くと、キノコが出た。
観知流は眉ひとつ動かさず言う。
「……同じ見た目なのに、中身があるやつがあるじゃねぇか」
律は記録する。
「キノコが出るブロック……先ほどのブロックと中身が違いますね」
豪翔が目を輝かせる。
「ハハハッ!!面白ぇ!!」
豪翔がさらに叩き続けていると、1UPキノコが出た。
観知流が言う。
「……今のは別のやつだ」
律が記録する。
「緑色のキノコが出るブロックも存在しますね」
爽太は驚く。
「そんな種類あるのか……」
豪翔が続けて叩き続けていると、スターが出た。
観知流が淡々と指差す。
「……また違うのが出たぞ」
律が即座に反応する。
「今度は星ですね」
探索班は、研究班の観察の深さに見ていることしかできなくなっていった。
豪翔がさらに叩き続けていると、ツタが出た。
観知流が淡々と言う。
「……今度はツタじゃねぇか」
律がメガネを直しながら言う。
「……これは探索班の調査資料にも記載があったものですね」
豪翔がさらに叩き続け、最後のブロックを粉砕した。
「ハハハッ!!全部壊したぞ!!」
探索班は完全に置いていかれていた。
観知流が淡々とまとめる。
「……見た目が同じなのに、なにか出るものが混ざってるじゃねぇか」
律は炭筆で分類表を作る。
「何も起きないブロック、黄色い楕円のもの、キノコ、緑のキノコ、星、ツタ……
出てくるものも複数存在します」
探索班は、浮かんだ疑問を次々と検証していく研究班の手法に驚いていた。
孝二だけが静かに画面を見つめていた。
胸の奥が少し重くなる。
「……研究班は“興味があるから調べる”だけなんだ。
自分は“使われ方を知るために調べている”。
同じ装置を調べているのに、自分の“知りたい”と研究班の“知りたい”はまったく違う……」
研究班の調査がさらに加速していく。
次話、研究班は、画面上部に並ぶ“数字”へと視線を移した。
コイン、時間、ステージ、スコア──
豪翔たちは次々と実験を重ね、数字の法則をひとつずつ暴いていく。
その熱量に、探索班はただ黙って見つめるしかなかった。
孝二の胸には、静かな疑念が残る。
数字は確かに動いている。
だが、それは本当に“用途”へ続く道なのだろうか。
来週、21:00頃更新予定。




